DAVID AUSTIN デヴィッド・オースティン
「Love While You Can」には、恋してステップ! とかホントもうどうしていいかかわからなくなるような邦題がついてるけど、いい曲だ。
David Austin - Love While You Can
短い演奏時間の中でぎゅっと凝縮したキレイなメロディとここ一番のファルセット。
モータウンのコピーのような曲だけど、これをロンドンで白人のアーティストがやったことにすごく意味があるのではないだろうか。
ちなみにアルバム収録の際の邦題は「恋してステップ!」ではなくて、「胸いっぱいの恋」。
それはそれはどっちでもいいくらい、音の質とは関係ない邦題が二度もつけられていることからも、彼の日本での売り出され方が伝わってくる。
そもそもワム!の幼馴染という依存しまくった切り口からの売り出しでズッコけて収拾がつかなくなり、「エッジ・オブ・ヘヴン」のころにはワムのバックバンドのひとりというポジションになってしまったデヴィッド・オースティン。
もともとジョージのワム以前の恋人……いやいや。
バンド仲間だったらしい。
日本ではミニアルバムが一枚でたけだが、本国ではアルバムすら出ていないだろう。
しかしあらためてそのミニアルバムを聴くと、曲は悪くない。
が、なんというかルックスが王子様すぎた。
案の定、日本でも売り出し方が「男前だからポスターつけとけ」みたいな方向に行ったのが惜しまれてならない。
David Austin - Turn to Gold (presented by George Michael)
そもそも「TURN TO GOLD」の邦題が「君にフラッシュハート」という時点で、
『こっちの頭がフラッシュハート』
です。
粗削りながらも確実に持っていたはずの才能と、ルックス重視で売り出そうとした日本のマーケットの大人の事情の差が大きすぎた気がする。
だが、本国ではWHAM!の存在がなければ色めがねをかけずに聴いてもらえたのではないかと思う反面、WHAM!がいなければデビューすらできたのかどうかすら怪しいし、ソロとしてコケたあとは、確実にもっと収拾つかなくなってただろうし、難しいところ。
結局それは本人の運と実力、このふたつの大切なパワーが、タイミングだのベクトルだの、何か大切な歯車が噛みあわなかったんだろう。
タイミングと運、このふたつは個々ではそれほどの力を持っておらず、何億分の一しかいないポップスターになるには、このふたつを中心に自分の人生の中で持っているあらゆる前進するためのファクターを、今こそそのときというばかりに一気に集中できることで生み出される、掛け算の効果が必要だ。
そしてそのために、何よりも必要なのは本人の強い意志なのだ。
それなくしては、長い人生のうちに、自分の才能を小出しにして終わってしまう。
主導権を握り、みずからの才能をくり出す時期を、まさに今がそのときと見極められるかどうかは成功のための大切な要素で、そしてそれこそ成功した人が結果的に持っていた才能なのではなかろうか。
「TURN TO GOLD」の次のシングルがまったく方向性の違う「Love While You Can」というのも彼自身の戦略でもなんでもなく、本人に強い意志がなく、彼で一儲けをたくらんだ大人たちが主導権を握ってキュートな曲をプッシュしたことで起きた方向転換だとしか思えない。
この二曲ともどちらもすごくいい曲なのに傾向がバラバラで、こんなに方向性が違うと、一曲目を聴いていいなと思ったファンがついていけないのもやむをえまい。
いい曲を演っているのに。
自身がポップスターの入口に立って動き出した時にはすでに時遅く、彼を金脈と見た大人たちの世界にあらがえないまま振り回された。
そんな気がする。
だがそれも仕方ない。
学生時代の友人がポップスターになったおかげで、本人はそのついでに心の準備もないままに、突如舞台に上げられた、そこいらの青年でしかなかったのだから。
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