Run To You/Bryan Adams~僕の苦手だった汗のにおいは影を潜めて、でも走ってきたのは彼女だった
Bryan Adams なんていうのは、鬱屈した思いを抱えて、好きなあの娘に素直に好きだと伝えることもできなかった青春時代には、目障りな存在でもあった。
いや、彼だけではない。
BRUCE SPRINGSTEEN なんかもそうだし、とにかくいわゆるアメリカ大陸の汗臭さを感じるロックは苦手だった。
Bryan の場合 Cuts Like A Knife なんて、いかにも当時の青春ちゃんに響きまくるタイトルがついてるのに曲がこっち方面で、しかもTシャツにジーンズだ。
一番苦手な方向じゃないか。
Bryan Adams - Cuts Like A Knife
とにかくジーンズという時点で、Tシャツが白いという時点で、 VISAGE を中心にしたニューロマンティックに酔い、ナイトクラビングにあこがれた多感で内気な少年には、野球部と同じ青春の押しつけのような感触にあふれていたのだ。
しかし Run To You は、そんな忌避すべき存在だった彼の印象を変えてくれた。
曲調もいつもと違うし、そしてPVは雪、大雨、落ち葉。
明るい夏や、汗のほとばしる男の体臭は影を潜めていたからだ。
落ち葉の中から掘り出されたギターをかきならすシーンには、自分が失った、もしくはまだ手に入れることすらできていなかった宝物を手に入れたような気持になったものだった。
今見てもかっこいい。
ただちょっと気になるのは、仕方ないけれどおネエちゃんが昔風ってところと、そしてよく見れば主役はやっぱり変わらず白いTシャツにジーンズだったということか。
暗い画面に騙されて、そんなファッションだったという印象は薄れてしまっていた。
あ、あとこれも今さら気づいたんたけど、走ってくるのが女の子のほうで全然 Run To You じゃないっていう、ね。
ま、いっか。
レックレス [ ブライアン・アダムス ]
|
アルティメイト 〜グレイテスト・ヒッツ [ ブライアン・アダムス ]
|
Sunglasses At Night/COREY HART~まぶしい夜に僕を隠すウェイファーラー
Corey Hart - Sunglasses At Night
サングラスというアイテムは実用性以外の部分で、僕たちの幼い目に魅力的に映った。
黒いウェイファーラーは中でも飛び切りのアイテムだった。
MADONNA, BILLY JOEL, IAN MCCULLOCH ...憧れのアイコンは黒いレンズの向こうからこちらを見ていた。
僕たちはそれを真似て、幼い表情をレンズの下に隠し、あの子の前で気取って見せた。
それはさぞかし滑稽な、背伸びだったことだろう。
しかしそのレンズを通すことで、僕はあの子の涙を見て胸に突き刺された剣の傷跡を隠していた。
サングラスを夜にかけるというのは、まったく実用性とは別の話だったが、僕たちにとってファッションアイテムだったそいつを夜でも手放すことはできなかった。
もうちょっと色が薄ければいいのに、だけどそれじゃ昼間には目が見えてしまう。
黒ければ黒いほどあの頃のサングラスには存在価値があった。
COREY の歌う夜にかけるサングラスは僕たちにとっては、あの日々の真実だった。
闇の中にサングラスをかけた彼が、まるで STING のようなくちばしを思わせる姿で歌う。
そして赤い靴。
暗闇にこれほど映える色はなかった。
どこか淫靡でどこかセクシーなその配色に僕はあの子への行き場のない憧れをぶつけたものだ。
そして僕がサングラスを必要としなくても、あの子の顔を見られるようになったとき。
彼女はやっぱりなんにも変わらない様子で僕の隣にいた。
最初から僕がその表情を隠そうとしていた日々に何の意味もなかったのだと思う。
それでも僕には、サングラスなしで彼女を見つめられるようになるまで、時間が必要だったのだ。
あの子は今もあの日と変わらない笑顔で笑ってくれている。
だけど僕はまたサングラスを手に入れて、彼女に会おうとしている。
齢相応に似合うようになっているといいのだけれど。
あの子はきっと「どうしたの?」とまた笑って、やっぱりあの日のように僕にはまぶしい存在なんだろう。
【中古】 【輸入盤】1st Offense /コリー・ハート 【中古】afb
|
(EP)コリー・ハート/「サングラス・アット・ナイト」「アット・ザ・ダンス」 【中古】
|
【中古】 ベスト・オブ・コリー・ハート /コリー・ハート 【中古】afb
|
Crazy For You/MADONNA~「あなたに夢中よ」とうたってくれた日々
夢中。
熱中。
溺愛。
実際に夢の中にいては日々を暮らしてはいけないし、熱の中にいては燃えてしまう。
そして溺れてしまっても生きていけない。
それでも僕たちはあの日、あの頃、君の姿を夢を見て、君のために燃え、そして君に溺れていた。
そんな表現が日本語の世界だけでないことを知ったのは、いつだっただろう。
クレイジー、バーニング、そんな言葉を恋という感情につなげて教えてくれたのは MADONNA だったかもしれない。
彼女がまだサイボーグのように完璧な、スターという生物になる前、僕たちは彼女の姿にドキドキし、女の子たちは彼女になれるかもしれないという青春時代ならではの淡い夢を抱いていた。
ビルボードのトップに輝きながらもこの曲が、彼女のメインストリームからは外れた印象を受けるのは、当時幅を利かせていた映画用のサントラ曲だったこと、そしてそのために映画のシーンを盛り込んだPVのせいもあるかもしれない。
だけど僕たちの一番近くで彼女が最高に輝いたのは、黒い衣装にを包み、ライオンのようなブロンドを散らかし、首から下げたクロスを振り乱して「あなたに夢中よ」とうたってくれていたこの日々だった。
マドンナ/ウルトラ・マドンナ・グレイテスト・ヒッツ★全17曲★SCD-C48
|
The Boys Of Summer/DON HENLEY~過ぎ去った夏を思うモノクロの世界
Don Henley-Boys of Summer HD/HQ 1984+Info✔
モノクロを効果的に使ったPVも美しく、大ヒットした夏の名曲。
歌詞にあるように夏真っ盛りの曲ではなく、過ぎ去った夏を思う表現が、この切ないメロディにこめられている。
イントロから入る泣きのギターは絶妙。
PVに登場する少年はもくもくとドラムを叩く。
DON 自身の影を投影したような少年はタイトルにもかけられていて、そしてそのバックに成長していくその姿が映されるのだが、モノクロであること、ファッションなど、はたして少年とフィルムのどちらが過去なのかがわからない演出が幻想的な雰囲気を出している。
DON のハスキーな高音が紡ぎ出すメロディがはてしなく切ない、戻らない夏を想起させる。
それにしても同じ時期にソロでヒットした GLENN FREY とは対照的な世界観だ。
Glenn Frey - The Heat Is On (From "Beverly Hills Cop" Soundtrack)
今回PVを見直して気付いたのだが、エンディングは少年の姿ではなかったようだ。
記憶では最後も少年がドラムを叩いていたような気がしたが、意外に早く彼の出番は終わっている。
そんな混濁した記憶も、過ぎ去った夏の日の残り香を感じさせるではないか。
ビルディング・ザ・パーフェクト・ビースト [ ドン・ヘンリー ]
|
ヴェリー・ベスト・オブ [CD+DVD/輸入盤][CD] / ドン・ヘンリー
|
Making Love Out Of Nothing At All/AIR SUPPLY~軍隊のない国に生まれた僕たちが妄想する夏
Air Supply - Making Love Out Of Nothing At All
毎年ある季節になると思い出すPVというのがある。
夏になると思い出すこの曲は、別にフィルムが夏なわけではないのだが、このグループが夏・渚といったイメージと切り離せなかったことがあるだろう。
透き通るようなハイトーンヴォイスは、夏に涼やかな風を運んでくる。
曲調も激しいものではなく、ウエストコーストに吹く一陣の風を思わせる爽快さ。
PVの中で紡がれる若い二人のストーリーも青春の輝きとうまくいかないもどかしさがみごとに演じられていて、どこまでも爽やかだ。
軍隊のない国に生まれた若者にとって、彼が徴兵なのか志願なのかはともかく、戦場に旅立ち離れ離れになり、そして除隊したのか再会するというシチュエーションは自分の身には起こりえないドラマティックな物語でもある。
そして煙草にリーゼント、80年代初期のカッコイイが小道具として効果的。
この涼やかな名曲を歌ってるのが、肉まんみたいなおっさんだという点はともかく、夏になると見たくなるPVです。
playlist:ヴェリー・ベスト・オブ・エア・サプライ [ エア・サプライ ]
|
【メール便送料無料】Air Supply / Ultimate Air Supply (輸入盤CD) (エア・サプライ)
|
【中古】 ザ・ベスト・オブ・エア・サプライ〜30thアニバーサリー・パーフェクト・コレクション /エア・サプライ 【中古】afb
|
Don't You Forget About Me/SIMPLE MINDS~僕のこと忘れられないんじゃないのかい?
Simple Minds - Don't You (Forget About Me)
映画のために書き下ろされたこの曲、当初は BRYAN FERRY にオファーされたらしい。
それが実現せず、巡り巡って白羽の矢の刺さった JIM KERR はこの話を受けた。
これが運命の分岐点だった。
Simple Minds: Dont You Forget About Me
あと一歩メジャーになりきれなかった彼らの最大のヒット曲になるだろう。
誰もがそう思ったこの曲は、最大どころか、次のアルバムで世界的スターになる第一歩だった。
Simple Minds - Alive And Kicking
そんな一曲が自分たちの書いたものでないところに、人生の明暗を感じさせる。
もちろん明るく照らされたのは彼らで、苦しみ続けたのは BIG COUNTRY だ。
モニターに囲まれ、おもちゃ箱をひっくり返したようなスペースでの疑似ライヴ的なPVはよくあるシチュエーションだが、このフィルムの動きは美しい。
なめらかで気負いなく、そして曲の盛り上がる部分を確実に魅力的に見せてくれている。
素朴なPVだが、彼らの魅力を伝えるのには十分すぎるかっこよさだった。
どうでもいいけど JIM KERR ってなんでこんなにモテるんだろう。
最初の嫁さんは PRETENDERS の CHRISSIE で、
The Pretenders - Middle of the road (HD 16:9)
次の嫁さんは PATSSY KENSIT だぞ。
Eighth Wonder - Stay With Me (1986 Japan)
まあどっちも「元妻」ってことなんで、結局破綻してるわけだけど。
僕のこと忘れられないんじゃないのかい?
それにしても JIM のぱっと見なんて、垢ぬけなくてハナタレ小僧みたいな童顔だし、ライヴエイドのときなんて当時はやってたとはいえ裾のしまったダブダブズボンで、ほとんど普段着ですよ。
SIMPLE MINDS - "Don't You" - Live Aid 1985
げに難しきは女心よ。
Simple Minds / 5 Album Set(Box) (輸入盤CD)(シンプル・マインズ)
|
新品北米版DVD!【ブレックファスト・クラブ】 Breakfast Club: Criterion Collection!<ジョン・ヒューズ監督作品>
|
Gambler/MADONNA~サントラが切り取った偉大な歌姫の一瞬
MADONNA が世界を代表する歌姫になって以降、ほぼ封印されているといってもいい一曲だが、あの頃の彼女の魅力をこんな伝えているPVはほかにないのではないだろうか。
その魅力の根源は、映画のサントラ用に作られた曲だったことにある。
この曲は MAONNA のアルバム一枚を構成するために考え抜く必要もなければ、ボーダーラインをヒットさせ、ようやくスターとしての足場を固め始めたニューヒロインのために万全を期す必要もなかった、ただこの一曲だけに当時の彼女のパブリックイメージを詰め込めばよかったのだから。
そこに展開されたのはあくまでヤンチャなダウンウタンの歌姫の姿だ。
衣装や雰囲気含めて、デビューの頃の彼女の歌と踊りの魅力がここまで堪能できるPVはほかに残ってない。
その瞬間輝く MADONNA という存在を、ある意味で無理やり切り取ることが出来たのは映画というイベトンあってこそだった。
無理もない。
あの当時 MADONNA がここまでの大スターになるのかどうかは誰にもわからなかった。
だからこそ、その瞬間の彼女の魅力を伝えることに必死になった。
それがこのPVだ。
これこそあの頃のサントラブームが切り取った、偉大な歌姫の生涯の一幕だ。
【輸入盤】 Vision Quest - Soundtrack [ ビジョン クエスト 青春の賭け ]
|