THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。新作も加えていきます。

ヒューマン・リーグ HUMAN LEAGUE

ぶわっはっはっはっは。


今となってはどちらを笑うべきかわからんが、フィリップ・オーキーの迷走ぶりは爆笑に値する。
80年代前半の彼は、二人いるといってもいいくらいだ。


一人はポップスター、フィリップ・オーキー。

もう一人は反戦家、フィリップ・オーキー。

 

アルバム「DARE!」から大ヒットした「ドント・ユー・ウォント・ミー(邦題:愛の残り火 ← ヘンテコだがその通りの曲である)」。

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クリップに登場したフィリップ・オーキーは、何もそこまでと言いたくなるくらいになでつけたオールバックと、「ヅカガール!」と叫びたくなるような目張り系メイクにルージュ、黒いスーツ。

 


The Human League - Don't You Want Me


いくらクラブ全盛のロンドンとはいえ、まるで、場末のニューハーフであった。
しかもその曲の歌詞たるや、ロンドン版ヒロシ&キーボーと評するしかないメロドラマ。

 


3年目の浮気 ヒロシ&キーボー


当時は洗練されたテクノだと思っていたアレンジに、こんな歌詞を乗せたこの男は、果てしなく女々しいはずだった。

 

しかし、何をどこでどう間違えたのか、二人目のフィリップが帰ってきた。

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続くアルバム「ヒステリア」からファーストカットされた、「レバノン」のクリップの彼は、ひげ面の長髪に、Tシャツとジーンズ。
そして歌うのは中東情勢だ。

 


The Human League - The Lebanon, By EMI


続く「ライフ・オン・ユア・オウン」のクリップでは、核戦争だ。

 


The Human League - Life On Your Own (Official Video Release HD)


一体、フィリップに何が起こったのか。


もしかして、フィリップとヒューマン・リーグはこのまま、トークトークやアイシクル・ワークスのような道を進む事になるのか……。


そうなったらフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのポール・ラザフォードと同じくらい、存在価値がビジュアルにしかない(注)お姉ちゃん二人はどうなる! 
我々は静観するしかなかった。

 

だが、フイリップはやっぱりフィリップだった。

 

彼はポップスターの名誉と誘惑、そして陶酔する自分を捨てる事は出来なかったのだ。


考えてみれば、元祖ヒューマン・リーグからポップ志向のないメンバーが独立(ヘヴン17と分裂)、残ったメジャー&ポップ志向メンバーの中心人物が彼である。


お姉ちゃんたちだって、彼がビジュアルに花を添えるために連れてきたんだもの。
あの日フィリップはポップスターへの道を選択したのだ。

 

こうして、反戦家フイリップ・オーキーは姿を消した。

 

その選択は正しく、ヒューマン・リーグはお化粧直しのすんだ彼とともに商業ロックの王道で、成功へのステップを上り詰めていくのである。

 


The Human League - Human


今になって思えば、反戦家フイリップが純粋に世界平和を考えたのは「レバノン」だけだったかもしれない。

なぜなら、「ライフ・オン・ユア・オウン」はクリップこそ核戦争後の地球を見せてくれたが、「愛のわかれ道」なんて邦題が付くような歌詞だったから。


フィリップの爆笑すべき混乱は、ほんの数ヶ月で決着していたのだ。
レバノン」がチャート上でコケた時、「僕は売れたかったんだ!」ということに気付いたのだろう。

 

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(注)ここで言うポール・ラザフォードの価値とは、美形という意味ではない。
ゲイであることを、ファッションとして売りにしたフランキーにとって、誰が見てもひと目でゲイとわかる彼のビジュアルが必要だったのだ。