Hurt / RE-FLEX ~痛覚のない疼痛
アルバムとクリップで異なるイントロになっているが、曲としては当時の「ピコパコ感」満載のアルバムのイントロの方が、この曲にはふさわしい。
しかし、グループの色が出ているのはどちらかといわれれば、シンセの和音から入って、いきなりボーカルにつなぐ、クリップ版イントロのほうが出ている気がする。
血の通わないロボットに「痛み」を表現させた映像は、「体温のなさ」「感情のなさ」「痛覚のなさ」を逆手にとって、見るものに疼痛を与える。
実に不思議な感覚のクリップだ。その「痛み」の感じさせ方が、やっぱり近未来的なのだ。
このクリップは演奏シーンも多く、バクスターのうねるように音階を上げていくボーカル、ポールのクールなシンセ、ナイジェルの無機質なベース、すべてが映像で確認できる貴重なクリップ。
バクスターの髪型、ぺったんこのカンフーっぽい靴、すべてが憧れだった。
ただのハゲだとわかっていても、「近未来的髪型?」と訊きたくなるナイジェルのルックスも妙に目を惹く。
Ordinary Day/CURIOSITY KILLED THE CAT~80年代のカッコイイがあった部屋
日本でもCMに起用され、そのアイドル的なルックスがやっぱりウケたCURIOSITY KILLED THE CAT。
黒っぽさを感じるクールで都会的な音は、80年代のスカと表現するとしっくりくるかもしれない。
Curiosity Killed the Cat - Ordinary Day
都会のフラットのような場所にモデルのようなおねえちゃんがいて、無機質な部屋でクールな演奏。
いかにもあの頃のカッコイイが詰まったPV。
単なるミュージシャンというよりクラブカルチャーから飛び出した、アートやファッションとの境界線のない、みんなが憧れた時代の最先端が彼らだった。
70年代が VISAGE なら80年代はここなんじゃないかと勘違いさせられたものだった。
ヴォーカルのBen Volpeliere-Pierrotはいかにもモテそうな男前で、後ろ前に被った帽子がカッコよかった。
ただこのPVを見たときに、こいつは絶対ハゲると思ったね。
CURIOSITY KILLED THE CAT DOWN TO EARTH LOTTERY 2000
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Tarzan Boy/BALTIMORA~作られた雄たけび
このPV、よく見ればバンドとは名ばかり、ボーカル以外の姿は見えない。
一瞬ソロプロジェクトかと思うけど、実際にはソングライティングから何からすべてやったプロデューサー的な人物が、自分の思う絵を描いた作品のようなチームだったらしい。
ワンヒットワンダーの多くは、何の前触れもなく現れ、そしてその曲だけを残してどこかへ消えていく。
だが、むしろ世界的ヒットを放ったスターとして、母国では神格化され、人気は続いているのが当然の結果だったりする。
しかしそれも NENA や FALCO のように、その姿、出自が明らかでないと難しくなってしまう。
BALTIMORA というとなんといっても「おおおおおおおおおおおおお~」の雄たけびを、キャッチーなメロディにのせたヒット曲が思い浮かぶ。
というより、その曲名 Tarzan Boy は思い出せても、バンド名が思い出せないオーディエンスも多いのではないだろうか。
今冷静に振り返ってみると、そもそも BALTIMOLA とは誰だったのか。
アイルランド出身のボーカルというプロフィールから、アイルランド出身のグループかと思っていたら、実際にはイタリアのグループらしい。
そういわれてみると、いかにもなユーロディスコの曲調だし、なるほどな、と思う。
作られたものでも、魅力はある。
その証拠が何より、この曲は大ヒットしているではないか。
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ストロベリー・スイッチブレイド STRAWBERRY SWITCHBLADE
Strawberry Switchblade - Since Yesterday (High Quality With No Logos)
謎の二人組の少女は AZTEC CAMERA の RODDY が絶賛したとか、ある大物ミュージシャンが惚れ込んだとか、いきなりものすごい前評判で現れた。
なんとなく彼女たちを押した顔ぶれが、ネオアコよりだったせいで、最初のうちはアコースティック一派のような印象を持っていたが、まあよく聴けばシンプルな曲調ながら音はいわゆる基本のエレポだ。
それよりも今になって振り返れば、モノクロとカラーを視覚的に組み合わせたPVの中で目を引くのは、二人のそのファッション。
彼女たちこそ、ゴスロリの元祖なのではないだろうか。
Strawberry Switchblade - Let Her Go (High Quality With No Logos)
当時は奇天烈な印象の強かった二人だけど、2nd.シングル Let Her Go の PVはあっさりしたもの。
大仰なドラマ仕立てになどしておらず、それがまた一段とネオアコ一味のような印象に繋がったのかも。
ただAメロに入った途端 ROSE にフォーカスして、Bメロで JILL がフレームイン、そしてサビの JILL のコーラスシーンでは ROSE の動きを止め、二番のAメロで ROSE が歌い始めると同時に JILL がフリーズするという趣向はおもしろい。
特撮やCGを使ったものではないので、サビで静止している ROSE がまばたきしたりするのはご愛敬。
1st.シングルの Since Yesterday とおなじような世界観だが、モノクロ基調だったトーンがカラーになり、なんだか彼女たちの成長を見せられた気がしたものだ。
ドギツいメークの下には、意外に幼い彼女たちがいる。
同級生のパンク少女の素顔を見たような、意外に身近な少女が背伸びしているような、そんな親近感が、大物ミュージシャンたちを虜にしたのかもしれない。
ただ彼女たちの成長は、このあといきなりアクセルを踏みすぎる。
Strawberry Switchblade - Jolene
ネオアコに続く爽やかさはなく、しかも万人が大人の女の色気を感じられるのでもない、奇妙にねじれたアングラクイーンのような道に入り込んでしまうのだ。
彼女たちのまとった黒いドレスとボンデージは、まるで甘酸っぱい青春のメタファーである苺を切り裂いたナイフを拭う、血まみれの喪服のようだった。
その黒は、たしかに流れ出たはずの血の色をカモフラージュし、そして彼女たちはその闇に飲まれるように姿を消してしまった。
飛び出しナイフが切り裂いたのは、実りかけた苺の実だったのか。
それとも何も知らないままポップスターの階段に足をかけてしまった、二人の少女の夢だったのか。
二つ割にされた苺の実から滲んだ果汁は、甘かったのだろうか。
血まみれの苺たちに乾杯を。
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68Guns/ALARM, THE~少年のための俺たちのライヴ
THE ALARM : 68 GUNS original video
ファンの少年が見ようとしたライブ。
だけど少年には入場料が足りずに、もぐりこんだライブ会場を追い出されてしまう。
メンバーは街に飛び出し、地下鉄で歌い……どこか THE POLICE の SO LONLEY を思い出させるPVだ。
圧巻は最後のスクラップ置き場のような場所でのライヴシーン。
闇の中で火に照らされて歌うメンバーの美しさよ。
会場を追い出された少年がようやく見ることのできた、憧れのライヴが魅力的に描かれている。
THE ALARM 自体はこのド派手なデビューだけで終わってしまった感があり、スローガンだけでコケてしまった印象だが、そもそもニューロマンティックから爽やか系ネオアコの流れの中、日本では音楽に寄り添ったディスコ→カフェバーというムーヴメントがあった。そんな時代に、生ギターにハーモニカで汗くさいロックを引っ提げて挑戦したのでは、苦戦もやむないところだろう。
The Alarm - Where Were You Hiding When The Storm Broke
このあとに続く Where Were You Hiding When The Storm Broke も名曲だったが、方向性としては変化なく、静かに消えていった。
Big Country with Mike Peters - In a Big Country
Mike Peters はその後、癌を患いながらも、フロントマンを亡くしたの再結成にボーカルとして参加。
二十年以上たっても変わらない熱いパフォーマンスを見せてくれている。
あの日チケットを買えずに会場を追い出された彼も、そのステージを見ただろうか。
68 Guns (2007 Mike Peters Remix)
- アーティスト: アラーム
- 出版社/メーカー: Parlophone UK
- 発売日: 2007/10/29
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Make It Better (Forget About Me)/TOM PETTY AND THE HEARTBRAKERS~ノイズのようなコウモリ
Tom Petty And The Heartbreakers - Make It Better (Forget About Me)
TOM PETTY という人はなんだかフワフワとした不思議な空気を醸し出す人で、そもそもやっていることはバリバリのロケンロールなはずなのに、なぜか立ち位置はふと気が付くと、TALKING HEADS なんかに近い場所に立っていたような気がする。
だけど、 TALKING HEADS のトンがったファンなんかには、「ロケンロールでしょ」といわれてしまい、そしてバリバリのアメリカン・ロックファンからは「ニューウェイヴに転んだ人でしょ」といわれるような、「鳥なの? 猫なの?」といわれても着実に繁殖するコウモリのように、微妙で、かつ絶妙な立ち位置だった気がするのだ。
大掛かりなPVの効果もあってか大ヒットした前作 Don't Come Around Here の陰に隠れてしまった曲だけど、この曲はPVの世界観としては、前作をちゃんと引き継いでいるし、なんとも不思議なふわふわ感が素晴らしい。
コーラスに配置した黒人と白人の女性のビジュアルも視覚的に素晴らしく、おなじことを考えたのは、 WHAM! なんじゃないかと。
時代的に、こっちがあとなので、あれがいける! そう思ったのだとしたら、やっぱりこの人はつかみどころのない、ニューウェイヴにはロケンロールだと思われたままのニューウェイヴなのだ。
このPVの途中に出てくるスイング式のマイクなんて、みんなやりそうでやらないビッグ・ギミックじゃないかな。
チェッカーズ全盛期のフミヤとかがいかにもやりそうだけど、ここまで大掛かりにはやらなかったんじゃないかっていう、ありそうでなさそうなニーズ感。
これこそ TOM PETTY の真骨頂なんだよなあと思う。
このドラマのすべてが、たった一人の女の子の頭の中で起きていたノイズに過ぎなかった、そんなオチも考え付くのは TOM か SPARKS くらいなんじゃなかろうか。
自分の中でド真ん中にはいなかったけど、やっばり素敵だなと、ふと思い出すことの多い傑作。
サザン・アクセンツ [ トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ ]
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ローマン・ホリデイ ROMAN HOLLIDAY
小学校の時、クラスで一番モテモテだった〇〇ちゃんが、大人になって再会したら全然イケてなかったという経験はないだろうか。
子役時代、ものすごく可愛くて日本中の茶の間のアイドルだったタレントが、大人になったらイケてなくて、人気が下降していくことがある。
その最大の理由は、素材の魅力を生かすことを忘れてしまったからではないだろうか。
子供の頃は〇〇ちゃんはお化粧しないスッピンで可愛かったのだ。
その素顔からあふれる表情や行動に魅力があったのだ。
それが、大人になった彼女は、不似合いな化粧をこれでもかというくらいして、僕の前に現れた。
子役タレントも同じこと。
子役というイメージからの脱却を図る余り、セミヌードになってみたり、派手なメイクでテレビに出てみたり。
しかし、世間が求めているそのタレントへの魅力はそんなところにない。
そこから生まれるのが違和感であり、その違和感が飽和した時、彼女はブラウン管から姿を消すのである。
ローマン・ホリデイもそんな道をたどったグループなのかもしれない。
Don't try To stop It - Roman Holiday
デビューした時の彼らは、白いTシャツにGジャン、バギーパンツ、水兵帽。
となりのお兄ちゃんがある日、テレビの街頭取材でインタビューされる姿が映されたような、親しみやすさのある連中だった。
とはいえ、演奏はしっかりしていたし、「ドント・トライ・トゥ・ストップ・イット(邦題:俺らはハリキリボーイ ← あんまりだけどでもピッタリ)」に代表される、ロカビリーやスゥイング、ジャイヴを下地にした明るいロックは、ただ明るいだけのアメリカンロックとは一味違うひねりも持ち合わせていた。
ストレイ・キャッツとともに、ネオロカビリーという、新しいムーヴメントの誕生を予感させたものだった。
しかし、ネオロカビリーはムーヴメントとして名を残す事はなかった。
残ったのはムーヴメントの名前ではなく、ストレイ・キャッツというひとつのグループ名だけだった。
なぜ、ローマン・ホリデイは消えたのか。
セカンドアルバムの発売と同時に、彼らはその方向性を大転換させたからである。
まず、彼らの音楽に個性をもたらしていたホーンセクションのメンバーを切り捨てた。
そして、Gジャンとバギーパンツを脱ぎ捨て、ピンクのジャケットとレザーパンツにはきかえた。
そして髪を綺麗にセットして、ステージに立ったのだ。
Roman Holiday - Hear In The Night
そして、彼らは消えた。
そう、結局彼らのヒットの理由は、独自の音楽スタイルを個性あるキャラクターで表現したことにあったのだ。
それを何を勘違いしたのか、当時ちまたに溢れ返ったデュラン・デュランのコピーのようなスタイルに全てを変更した時点で、彼らはその他大勢の中に埋もれてしまったのだ。
素材の魅力で勝負したとなりのお兄ちゃんたちは、街に出てオシャレを覚えて故郷のみんなの前に姿を見せたら、「へんなカッコ」と切り捨てられてしまったのだ。
「止めようとしたって無駄だぜ!」そう言われたばっかりに、何も言わなかった人たちは、今になって「あの時止めておけばよかった」そう思っているに違いない。
ローマの休日 [ ローマン・ホリデイ ]
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