THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。新作も加えていきます。

Irgendwie Irgendwo Irgendwann/NENA~消費されたボーカリスト(それは美しすぎたから)

テレビの前の日本の青少年のド肝を抜き、一部のマニアを狂喜乱舞させた腋毛騒動も落ち着いたころ、ひっそりとリリースされた、ネーナ・ケルナーをフロントに据えた、バンドとしてのNENAの佳作。

 


Nena - Irgendwie Irgendwo Irgendwann (Original 1984)

 

ロディアスで、どうも安っぽさが抜けないものの、そこが逆に小難しくなってなくて、いい曲だ。

 

さすがにドイツ語のタイトルはちょっと日本ではどうしていいのかもてあましてしまったようで、「未来へのスパークル」なんていうまったく関係ないというかなんというか、そんな邦題がついていたが、それはもう仕方ない、すべて当時のイメージ仕立てのPVのせいなんだろう。

 

そのころ日本のMTVでも流されたPVは、なんというか、オープニングでマイケル・ジャクサンの集団ダンス、あるのかないのかわからない本筋はPV界のインディ・ジョーンズことデュラン・デュラン、ロケーションはスパンダー・バレエみたいな当時のビルボード向けにわざわざ作った、無駄金を使った悪例みたいな一作になってしまっていた。
まあ、ルフトバルーンの貯金も唸ってた頃だろうし、しようがないといえばしょうがない。

 

それに当時の世界、特に日本の消費する側は、ネーナをバンドではなく、ヴォーカルの彼女一人にフォーカスを当てた個人ネーナとして、プロデュースしたくてしようがない連中が実権を握っていたようで、そこにものいいたいからだ。

ネーナ・ケルナーの魅力は、腋毛はさておき理解できた。

 

しかし、それを壮大なふりをして、その実はしょぼいB級アドベンチャーに仕立てたPVのヒロインにしてしまって、それが本当に魅力だったのかは疑問符だらけだ。

 

どうしてこんなに辛口なのかというと、当時ビルボード経由で洋楽を輸入していた日本ではおそらく一度も流れていないと思うのだが、今回紹介したこんなオリジナルPVがあったらしいことを最近知ったからだ。

 

ネーナ・ケルナーというヴォーカリスト、女性の魅力も、その彼女をヴォーカルに据えたバンドの魅力も、このほうがはるかに伝わってくるじゃないか。

 


Nena ft Kim Wilde - Anyplace Anywhere Anytime (Irgendwie, Irgendwo, Irgendwann)HD

 

ちなみにこの曲は20年近い時を経て、まさかのキム・ワイルドとのデュエット曲として再リリースされている。

 

洋楽の何たるかも知らなかった頃に、和製洋楽のBitter Is Betterで我々を虜にしたあのキムだ。

 


Kim Wilde Bitter is better Japan commercial

 

House Of Salomeに酔い、Dancing In The Darkで“ボス”に「かぶってる!」と憤慨し、Singing It Out For Love Againに涙して、Second Timeでもしかしてこれでチャートに復活するのか! と期待したけど、結局僕たちの前にキムが帰ってきたのは、安っぽいユーロビートとともにだったけど。

 


Kim Wilde - Dancing In the Dark

 

キム・ワイルドについてはまた別の機会に。

 


 

 

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Borderline/MADONNA~僕たちのマドンナ

この曲のイントロと、それに合わせたPVのスローモーションのストリートダンスのシーンはとても美しい。

 


Madonna - Borderline


マドンナがまだサイボーグになる前の話だ。ライオンのような髪型、ルーズなファッション、そしてそれを真似るティーンエイジャーたちが、Wannabeesと呼ばれ、現実のダウンタウンに溢れようとしていた。

 

トーリーは下町の少女が、カメラマンに見いだされ、そして表舞台に上がる。


しかし、その世界は彼女には窮屈でしかなく、新しい恋人になったカメラマンを放り出し夢のステージを飛び降りた彼女は、自分の育った街とかつての彼氏のもとへと駆けて帰る。


そんなありがちなストーリーだが、ダウンタウン時代の彼氏とのキスシーンはあまりにも絵になっている。
ポスターの一場面のようだ。

 

このPVを深みのあるものにしているのは、彼女を映すフィルムの色ではないだろうか。
時系列では過去になるダウンタウンのシーンはカラーで、そのあとの出来事になるスタジオでモデルとして撮られるシーンはモノクロになっている。
我々が想起する時系列の映像表現とは逆なのだ。


それはフィルムが現実をレポートしてるのではなく、彼女の心象風景を映し出しているのだと感じさせてくれる。

最後に、彼女はカラーの世界へ帰っていく。

そこに映し出されるのは、彼女にとっての現実であるダウンタウンなのだ。


そしてカラーになったスタジオシーンの中の彼女のハミングで曲は終わる。
この曲の最後のあっという間にフェイドアウトしていくハミングは、とても贅沢。
もっと聴きたいメロディだと思う。

 

このあとマドンナは世界の歌姫、そして人間離れしたサイボーグへの道を歩みだす。

 

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Soul Deep/THE COUCIL COLLECTIVE~怒れるオサレ系


The Style Council - Soul Deep [The Council Collective] (The Tube 1984)

 

Paul Wellerという男は、なんとも掴みどころがないように見える。

 


Jam - In the City

 

JAMで怒れる若者の想いを代弁して、ひとりのカリスマになったと思いきや、絶頂期に解散

 


Paul Weller Live - The Whole Point Of No Return (HD)


そしてSTYLE COUNCILというユニットを始めたと思ったら、ブラコン、ジャズ、ソウル、ラップ、なんでもありのごった煮で、特にファーストアルバムの当時のA面は、JAMのファンが聴いたら「日和ったか!」と暴動の起きそうな、ジャズ、ムード音楽モードだった。


事実、バブル期真っただ中の日本、カフェバーといえば、スタカン、エヴリシング・バット・ザ・ガールシャーデー、少し遅れてスウィング・アウト・シスターみたいな、今こうして振り返ると、明らかに別の場所にいた連中とひとくくりになっていた。

 


Everything But The Girl - Tender Blue

 


Sade - Smooth Operator (Official Video)

 


Swing Out Sister - Twilight World


しかし、ポールの変身にも変遷にも、おそらく何の作戦も策略もない。ただ単に彼は、やりたいことをやっているのだ。
やりたいときに。
だから気が向いたら髪も切るし、前髪を伸ばしても見るし、チャリティだってやってみる。

 

この頃ポールはたぶん、スタカンのファンが生ぬるいオサレ系ばかりだったことに、物足りなくなったのではないだろうか。
ただ、彼の意識は遠く世界に向くほど、壮大なものではなかった。


ボブが遠くアフリカに目を向けたのに対して、その場に参加していても、ポールの視線は、怒りに身を任せたころに自分を支えてくれた若者たちが、少し大人になって働いた炭鉱に向いていたのではないだろうか。

 

1984年12月。

世界がチャリティに沸いた年の暮れ、バンド・エイドが彼らは知っているのかと問うた、クリスマスに近いころリリースされた名曲。

 

Soul Deep - Council Collective 7

Soul Deep - Council Collective 7" 45

 

 

 

Soul Deep (council collective single 12

Soul Deep (council collective single 12")

 

 

 

Soul Deep (Bert Bevan's Remix/ Club Mix)

Soul Deep (Bert Bevan's Remix/ Club Mix)

 

 

House Arrest/KRUSH~クラッシュはクラッシュでも


Krush - House Arrest

 

「これがクラッシュ!?」「ミックの呪いか?」

 


The Clash - This Is Radio Clash (Bond's, Times Square, NY 9th June 1981) 2 of 3

 


当時、ヒットしているという情報を誌面で得て、あわてて探して手に入れた12インチ版には当然英語表記があるわけだから、もちろんCLASHと本気で間違えたわけではないが、そんなネタともジョークともいえない話で盛り上がったものだった。

 

ハウスミュージックという紹介をされていたけれど、これはハウスなんだろうか?
タイトルが「ハウス・アレスト(自宅監禁)」なんで誰かがそういいだしちゃったんだろうか?
そもそも音楽はージャンルというのは分類が難しいものだけど。

 

いずれにしてもいわゆるオシャレな音で、当時はユーロビートなんかがチャートを席巻していたころ。
ダンスチャートのヒット曲がナショナルチャートも駆け上がっていたし、この軽い曲質と口ずさみながら踊れる感じはディスコ向けだったんだろう。

 

初めて聴いたとき以降ずっとインストゥルメンタル中心のグループがやっていると思っていたんだけど、ネット時代になってついに見たPVで、あ、そうか、と思わされた。いわゆるダンス、クラブ系のDJ系のユニットだったんだな。


たしかに今初めてこの曲を聴いたらそう思っただろうけど、当時はそんなこと考えもしなかった。
楽器を持ってメンバーが音を作るバンドスタイルのテクノだと思い込んでいたのだ。お恥ずかしい。

 

そういうこともあって、この軽いヴォーカルをリードヴォーカルではなく、コーラスのお姉ちゃんだと思い込んで聴いていたんで、PVの真ん中で歌い踊る女の子を見て、結構びっくりしました。

 

少なくとも当時の日本のメインの洋楽シーンでは、この曲一発で、それ前後は紹介もされなかったため、グループとしてのプロフィールがまったくわからなくて、謎が多かったのも事実。


ただダンスミュージックの世界にそれ以外の何かを残しているのかというと、そこもどうやらそうではないらしく、結局このオネエチャン誰なんだという疑問を残すだけだった。

 

 

House Arrest / Jack's Back - Krush 7

House Arrest / Jack's Back - Krush 7" 45

 

 

 

House arrest (1987) / Vinyl Maxi Single [Vinyl 12'']

House arrest (1987) / Vinyl Maxi Single [Vinyl 12'']

 

 

 

 

Fire In The City/ELVIS BROTHERS, THE~そそられる音、そそられるビジュアル

リアルタイムでこの曲のPVがMTVで流れたのを見たのは、二度ほどだったが、当時毎週番組を録画していた自分にはそれで十分といえば十分だった。

 


The Elvis Brothers - Fire In The City (1983)

 

とはいえそもそも当時はプロフィールもよくわからないグループの曲を、録画した200分もあるプログラムの中で、早送りもせずに見たのにはわけがある。
そう、オープニングテーマが終わったあと、最初のCMに入る前にたった二曲だけ流される、スタートのナンバーのうち一曲がこれだったのだ。

 

しかしもちろんそれだけではない。
PVのスタートと同時にいきなり流れる、魂に響くようなドラム。
映されるメンバーの足下は赤、白、青の三色の靴。
実に音とビジュアルがそそるのだ。

 

そして現れる色っぽいミニスカネエチャンズに、興奮したメンバーの演出にメタファとして飛んでいくソーセージ。なんともわかりやすい、夜の街の艶っぽさに、青春時代の入口に入った少年たちは釘付けになったのかもしれない。

 

ちなみに当時の印象では、この一曲だけであっさりいなくなった印象で、洋楽ブームが起きた時代の日本だったからこそ紹介された、ひとときの徒花みたいなグループだったのだが、今回調べてみたら90年代半ばまで、おなじメンバーに一人さらにプラスしたりしながら、活動を続けていたらしい。

 

若さとルックスで、アイドルバンドとして売り出そうとして、失敗したかのようなイメージを勝手に抱いていたが、たしかに自分がいいと思ったくらいなのだから、この曲一曲聴いただけもいい音を出している。


PVもお姉ちゃんたちの登場と、それを狙う野獣どもみたいな安っぽい構図になっているけど、二番のそういうシーンではメンバーはただ演奏しているだけで、ちゃんとライヴシーンも見せてるんだよね。
立ったままたたいているドラムとか、絵にも気を遣ってるし、なかなかの秀作ではなかろうか。

 

www.discogs.com

 

The Lucky One/LAURA Branigan~そのとき、ローラは

ちょうどタイミング的にローラ・ブラニガンと重なって、マドンナ、シンディ・ローパーというヒロインがいた。


Madonna - Material Girl (Official Video)


Cyndi Lauper - Girls Just Want To Have Fun (Official Video)

 

ネオ・モンロー、現代のセックス・シンボルとして、まだサイボーグになる前のマドンナはむちっとしたおなかを見せたへそ出しルックでコケティッシュな魅力を振りまいて、世の男どもの視線を釘付けにしていたし、パンキッシュでアヴァンギャルドなのに、浮ついた印象を与えないシンディはGirls Just Wanna Have FunのPVそのままに、世の女子たちのファッションリーダーになろうとしていた。

 


Laura Branigan (clip) - The Lucky One

 

そのとき、ローラはなにをしていたんだろう。

 

ぶっとい眉毛。そのへんのオネチャンさながらのファッション。たしかに美人だが、ラテン系の親しみやすい、一歩間違えればきれいだけどイモっぽい面立ち。
そんな彼女にシンデレラストーリーが似合うのは、必然。

 

Self Controlで見せた夜のセクシーな姿もどこか色気を感じさせない不思議な雰囲気を見せるローラには、少年少女の絵本の題材になりそうな、こんなストーリーがよく似合う。

 

ちなみにMADONNAのMaterial Wolrdの間奏に男性コーラスが入るパートがあるが、それよりもヴォイスコーダーを利かせたこっちの男性コーラスパートのほうが俄然カッコいい。


ダサくて(あっ、いっちゃった)あか抜けないローラのほうがそこは一歩リードしていたのだ。

 

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Shouldn't Have To Be Like That/FRA LIPPO LIPPI~遺伝子の核に棲み付いた私たちの好きなメロディ


Fra Lippo Lippi - Shouldn't Have To Be Like That.wmv

 

80年代当時の洋楽のうち、大物アーティストのものではないスマッシュヒット曲が、日本のマーケットで受け入れられた例には共通点があるのではないかと思っている。

 


Hubert Kah - Angel 07 (Video 1985)

たとえばHUBERT KAH、ALPHAVILLE、REAL LIFEやこのFRA LIPPO LIPPIに顕著なのだが、それはメロディの要素として漂う哀愁ではないだろうか。

日本人は哀愁漂うメロディが好きだ。

 

この曲なんかはまさに典型的で、なんだか日本の歌謡曲に英語の歌詞を載せたような気すらしてくる。
そう、歌謡曲なのだ。

 


フォレスタ 美しき天然


おそらく「美しき天然」の時代から存在する、日本人の遺伝子の何かが化学反応するのだろう。
こういうメロディに日本人は弱い。

 

ノルウェー出身のFRA LIPPO LIPPIなんて今や、よほど当時このデュオに入れ込んだ人でなければ、80年代洋楽史を振り返ったときに、名前を挙げられもしない存在ではないかと思うが、ふと思い出すと無性に聴きたくなってネットで検索したりしてしまうのだ。

 

それは記憶の隅に、遺伝子の核に棲み付いた本能が求める、癒しのメロディなのかもしれない。

 

残念なのはこの手のスマッシュヒットの主の多くが、本国でのその後の活躍は別として、日本では一発屋としてくくられてしまっていることである。

 

 

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