Back Where You Belong/38SPECIAL~誰にも秘密にしたかった青春の踏絵
青春時代には青く屈折した時期ならではの美学がある。
38 Special - Back Where You Belong
VISAGE の造られたステージに酔い、ULTRAVOX の哀愁漂う切ないメロディに酔い、SPANDAU BALLETの大掛かりな貴族コスプレに酔い、 DURAN DURANのおしゃれな空気に酔った僕たちにとって、ひげ面のむさくるしい男どもが奏でるストレートでなんの奇もてらわないストレートなアメリカンロックは、ある意味で音楽の中の恥ずかしい部分だった。
この曲を好きだということは、見せてはいけない自分の秘密。
心の中でふといい曲だなと思っても、このPVを見ながら口ずさむ姿も、レコードラックに並んだ彼らのアルバムも音楽仲間には見られてはならなかった。
だけどドジな刑事集団に扮したメンバーと、目を見張るような美人の犯人の追いかけっこは見ていてほほえましい。
いかにもな感じののほほんとした曲調に、過激なシーンのない刑事ドラマ仕立てのPVがよく合っているのだ。
二番の肉の貯蔵庫のシーンでのシャドウボクシングに、エンディングの地下鉄のシーン。
ちょっとした小ネタまでいとおしく感じる。
今聴くとどこかノスタルジックに感じるメロディも魅力的だ。
38SPECIALの当時の曲はどれもあか抜けない邦題がついていて、これも「想いは果てしなく」という名でリリースされている。
今になって曲を探そうとすると、邦盤アルバムはどれも似たような雰囲気のタイトルが並んでいて判別しにくいことこのうえない。
なんというか、「想いは果てしなく」とか、「愛は消えても」とか、今になるとなんだか優しい気持ちになるタイトルなのだけど、こういうセンスもとがっていた青春時代には避けて通りたいある種の踏絵だった。
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ストレングス・イン・ナンバーズ [ 38スペシャル ]
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Touch/BERLIN~80年代を代表するエレポライブ
Berlin - Touch (sound remastered)
小悪魔のようなTerry Nunn。
その魅力はこの頃、PVでもライブでも全開で発揮されていた。
歌詞を聴くとホント演歌やフォークのような世界だが、BERLINの演奏、メロディ、そしてTerryのアクションが加わると、素晴らしくカッコいい作品になる。
この曲はシングルカットされなかったが、間違いなくBERLINを代表するナンバー。
このフィルムは80年代前半に開催された、今でいうロックフェスの屋内版で、実にいろんなアーティストが登場したが、中でもとりわけカッコよかった演奏のひとつがこのBERLINだった。
動きが見られることを計算しつくして演出されていて、そこに盛り上がるオーディエンスの雰囲気に合わせて自然と発生するアドリブの動きが重なって、魅力は無限に広がっていく。
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This Is Not America/DAVID BOWIE, PAT METHENY~語られることの少ない哀愁
BOWIEの80年代の仕事の中でも異色のコラボがこの曲だろう。
Pat Metheny Group feat. David Bowie - This Is Not America
映画「The Falcon and the Snowman」の主題歌を歌うのに、タッグを組んだ相手はジャズギタリストのPat Metheny。
切なく熟れたメロディ、ボウイの低音とファルセットがその魅力を最大限に引き出した切なく美しい一曲だ。
PVは映画のシーンの組み合わせで作られていて、舞台となっている70年代のアメリカの様子が、重く切ない音に載せた哀愁漂うヴォーカルとともに流れていく佳作。
それぞれのオーディエンスは空を飛ぶ一羽の鳥の両翼に何を重ねて見るだろう。
単発のサントラ用コラボ作品とあって、BOWIEの中では語られることの少ない一曲だけど、間違いなく名曲。
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Strip/ADAM ANT~裸になった王子様が教えてくれたもの
アダムの国の王子様に魅せられた庶民の娘たちにとっては、このPVはホント封印してしまいたい一本かもしれない。
イントロからの入りは相変わらずの馬に乗った王子様なのだが、なんというか場面が進むにつれ、王子様が少しずつ壊れていく。
Stripというタイトルに合わせて全体に女性のチラチラシーンが続くものの、曲調もあいまってまったく色っぽくはなく、ましてや妖艶でなどあるはずもない。
なんだか場末のストリップ仕立てのコントの舞台を見ているようだ。
途中に入るサイコのようなシャワーシーンにも、原典のあの怪奇感はなく、そしてアダムはどんどん壊れていく。
もう二番のアラビア風の衣装なんて、東京コミックショーにしか見えない。
それでもアダムは突き進む。
最後はシャワーシーンの種明かしも、まるで楽屋落ちのNG集のような形でおしまい。
この頃すでにかなりデコにキテるけど、王子、頭髪は水にぬらさないほうがいいですぞ。
そしてこのPVを見た結論として、あらためてこれを機に見直してみた東京コミックショーはおもしろい。
裸になった王子が教えてくれた、昭和の貴重な財産だ。
ベスト盤にもこの曲ちゃんと残してくれるアダムがなんだかえらい気がします。
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Lucky Star/MADONNA~あの夏の日のWANNABES
サイボーグになる前のあの娘は、ぷにぷにしたお腹を見せて僕たちの前で淫靡な踊りを見せてくれた。
だがその踊りはどこかエロティックでもフレンドリーで、僕たちよりも感化されたのは、ティーンの少女たちだった。
WANNABES──そう呼ばれた彼女たちは、あの頃の彼女たちにとっての憧れのマドンナの姿を真似た。
ライオンのようなワイルドなブロンドに、黒死蝶のようなリボンを巻き、そしてウェイファーラーのフェイクグラスを鼻に乗せるように下にずらしてチューインガムを噛んだ。
僕たちは街に溢れる彼女たちの黒い革のライダースの下にのぞく、メッシュのタンクトップの下の白い肌を眺めていた。
彼女たちがダンスを真似て少しでも動くと、そのタンクトップの下からちらりと見える白いお腹に僕たちは何かの夢を見ていた。
だけどMADONNAはストリートファッションをやめて、ピンクのドレスに身を包む。
そしてみずからの体を鍛え上げ、サイボーグのような女に変化した。
彼女たちの憧れは、もう簡単に真似のできる存在ではなくなっていた。
WANNABESはクローゼットの奥にしまい込んだ、メッシュのタンクトップを手に取って、あんな日々もあったなあと思い出しながら、幸運の星の下に生まれた女神様をうらやむのだった。
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Train in Vain/CLASH, THE~後世に遺したい“へにゃへにゃ”
The Clash - Train in Vain (Live at the Lewisham Odeon)
この曲はアルバムリリース時、クレジットに表記がなく、隠しトラックとして騒がれたらしいが、実際のところは単に印刷に間に合わなかったとかなんとか。
まあ、そんなことでも話題になった一曲だ。
そのため正式なタイトルがあるのにサビで繰り返されるスタンド・バイ・ミーのフレーズを曲名だと思っているファンも多いだろう。
たしかにスタンド・バイ・ミーは、あのスタンダードナンバーもあるし、のち映画もヒットするからキャッチーなタイトルではある。
そこを敢えてこんなタイトルにするところが、らしいっちゃらしい。
そんなことより何よりも、この曲を聴いて湧いてくる感想は、
へにゃへにゃ
こんなにへにゃへにゃした曲、そうそうない気がする。
というか、へにゃへにゃしてるのは、MICKのヴォーカルなんだよね。
とにかくこの曲に限らず Should I Stay or Should I Go ? にしろへにゃへにゃ。
The Clash - Should I Stay or Should I Go (Live at Shea Stadium)
そしてこのフイルム、曲に合わせたMICKのその動きまでへにゃへにゃ。
とにかくへにゃへにゃなのだ。
もうこの曲は、俺史上最高のへにゃへにゃ。
グラミー賞に“へにゃへにゃ部門”があれば受賞確実。
“後世に遺したいへにゃへにゃロック100”なて企画があれば間違いなくトップ1.
ポイントはクネクネとかぐにゃぐにゃとは違うところ。
あくまでへにゃへにゃなのだ。
THE CLASHにしては珍しいラブソングというのも、その曲調に影響しているのだろうか。
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The Lion's Mouth/KAJA GOO GOO~誰が噛まれた? ライオンに
気を付けなよ。
ライオンに噛まれてしまうよ。
君はシャイすぎるよ。
なんてシャイなんだ。
秘密なんだね。
とてもおなじバンドの歌う歌詞とは思えない。
だけどLIMAHLというたった1ピースが欠けただけで、彼ららはこんなに変化してしまった。
なぜなら彼はフロントマンだったからだ。
銃殺を連想させる行列の目隠し、火炎放射器、このPVが放送禁止になったというのは、おそらく第二次大戦中のナチスドイツへの連想があったからではないかと推測する。
ただ歌詞も映像もシリアスだが、そのPVのメインを張るメンバーの演奏シーンはかっこいい。
前曲では演奏シーンのないPVだったが、まだNICKは四弦のベースギターを弾いていた。
このPVで、のち彼の代名詞になるチャップマンスティックが登場するのだ。
初めて見る楽器でどうやって弾いているのかもわからなかったけど、とにかく憧れた。
ただそれまでの余韻を買ってヒットしたと違い、この曲でバンドはチャートと決定的な訣別への道を進むことになる。
曲からもメロディアスなシンセのフレーズは消え、そしてとろけるようなLIMAHLの甘いボーカルはNICKの硬質なものにかわり、そして歌詞も。
もともとLIMAHLをあとから参加させて出来上がった五人が発表した作品は、NICK率いるオリジナルKAJA GOO GOOの本質ではなかったことは想像に難くない。
あの形はLIMAHLを入れることで、大人たちがチャート向けに完成させた作品だったのだ。
そしてそのスタイルで人気を博してしまった以上、彼らの人気を支えていたのは、ティーンの女子たちだ。
実際日本でもそうだった。
NICKにとってはLIMAHLがいなくなれば、この傾向になるのは当然だったに違いない。
しかしその旗の進軍先に、五人のKAJA GOO GOOのファンたちはついてきてはくれなかった。
そこにNICKとは違う、プロデューサーの手によって造られたグループだったKAJA GOO GOOの悲哀がある。
結局、ライオンに噛まれたのは誰だったのだろうか。
気を付けるべきは何に対してだったのだろうか。
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