THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。新作も加えていきます。

The Politics of Dancing/RE-FLEX ~人工、密室、無機 ~マン・メイド・ビート

電波塔から発信される謎の電波。音は街に飛び火し、謎のひげ男はその街をさすらう指名手配者。

 


Re Flex - The Politics Of Dancing (1982) Remix

 


一瞬スリリングなドラマ的展開を期待するクリップだが、本当の魅力はそんな陳腐なところにはない。


このクリップの最高の見せ場は、ドラマ仕立ての山を越えたあとにある。

 

天然の光を失ったステージで、人口の光を浴び、プレイするメンバー。
彼らこそ、「ライヴハウス」という名の密室にふさわしいプレイヤーだ。
人工的に作りこんだ空間にふさわしいアクターだ。
リ・フレックスの象徴でもある、デッサン用の人形が彼らの無機な魅力をますます引き立てる。
それは、同じ人形をあたかも人間のように動かして汗臭く仕立てることで見るものをひきつけたゴー・ウエストとは正反対の見せ方である。

 


Go West - We Close Our Eyes - 1985

 


しかし、私は血液の通わぬ人形の魅力を引き出すには、こちらのやり方を好む。
リ・フレックスとは正確なビートを刻み、音を造りあげる機械なのだ。

 

 

The Politics Of Dancing - Re-Flex (2) 12

The Politics Of Dancing - Re-Flex (2) 12"

 

 

DON'T YOU WANT ME/HUMAN LEAGUE~逆ギレ、ヒロシのリフレイン~

♪馬鹿いってんじゃないよ~、お前と俺は~♪ 

 

 


ヒロシ&キーボー 3年目の浮気

 

「三年目の浮気」は、結婚して三年目に浮気がばれた亭主が妻に三行半を突きつけられるさまをデュエットで歌った、秀逸なコミック演歌である。


そして、「ドント・ユー・ウォント・ミー」はそのロンドン版と言い切って差し支えない。
カクテルバーで働くウエイトレスをポップスターとしてデビューさせた男が、「もっとビッグになりたいからあなたとはお別れよ」と切り出される。


しかし、「三年目の浮気」の亭主が「もてない男が好きなら俺も考え直すぜ」とニヒルに開き直るのとは対照的に、「ドント・ユー・ウォント・ミー」の男は「君をスターにしたのは僕だって忘れるな。いつだって引き摺り下ろせる事も忘れるな」と、どこまでも陰湿に逆ギレするのだ。

 

そして、暗めの映像の中に繰り広げられるのは、その彼女を狙撃すべく銃を構える男のドラマである。

 

 


The Human League - Don't You Want Me


逆ギレ、ここに極まれり!


フィリップの容赦加減ないニューハーフメイクとあわせて、「誰か止めてやれよ」感アリアリである。


ところが、このクリップはあっけない結末を迎える。


すべては、映画のロケ現場の出来事だったのだ。撤収するスタッフ、映画館でスクリーンに映るそのフィルムを見るフィリップ。
なあんだ、という感じで拍子抜けするが、ここで耳を済ませなくてはならない。
クリップの中でお芝居は終わる。

 

しかし、そのバックでリフレインするのは
「僕はもういらないのかい? ベイベー、僕はもういらないのかい? オーオオオー」
という、恨みがましいフレーズなのだ。

 


 

 



まあいろんな髪型してみましたけど、結局ハゲてます。

 

 


Human League Live in Los Angeles Concert Human 2016


おねえちゃんも「金髪か黒髪か」「右か左か」「スーザンかジョアンヌか」さんざん当時は意見分かれましたけど、結果はこんな感じです。
個人的には逆転勝ちです。甲子園であるようなドラマティックな仕上がりです。

Forgive And Forget/BLUE ZOO~飛び出せアイドルバンド! そして、消えろ!

こういうバンドは当時苦手だった。

 

それなりに音楽性の高さは見られるのに、プロデューサーの「こうすれば売れるよ」みたいなアイデアに安易に乗っかって、アイドルバンドとして飛び出してくる、有象無象の集団。


当時の心に響かなかったばかりか、今も心に残っていない。

しかし、あまりにキャッチーに作られた曲のサビだけが、耳の奥に残ってしまっているのだ。

日本のアイドルタレントが「ロックをやりたい」と駄々をこねたら、こんな曲が準備されるのかもしれない。

 


BLUE ZOO - FORGIVE AND FORGET

 

青いバック、赤い服、ブロンドのヴォーカリストの胸をはだけたシャッの着こなし。
なにもかもが、当時の安易なアイドルロックを象徴している。

 


National Pastime - It's All A Game

 

ニューロマンティック下流の中にいたブルー・ズーだが、そのノリはデュラン・デュランスパンダー・バレエとは程遠く、むしろ、日本だけで売り出そうとして日本で大コケして収集のつかなくなったナショナル・パスタイム寄り。

 


Blue Zoo - Cry Boy Cry


まだこのグループは「クライ・ボーイ・クライ」がヒットしただけいい方だが、ニック・カーショウのように、本来持っていたはずのひとひねりを表に出していればもっと違った結果が残されていたかもしれない。

 

 


 

 


 

 

 

Sexy Music/NOLANS, THE~安心して見られる過去

この曲のリリースが1981年3月。
今になって懐かしい一曲のその日付に驚いた。


The Nolans Sexy Music

 

同じ年の3月にDURAN DURANのPlanet Earthがリリースされ、前年にはすでにVISAGEのファーストアルバムがリリースされているのだ。
なんというこのレトロ感。
完全に60年代の音楽のようなフィルムに見える。

 


The Nolans - Sexy Music (1981 Japan)

 

ただあらためて曲を聴きなおすと、当時アイドルポップスだと思っていた曲が思いのほかカッコイイ。
クールで美しく、エンディングのスパッと切れるシャットダウン感なんて、シビレるくらいにカッコいい。

 

結局クラブシーンから出てきたニューロマンティックな連中と、ブラウン管の中で歌って踊る、家族で観て聴けるアーティストという、出自の違いだったということだろう。

 

今となってしまえば、DURAN DURANだってナルシシストな過去の思い出で、VISAGEだって洋風見世物小屋の出し物だ。


そう考えると、懐かしのフィルムとして一番安心して見られるのは、お茶の間に愛された家族で見られるサザエさんのようなポップスなのではないだろうか。

 

ただこれだけは繰り返すけど、この曲はそもそも曲がカッコいい。
すごくいいぞ。

 


 

 

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Spirit In The Sky/Doctor And The Medics~まやかしの媚薬、一瞬のきらめき


Doctor & The Medics - Spirit in the sky (HD 16:9)

ヒットするために何が必要か。

素晴らしい曲が書ければそれに勝るものはない。
人目を奪うルックスがあればそれに越したことはない。

ただ素晴らしいはずの曲を書いてもライバルは多い。
頭一つ抜けたハンサムでもライバルは多い。

それではすでに世間が受け入れた曲をカバーしてはどうか。
誰にも比べられないようなルックスで人前に出てみればどうか。

まやかしの媚薬とでもいうべき存在はそうして生まれたのではなかろうか。

派手なメイクと奇抜な衣装で大ヒット曲をカバーするという手法は、そのまま日本ではイカ天出場バンドにに応用されたといってもいいだろう。

今となっては何だったんだといいたいイロモノで、ヒット曲がカバーでは再評価の声も上がらないかもしれないが、こういう時代の徒花あってこそのショウビズ。

一曲も当たらない本格派より、一発でも当てた変格のほうが記憶に残る。
それどころか、記録にも残るのだ。
それがショウビズの世界だ。

 

 

 

Spirit In The Sky - The Singles

Spirit In The Sky - The Singles

 

 

Laughing At The Pieces

Laughing At The Pieces

 

 

It Ain't Necessarily So/BRONSKI BEAT~甦る悲しみを嘲笑う少年たちの感性

オリジナル・ブロンスキが残したたった一枚のアルバム。
アルバム通して聴けば聴くほど、ごった煮のようだが、それでも一本の筋が通っている。

 


Bronski Beat - It Ain't Necessarily So (1984)

 

この曲やHeatwave と Why や Junk の間には、とてつもない隔たりがあるはずなのに、ジミの声がそれらをひとつのアーティストの曲として認識させてくれるのだ。

 


Bronski Beat - Heatwave (2012 SiX DwArF promo) HQ

 


Bronski Beat - Junk Live In Hammersmith Odeon (1984.11.29)

 

原曲はガーシュウィン

 


It Ain't Necessarily So from Porgy and Bess

 

80年代にこんなエレポとして甦るとは、五十年以上も前の作曲者本人は思いもしなかったろう。


PVに至ってはガーシュウィンをさらに驚かすのではなかろうか。

矯正施設で生活する若者たちの、ちょっとした悪戯心から生まれる、禁じられた娯楽。
最後に罰則の靴磨きをするジミの姿で終わる映像は、曲の持つ、どこか悲しく荘厳な感じを、少年の時代の粗削りでシニカルな感性で嘲笑うかのようだ。

 


 

 


 

 


 

 

Dancing With Myself/BILLY IDOL~みんな真似した唇


Billy Idol - Dancing With Myself

BILLY IDOLの唇。
これはみんな真似したんじゃなかろうか。


STING のトンガリくちばし、


The Police - Every Breath You Take

 

そのコピーのCOREY HART


Corey Hart - Sunglasses At Night


NICK BEGGS の歯茎ウッキー


Kajagoogoo - Turn Your Back on Me HQ ( 720p )



と並んで、特徴的な歌い方についつい鏡を見ながら模写をしたものだった。

中でもこの物まねは難しく、おそらく他の二者と違い、ふだん使わない筋肉を使って形を作らねばならないらしく、鏡を見て何度も練習してやっと唇の上端が持ち上がるようになるというハードルの高いものだった。

 

しかし鏡を見ていたばかりに、左右非対称のBILLY の真似は、反対側の唇が持ち上げられるようになったなんてオチもあった。
実際にあったのだ。
対面相手に指摘されてはじめて気づくという……。

 


Billy Idol - White Wedding Pt 1

さて、それはさておきこの曲 Rebel Yell や White Weddingで知った人には意外なほど明るく聴こえるだろうが、GENERATION X 時代からの曲なので、こっちのほうが原点なんだろう。

 


Billy Idol - Rebel Yell


まあよくよく考えれば最大のヒット曲もスローなEyes Without A Faceだし、ルックスのイメージでハードでキレッキレな印象をこちらが抱いていただけなのだ。

なんにしても体が勝手に動き出しそうな名曲で、PVではゾンビが動き出しちゃってるけどドンマ~イ!

 


David Lee Roth - Just A Gigolo

後日、DAVID LEE ROTHのJust A GigoloのPVでパロディにされてたのは面白かったですね。