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THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。

アイシクル・ワークス ICICLE WORKS

G,H,I ア行

ウイスパー・トゥ・ア・スクリーム(バーズ・フライ)」のクリップは、なぜ日本のMTVであれほど繰り返し、流されることになったのだろう。

 


Whisper To A Scream (Birds Fly) - Icicle Works


たしかに、イギリス出身のグループでありながら、日本のチャートに影響力のあるビルボードのトップ40あたりにはランクインしていた。
サビのフレーズは耳に残った。
ヴォーカルのイアン・マクナブはちょっとかわいい感じだった。


だが、この曲全体をつらぬく骨格ともいえるドラムの音は、明らかに「音楽をファッション感覚で捉える最先端人」や「かわいい曲が好きな女子大生」や「アイドルタレントを欲しがる女子高生」とは、遠く距離を隔てていたはずだ。

 

このグループのファーストアルバムを聴くと、シングルカットされた二曲の特異さに気付くはずである。

 

他の曲と比べて「ウイスパー・トゥ・ア・スクリーム」のサビのメロディは特殊なまでにキャッチーだし、もう一曲にいたっては、タイトルからして「ラヴ・イズ・フル・オブ・ワンダフル・カラー」である。

 


Icicle Works - Love Is A Wonderful Colour


「愛ってきれいな色でいっぱいだよ」なんて、堂々と絶唱するなんて考えられるだろうか。

 

しかしその反面、「チョップ・ザ・ツリー」「ニルヴァーナ」「ファクトリー・イン・ザ・デザート」など、「ラヴ・イズ・フル・オブ・ワンダフル・カラー」と同じアルバムに並ぶとは思えないタイトルがずらりと並んでいる。

 


The Icicle Works, live in 1984 - A Factory In The Desert (Ian McNabb)


ウイスパー・トゥ・ア・スクリーム」にしたって、字面を見たら、後者よりだ。

そもそも「バーズ・フライ」がタイトルだったわけだし。そう思い直すと、キャッチーなサビとともに聴くものを虜にした「ウイスパー・トゥ・ア・スクリーム」のハードなドラムが耳の奥に響いてくる。

 

当時、デュラン・デュランに代表される日本でアイドル系のプロモーションをされるアーティストの成り立ちには二通りあった。


ひとつは、いちから作ろうとするやり方。
その最大の成功例は、GIオレンジだろう(日本限定)。

 


GI ORANGE - PSYCHIC MAGIC


ちなみに失敗したのは、デヴィッド・オースティンやナショナル・パスタイムだ。

 


David Austin - Turn to Gold (5th June 1984)

 


National Pastime - It's All A Game

 

そして、もうひとつのやり方。

 

これがこのアイシクル・ワークスにも適用された方法なのだが、ライヴハウスから出てきたバンドをメジャーデビューさせる時に、「結構ルックスいいから、そっちの路線で行っちゃえ」という方法。


これは、メンバーにポップスター志向が強い場合は成功するが、そうでない場合はかなりの確率で失敗する。

 

中でも、チャートアクションの失敗よりも悲惨なのは、メンバーが方針に造反するような音を作り出すことだ。

本来ならプロデューサーが望むより、もう一割程度難解な曲を作りたいはずのメンバーが、ポップな歌謡曲を求められたばかりに意固地になって、自分たちの音楽の中の難解な部分だけを集めて曲を作ってしまい、メジャーデビューする前のファンまでついてこれなくなってしまうというパターンである。


アイシクル・ワークスのイアン・マクナブはこの迷宮に入り込んでしまったのではないだろうか。

 

ファーストアルバムとセカンドアルバムの間に当たる時期に、アイシクル・ワークスのライヴがオンエアされたことがある。

それを見た時、なんともいえない危険性を感じたことを思い出す。
ステージで繰り広げられる三人のパフォーマンスは、明らかにアイドル系バンドのものではなかった。
中でも、「ウイスパー……」の中で、ギターとキーボードを一人で操り、目を閉じて絶唱するイアンの姿は際立ってそうだった。

 


Icicle Works Birds fly (Whisper to a scream) Live

 


その前髪はアゴまで伸び、アイドルとして扱われかけた自らの顔を覆い隠すような髪形になっていた。


そして彼らは自由を得た。


セカンドアルバム以降、ポップさやキャッチーさは影を潜め、そこに展開されていく世界は「ニルヴァーナ」をさらに深遠なものにした、宗教美術のような世界であった。

透き通るツララを作りつづける工場で働く青年は、作るはしから溶けていくツララを見て、工場での大量生産のむなしさを悟ったのだ。


そして彼は絶叫する仲間にそっとささやいて、砂漠の中の工場から鳥のように飛び立った。
自らの涅槃へ。そして工場には、彼が「愛」と呼んだ、きれいな色をした大木が切り倒されて残されていた。
仲間とともに。

 

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