Talk To Me/FIONA~ミニマムな分母に輝く記憶の中のシャウト系歌姫
Fiona (Flanagan) - Talk to me (HQ)
アンニュイな雰囲気のイントロから入るこの曲をふと思い出した。
PVの記憶は、白いバックのいかにもお金のかかってなさそうな場所で、キュートな女の子がシャウトしているというものだったが、大すじは間違ってなかった。
ただあらためて見てみると、バンドメンバーもしっかり映っているし、ヴォーカル以外のシーンも撮られている。
そういえば仰向けに寝た FIONA が少し色っぽい動きをするシーンは思い出した。
当時国内のМTVでは何度も見たPVで、曲もけだるい雰囲気ながら日本人好みの哀愁が漂い、そして何より次のスターを探していた洋楽市場ではプッシュされていたのだろう。
だが調べてみると、チャートリアクションは全米60位台のスマッシュヒットにすぎなかった。
つまりこの一曲で独自のアイドルシンガーを探していた日本の市場からは使い捨てられたようなものだと推測する。
たしかに彼女は美しいし、こんなにシンプルなPVでも立派に生えるだけのルックスとアクションを提供してくれた。
しかしいかんせん、曲のジャンルがハードロックというべき位置づけで、そのシャウト系のヴォーカルスタイルも相まって、これではちょっと MADONNA や CYNDI LAUPER のファンには重すぎる。
そんなこんなで世界の歌姫になることはなく終わってしまったのだと思うけれど、この一曲しかないからこそ、鮮烈な記憶となっていて、そして突然ふと思い出すことが出来たのだろう。
こういういいかたをすると、彼女のファンだったボーイズからは、いやその後もアルバムを出しているし ALICE COOPER のバンドメンバー KIP WINGER とのデュエット曲もあった
Fiona Everything You Do You're Sexing Me) [Duet with Kip Winger]
といわれそうだが、結局のところそこまで彼女を追いかけたファンは日本の洋楽市場からすると、メインカスタマーではなかったと思う。
これは誰しもが体験することで、あれほど人気を誇ったグループであっても、たとえば THOMPSON TWINS の Nothing in Common
Thompson Twins - Nothing In Common
とか、
VISAGE の Beat Boy
なんてファンを公言する人であっても、その曲が世間に知られていないことは承知の上で、聴いているのだ。
しかし他のアーティストの記事の中で書くのもなんだけど、BEAT BOY はヒドイね。
すでに翳りが見えていた人気を奪回すべく、ナイトクラブという廃れ始めた場所を出てみたのだろうけど、こんなスタイルを STEVE STRANGE に求めたファンなんていただろうか。
PVにいたってはまるで無駄金をかけた It´s My Life のようだ。
さておき FIONA はたった一曲でも記憶に刺さる矢を放ったということが、彼女を今もこうしてふと思い出す、あの頃の洋楽ファンの存在に繋がっている。
そしてその記憶に刺さった理由は、彼女がメインストリームに出られなかった理由とは表裏一体で、当時の雨後の筍の中に、ソロの女性ハードロックシンガーというスタイルは珍しかったことにある。
実際2012年にもアルバムが出ているようだし、当時ライバルが少なかったということは、年月を経てもともとけっして大きくない分母はよりミニマム化していくのだろう。
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