Shouldn't Have To Be Like That/FRA LIPPO LIPPI~遺伝子の核に棲み付いた私たちの好きなメロディ
Fra Lippo Lippi - Shouldn't Have To Be Like That.wmv
80年代当時の洋楽のうち、大物アーティストのものではないスマッシュヒット曲が、日本のマーケットで受け入れられた例には共通点があるのではないかと思っている。
Hubert Kah - Angel 07 (Video 1985)
たとえばHUBERT KAH、ALPHAVILLE、REAL LIFEやこのFRA LIPPO LIPPIに顕著なのだが、それはメロディの要素として漂う哀愁ではないだろうか。
日本人は哀愁漂うメロディが好きだ。
この曲なんかはまさに典型的で、なんだか日本の歌謡曲に英語の歌詞を載せたような気すらしてくる。
そう、歌謡曲なのだ。
おそらく「美しき天然」の時代から存在する、日本人の遺伝子の何かが化学反応するのだろう。
こういうメロディに日本人は弱い。
ノルウェー出身のFRA LIPPO LIPPIなんて今や、よほど当時このデュオに入れ込んだ人でなければ、80年代洋楽史を振り返ったときに、名前を挙げられもしない存在ではないかと思うが、ふと思い出すと無性に聴きたくなってネットで検索したりしてしまうのだ。
それは記憶の隅に、遺伝子の核に棲み付いた本能が求める、癒しのメロディなのかもしれない。
残念なのはこの手のスマッシュヒットの主の多くが、本国でのその後の活躍は別として、日本では一発屋としてくくられてしまっていることである。
- アーティスト: Fra Lippo Lippi
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- 発売日: 2003/02/01
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Voices/PASSION PUPPETS~わずかに足りなかった何か
なんだかVo.のレイの動きがライク・ダストとまったくおなじ。両手を組む、指でおいでおいで、片膝立てて座る。
なかなか美しい動きなんだけど、ライク・ダストのPVの振り付けではなくて、レイのオリジナルアクションだとしたらそれはそれでカッコいい。
ちょっと青くさいようなノスタルジックなエッセンスがあって、ななかなキャッチーなメロディを演るいいバンドなんだけど、何かが足りなかったんだろう。
おそらく、デュランやカジャの跡を継ぐには洗練されてなくて、スミスやバニーメンに続くには俗っぽすぎたというところなのかもしれない。
ほんのわずかなボタンの掛け違えがヒットするかどうかの差になるのだ。
Cruel Summer/BANANARAMA~隣の姉ちゃんはもうすぐ街へ行く
バナナラマは隣のお姉ちゃんだった。
The Fun Boy Three & Bananarama - Ain't What You Do (TOTP 25-Feb-1982)
テリー・ホールのオマケとしてファン・ボーイ3と一緒に演ってる頃の彼女たちは、なんだかよくわからないまま、たまたまテレビに出てしまった近所のお姉ちゃんだった。
Bananarama - Cruel Summer (OFFICIAL MUSIC VIDEO)
「愛しのロバート・デ・ニーロ」そして「ちぎれたハート」と邦題がつけられたこの曲の頃も、ジーンズにティーシャツの近所のちょっとかわいいお姉ちゃんが、テレビに出てるだけだった。
ある日彼女たちはユーロビートと出会う。
そして派手なPVで世界の頂点に上り詰める。
だがよく見ると何が変わったのだろう。
衣装は特にドレスアップしているわけでもない。三人もいるのに、特にハモるわけでもないユニゾンのヴォーカル。
何も変わっちゃいない。
ただひとつだけ違うのではないかと思えるのは、この曲にあった気怠さはヴィーナス以降の彼女たちにはない。
部活のようなノリだった歌と踊りは、ショウビズの世界で売り物になるようなメリハリの利いたものに変化していた。
彼女たちは街を出て、都会へ。そしてみんなのお姉さんになった。
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Give/MISSING PERSONS~バキバキ超絶テクの変態たち
ド派手なメイク、奇妙な近未来感のあるシェイプの楽器に、フワフワした浮遊感のある曲、そしてバカテク。
いったいなんだこりゃ、という感じのビジュアルだが、ドラムのテリー・ボジオはフランク・ザッパのバンドにいたという経歴を聞いて、ちょっとイッちゃった天才なのかなと思ったものだ。
まあもっともイッてたのは、ヴォーカルのデイル、すなわち当時のテリーの嫁さんなのだが。
いずれにしても、こんな未来は21世紀になっても来なかったわけで、そう考えるとある意味で80年代のクラフトワークみたいなPVに仕上がっている。
ちょっとSFっぽいんだよね。
曲は秀逸。
テクもバキバキ。
けど、どこかマニア向きで、メジャーシーンのトップに立てるようなキャッチーさはないバンドだった。
玄人好みのテクニシャンの才能が少しだけチャートに訴えかけた一曲なのかもしれない。
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Beyond The Pale/PASSION PUPPETS~わが青春の胸キュン
パッション・パペッツが唯一残したアルバムのタイトルにもなっていたナンバーがこれ。
Passion Puppets - Beyond The Pale
青くさい彼らのちょっと背中がむずがゆくなるような、それでいて胸にキュンとくるような魅力の詰まった一曲だ。
国内盤の邦題が「青春のパペッツ」なんて、どうしようもないタイトルだったのもこの曲のせいなのかもしれない。
ちなみにこのPVは当時、日本では流れる機会もほとんどなかったはず。
たった一枚で消えてしまったけど、今聴くとポップスとしてホントにいいバンドだと思う。
ロータス・イータースやアイシクル・ワークス、トーク・トークのような職人でもなく、ブルー・ズーだのサヴァ・サヴァみたいなアイドルに徹する開き直りもなく、なんというか楽しくやってた友達バンドがうっかりプロになって、逆にうまくいかなくなってしまったみたいな儚さを感じる彼らには、うってつけの曲だ。
それにしても、こんなプロフィールのあやふやなバンドまで、国内盤のアルバムが出ていたというのはすごいなあ。
ありがたい時代だった。
このバンド、この曲たち(特にライク・ダスト)を知れたのは、わが青春の貴重な記憶だ。
Passion Puppets / Beyond The Pale
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Dance Hall Days/WANG CHUNG~ふわふわしたファンタジー
WANG CHUNGを初めて見たのは、DON'T LET GOのPVだった。
クールな印象で、二の線をいきながらもどこかあか抜けない感じも受けたし、ニューウェーブの波に乗ったその他大勢という印象が強かったように思う。
そのときはまさかこんな曲調を用意しているグループとは思わなかった。
その後の大ブレイクを考えると、こちらのほうが得意なジャンルだったのかと、今になっては思うことが出来る。
ふわふわした曲調にハイトーンのヴォーカルが綺麗に乗り、そしてこのPVの素晴らしいこと。
当時のPVの方向性としては、演奏シーンのみのもの、ちょっとやりすぎた感もあるドラマ仕立て、そしてこの曲のように演奏シーンとイメージを組み合わせたものがあったが、今になって思えばこのパターンが一番いい。
メンバーの顔と動きがみられるうえ、曲のイメージをすんなりと植え付けてくれるように思うからだ。
ただよく見ると、バックの二人は実際にはヴァイオリンを演奏してるわけではないので、なんだかますます不思議な浮遊感を演出してくれている。
メンバーが扮するのはオズの魔法使いだしね。
ファンタジーなんだろうな。
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Restless Heart/JOHN WAITE~美しきロードムービー
地味な感じの曲とPVだったにも関わらず、Missing Youの突然のヒットでソロとして復活したジョン・ウエイト。
都会を舞台にした大人のラブソングという雰囲気を醸し出していた大ヒット曲とはまるで趣の異なるこの曲は、たいしたヒットにはつながらなかったが、素晴らしい曲ではないか。
John Waite - Restless Heart (1985)
ロードムービースタイルに仕上げたPVというやつは、曲に入る前に妙に長いイントロ的なストーリーが入ることが多いような気がするが、そもそも曲のためのPVであって、ストーリーのシチュエーションを説明するために曲がなかなか始まらないフィルムを見せられるというのは本末転倒であって多くは魅力を半減させてしまっている。
しかしこの曲のイントロダクション映像はなんだかいいのだ。
特にレトロなコーラの販売機が素晴らしい小道具になっている気がする。
そしてついに始まる曲のイントロが、実にスムーズに聴くものを引き込んでくれる。
淡々としたムービーの中には、何気にベッドシーンが盛り込まれていたり、それなりにドラマが仕込まれているし、モノクロで仕上げているのも好印象。
隠れた名曲、PVだと思う。
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