Dance Hall Days/WANG CHUNG~ふわふわしたファンタジー
WANG CHUNGを初めて見たのは、DON'T LET GOのPVだった。
クールな印象で、二の線をいきながらもどこかあか抜けない感じも受けたし、ニューウェーブの波に乗ったその他大勢という印象が強かったように思う。
そのときはまさかこんな曲調を用意しているグループとは思わなかった。
その後の大ブレイクを考えると、こちらのほうが得意なジャンルだったのかと、今になっては思うことが出来る。
ふわふわした曲調にハイトーンのヴォーカルが綺麗に乗り、そしてこのPVの素晴らしいこと。
当時のPVの方向性としては、演奏シーンのみのもの、ちょっとやりすぎた感もあるドラマ仕立て、そしてこの曲のように演奏シーンとイメージを組み合わせたものがあったが、今になって思えばこのパターンが一番いい。
メンバーの顔と動きがみられるうえ、曲のイメージをすんなりと植え付けてくれるように思うからだ。
ただよく見ると、バックの二人は実際にはヴァイオリンを演奏してるわけではないので、なんだかますます不思議な浮遊感を演出してくれている。
メンバーが扮するのはオズの魔法使いだしね。
ファンタジーなんだろうな。
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Restless Heart/JOHN WAITE~美しきロードムービー
地味な感じの曲とPVだったにも関わらず、Missing Youの突然のヒットでソロとして復活したジョン・ウエイト。
都会を舞台にした大人のラブソングという雰囲気を醸し出していた大ヒット曲とはまるで趣の異なるこの曲は、たいしたヒットにはつながらなかったが、素晴らしい曲ではないか。
John Waite - Restless Heart (1985)
ロードムービースタイルに仕上げたPVというやつは、曲に入る前に妙に長いイントロ的なストーリーが入ることが多いような気がするが、そもそも曲のためのPVであって、ストーリーのシチュエーションを説明するために曲がなかなか始まらないフィルムを見せられるというのは本末転倒であって多くは魅力を半減させてしまっている。
しかしこの曲のイントロダクション映像はなんだかいいのだ。
特にレトロなコーラの販売機が素晴らしい小道具になっている気がする。
そしてついに始まる曲のイントロが、実にスムーズに聴くものを引き込んでくれる。
淡々としたムービーの中には、何気にベッドシーンが盛り込まれていたり、それなりにドラマが仕込まれているし、モノクロで仕上げているのも好印象。
隠れた名曲、PVだと思う。
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Dream Of The West/YIP YIP COYOTE~ギミック満載ウエスタン
Go-Go'sのTalk Showを買ったら、アルバムの中に封入されていたレーベルの所属アーティストの紹介パンフみたい小冊子に、奇妙なバンド名を見つけた。
それがYIP YIP COYOTEだった。
PVを見てもわかる通り、奇妙なウエスタン調のギミック満載で、明らかにイロモノとしか思えなかったけど、なんだか哀愁漂うメロディは頭に残り、郷愁をそそるような何が気にかかる一曲だった。
Yip Yip Coyote - Dream of The West - 1984
当時はそんなムーヴメントがあったなんてまったく知らなかったけど、ジャンル的にはカウパンクってやつらしい。
まあなんで知らなかったかっていうと、イマイチ来なかったムーヴメントってことなんだろうけど。
なんとなくADAM AND THE ANTSなんかのインディーズっぽい感じがするなあと思ってたけど、洋楽にこだわらずコンセプトをよく見なおしてみると、いわゆるイギリスのイカ天バンドみたいな存在なのかもしれない。
ちなみにヴォーカルのフィフィは本業がモデルだったらしく、たしかにコスプレもサマになってる。
そういう意味ではEIGHTH WONDERの垢抜けないやつ、またはオタクなやつ、ってとこなのかもしれない。個性はあるけど、メジャーではこの路線だと厳しいってとこでしょうか。
このブログももうちょっとメジャーな題材を取り上げたほうがいいのかもしれませんが。
Nobody's Diary/YAZOO~小じゃれた音に乗り損ねたアクションのないアクション
男女ペアという編成で、テクノ畑から出てきたせいか、ユーリズミックスとの比較がよく論じられたヤズー。
音楽的な主導権を握る男性と、ソウルフルな女性ヴォーカルというところまでかぶっていたから、その比較は見当違いではない。
Eurythmics - Sweet Dreams (Are Made Of This) (Official Video)
しかし、何がこのふたつのグループのその後に差をつけたのか。
それは、このクリップを見ると明確だ。
ヤズーには華がない。
レコードで聴いている時に感じる違いは、ユーリズミックスよりライトで無機質な音作りくらいでしかなかったが、アリソン・モイエの豪快なルックスはアニー・レノックスのような華やかさが皆無で、ビジュアル向きではなかった。
そして、ビジュアルが音に反して重い。
これは、アリソン・モイエの体重のことを言っているわけではない。
むしろ、ヴィンス・クラークの死にかけたニワトリのような異様なルックス、まったく動かないというアクションのないアクションがその原因だ。
こんな状態ではビジュアルに訴える要素は皆無に等しい。
テクノブームに乗っかって、デペッシュ・モード初期の素軽い音作りをヤズーに移行して継続したヴィンスだったが、その小じゃれた音を表現できたのは、レコードの世界だけだった。
(80's) Depeche Mode - Dreaming of Me
テクノ以降、チャート界に大きな影響を与えた、クリップの世界において、彼は自らの音作りとは正反対の重さだけを表現してしまったのである。
彼はレコードという閉ざされた世界から、クリップという開かれた世界にその姿を登場させたことで、ヤズーの幕を下ろすことになったのかもしれない。
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Prisoner of Love/SPEAR OF DESTINY~皮肉な運命の矢
DURAN DURANやSPANDAU BALLETが着飾って、楽器も持たずにフィルムの中で壮大なハリウッドごっこをやっていた時期に、この潔さ。
当時のMTVの中でも異色すぎるPVに、画面の前でひっくり返りそうになった記憶がよみがえる。
Spear Of Destiny-Prisoner of Love'
シンプルなスタジオライヴのPV自体は別に珍しかったわけでもなんでもないが、なんというかこのジャンルでわざわざPV撮るのにボーカルがTシャツって、ちょっと当時なかった。
そのカーク・ブランドンは、もともとボーイ・ジョージの交際相手で、ボーイが音楽をやろうと思ったのは彼の影響だという話を聞いたことがある。
だが運命の矢は皮肉なもので、このころすでにボーイ・ジョージは時代の寵児。
もしかしたらそのあたりに対する、彼なりの複雑な想いの表現がこれだったのかもしれない。
Wonderland/XTC~深窓の令息、不思議の国に姿をあらわす
アンディ・パートリッジは自分のむさくるしい姿をどう思っていただろう。
適度にひねくれていながら、小難しくならないポップさを併せ持った、実に都会的なセンスの持ち主でありながら、そのルックスはあまりにむさくるしい。
センスとルックスのギャップで言えば、クリストファー・クロス級だ。しかし、クリストファー・クロスが堂々とその姿を衆目にさらしたのと違い、アンディは異様な形でしかその姿を見せてくれなかった。
Christopher Cross - Arthur's Theme (Best that you can do)
この曲のクリップは舞台設定からして、奇怪。
庭園に造られた生垣の迷路の中を、バレリーナの少女がひたすら何かから逃げ惑うように、しかし優雅に動きつづける。それはまさに不思議の国の出来事のようだ。
いかにも、アリスがモチーフになっているのだろうが、そこに、トム・ペティが「ドント・カム・アラウンド・ヒア・ノー・モア」で表現したような、ブラックユーモアはまったく存在しない。
Tom Petty And The Heartbreakers - Don't Come Around Here No More
ここにあるのは、毒のないアリス・イン・ワンダーランドとでも言うべき、夢幻の世界である。
そして、白い生花に色をつける一人の庭師。
そう、あまりにもナーバスでセンシティヴな深窓の令息、アンディ・パートリッジが姿をあらわすためには、その舞台には毒を仕掛けてはならなかったのに違いない。
もし、そこに毒があったとしたら、純粋な令息はその場で息を引き取っていたのかもしれない。
そして、彼が姿をあらわすのにもっとも適した舞台は、現実の街の中ではなく、夢幻に漂う不思議の国だったのだ。
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One Lonely Night/REO SPEEDWAGON~どんでん返し不要の人情コント
郷愁をそそるメロディに載せて、切ない喜劇に仕立てられた秀作PV。
reo speedwagon - one lonely night
中世の騎士が、魔法使いの力で現代に送り込まれてドタバタするというタイムスリップ物のストーリーは、古今東西数多あれど、四分ほどの時間の中で、オチまでしっかりあって楽しめる。
視力の悪い騎士が現代で眼鏡を手に入れて、ヒーローになるのかと思いきや、ひったくりから取り返した鞄を剣に突き刺して獲物のように持ち主に差し出して怒られるとか、小技が利いてる。
冒頭の中世のシーンで目が悪いばかりに振り回した刀で天井に開けてしまった穴が、無事に家に戻ったラストシーンできっちり活かされているのも素晴らしいエンディング。
予定調和の中でちゃんと毎週笑いを取るドリフのような世界だ。
そしてほろりとさせるあたりは、寅さんのような人情コント的世界でもある。
結局人はどんなに変化を求めても、安定に縋るのではないかと思う。
どんでん返しなどなくとも、素晴らしい物語はできあがる。
あと、嫁さんがかわいい。
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プレイリスト:ヴェリー・ベスト・オブ・REOスピードワゴン [ REOスピードワゴン ]
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