THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。新作も加えていきます。

Talk To Me/FIONA~ミニマムな分母に輝く記憶の中のシャウト系歌姫


Fiona (Flanagan) - Talk to me (HQ)

アンニュイな雰囲気のイントロから入るこの曲をふと思い出した。

 

PVの記憶は、白いバックのいかにもお金のかかってなさそうな場所で、キュートな女の子がシャウトしているというものだったが、大すじは間違ってなかった。

ただあらためて見てみると、バンドメンバーもしっかり映っているし、ヴォーカル以外のシーンも撮られている。

 

そういえば仰向けに寝た FIONA が少し色っぽい動きをするシーンは思い出した。

当時国内のМTVでは何度も見たPVで、曲もけだるい雰囲気ながら日本人好みの哀愁が漂い、そして何より次のスターを探していた洋楽市場ではプッシュされていたのだろう。

 

だが調べてみると、チャートリアクションは全米60位台のスマッシュヒットにすぎなかった。
つまりこの一曲で独自のアイドルシンガーを探していた日本の市場からは使い捨てられたようなものだと推測する。

 

たしかに彼女は美しいし、こんなにシンプルなPVでも立派に生えるだけのルックスとアクションを提供してくれた。

しかしいかんせん、曲のジャンルがハードロックというべき位置づけで、そのシャウト系のヴォーカルスタイルも相まって、これではちょっと MADONNA や CYNDI LAUPER のファンには重すぎる。

 

そんなこんなで世界の歌姫になることはなく終わってしまったのだと思うけれど、この一曲しかないからこそ、鮮烈な記憶となっていて、そして突然ふと思い出すことが出来たのだろう。

 

こういういいかたをすると、彼女のファンだったボーイズからは、いやその後もアルバムを出しているし ALICE COOPER のバンドメンバー KIP WINGER とのデュエット曲もあった

 


Fiona Everything You Do You're Sexing Me) [Duet with Kip Winger]

 

といわれそうだが、結局のところそこまで彼女を追いかけたファンは日本の洋楽市場からすると、メインカスタマーではなかったと思う。

 

これは誰しもが体験することで、あれほど人気を誇ったグループであっても、たとえば THOMPSON TWINS の Nothing in Common


Thompson Twins - Nothing In Common

とか、

 

VISAGE の Beat Boy


Visage - Beat Boy

なんてファンを公言する人であっても、その曲が世間に知られていないことは承知の上で、聴いているのだ。

 

しかし他のアーティストの記事の中で書くのもなんだけど、BEAT BOY はヒドイね。

すでに翳りが見えていた人気を奪回すべく、ナイトクラブという廃れ始めた場所を出てみたのだろうけど、こんなスタイルを STEVE STRANGE に求めたファンなんていただろうか。

PVにいたってはまるで無駄金をかけた It´s My Life のようだ。

 


Talk Talk - It´s My Life

 

さておき FIONA はたった一曲でも記憶に刺さる矢を放ったということが、彼女を今もこうしてふと思い出す、あの頃の洋楽ファンの存在に繋がっている。


そしてその記憶に刺さった理由は、彼女がメインストリームに出られなかった理由とは表裏一体で、当時の雨後の筍の中に、ソロの女性ハードロックシンガーというスタイルは珍しかったことにある。

 

実際2012年にもアルバムが出ているようだし、当時ライバルが少なかったということは、年月を経てもともとけっして大きくない分母はよりミニマム化していくのだろう。

 

 

FIONA(フィオナ)

 

 

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Run To You/Bryan Adams~僕の苦手だった汗のにおいは影を潜めて、でも走ってきたのは彼女だった


Bryan Adams - Run To You

 

Bryan Adams なんていうのは、鬱屈した思いを抱えて、好きなあの娘に素直に好きだと伝えることもできなかった青春時代には、目障りな存在でもあった。


いや、彼だけではない。

BRUCE SPRINGSTEEN なんかもそうだし、とにかくいわゆるアメリカ大陸の汗臭さを感じるロックは苦手だった。

 

Bryan の場合 Cuts Like A Knife なんて、いかにも当時の青春ちゃんに響きまくるタイトルがついてるのに曲がこっち方面で、しかもTシャツにジーンズだ。
一番苦手な方向じゃないか。

 


Bryan Adams - Cuts Like A Knife

とにかくジーンズという時点で、Tシャツが白いという時点で、 VISAGE を中心にしたニューロマンティックに酔い、ナイトクラビングにあこがれた多感で内気な少年には、野球部と同じ青春の押しつけのような感触にあふれていたのだ。

 

しかし Run To You は、そんな忌避すべき存在だった彼の印象を変えてくれた。

 

曲調もいつもと違うし、そしてPVは雪、大雨、落ち葉。
明るい夏や、汗のほとばしる男の体臭は影を潜めていたからだ。

落ち葉の中から掘り出されたギターをかきならすシーンには、自分が失った、もしくはまだ手に入れることすらできていなかった宝物を手に入れたような気持になったものだった。

 

今見てもかっこいい。


ただちょっと気になるのは、仕方ないけれどおネエちゃんが昔風ってところと、そしてよく見れば主役はやっぱり変わらず白いTシャツにジーンズだったということか。

暗い画面に騙されて、そんなファッションだったという印象は薄れてしまっていた。

 

あ、あとこれも今さら気づいたんたけど、走ってくるのが女の子のほうで全然 Run To You じゃないっていう、ね。

ま、いっか。

 

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Sunglasses At Night/COREY HART~まぶしい夜に僕を隠すウェイファーラー


Corey Hart - Sunglasses At Night

 

サングラスというアイテムは実用性以外の部分で、僕たちの幼い目に魅力的に映った。
黒いウェイファーラーは中でも飛び切りのアイテムだった。

 

MADONNA, BILLY JOEL, IAN MCCULLOCH ...憧れのアイコンは黒いレンズの向こうからこちらを見ていた。


僕たちはそれを真似て、幼い表情をレンズの下に隠し、あの子の前で気取って見せた。

それはさぞかし滑稽な、背伸びだったことだろう。
しかしそのレンズを通すことで、僕はあの子の涙を見て胸に突き刺された剣の傷跡を隠していた。

 

サングラスを夜にかけるというのは、まったく実用性とは別の話だったが、僕たちにとってファッションアイテムだったそいつを夜でも手放すことはできなかった。
もうちょっと色が薄ければいいのに、だけどそれじゃ昼間には目が見えてしまう。
黒ければ黒いほどあの頃のサングラスには存在価値があった。

 

COREY の歌う夜にかけるサングラスは僕たちにとっては、あの日々の真実だった。
闇の中にサングラスをかけた彼が、まるで STING のようなくちばしを思わせる姿で歌う。

 

そして赤い靴。
暗闇にこれほど映える色はなかった。
どこか淫靡でどこかセクシーなその配色に僕はあの子への行き場のない憧れをぶつけたものだ。

 

そして僕がサングラスを必要としなくても、あの子の顔を見られるようになったとき。
彼女はやっぱりなんにも変わらない様子で僕の隣にいた。
最初から僕がその表情を隠そうとしていた日々に何の意味もなかったのだと思う。
それでも僕には、サングラスなしで彼女を見つめられるようになるまで、時間が必要だったのだ。

 

あの子は今もあの日と変わらない笑顔で笑ってくれている。
だけど僕はまたサングラスを手に入れて、彼女に会おうとしている。

 

齢相応に似合うようになっているといいのだけれど。

 

あの子はきっと「どうしたの?」とまた笑って、やっぱりあの日のように僕にはまぶしい存在なんだろう。

 

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Crazy For You/MADONNA~「あなたに夢中よ」とうたってくれた日々


Madonna - Crazy For You

 

夢中。
熱中。
溺愛。

 

実際に夢の中にいては日々を暮らしてはいけないし、熱の中にいては燃えてしまう。
そして溺れてしまっても生きていけない。
それでも僕たちはあの日、あの頃、君の姿を夢を見て、君のために燃え、そして君に溺れていた。

 

そんな表現が日本語の世界だけでないことを知ったのは、いつだっただろう。

 

クレイジー、バーニング、そんな言葉を恋という感情につなげて教えてくれたのは MADONNA だったかもしれない。

 

彼女がまだサイボーグのように完璧な、スターという生物になる前、僕たちは彼女の姿にドキドキし、女の子たちは彼女になれるかもしれないという青春時代ならではの淡い夢を抱いていた。

 

ビルボードのトップに輝きながらもこの曲が、彼女のメインストリームからは外れた印象を受けるのは、当時幅を利かせていた映画用のサントラ曲だったこと、そしてそのために映画のシーンを盛り込んだPVのせいもあるかもしれない。

 

だけど僕たちの一番近くで彼女が最高に輝いたのは、黒い衣装にを包み、ライオンのようなブロンドを散らかし、首から下げたクロスを振り乱して「あなたに夢中よ」とうたってくれていたこの日々だった。

 

 


 

 

The Boys Of Summer/DON HENLEY~過ぎ去った夏を思うモノクロの世界


Don Henley-Boys of Summer HD/HQ 1984+Info✔

 

モノクロを効果的に使ったPVも美しく、大ヒットした夏の名曲。
歌詞にあるように夏真っ盛りの曲ではなく、過ぎ去った夏を思う表現が、この切ないメロディにこめられている。
イントロから入る泣きのギターは絶妙。

 

PVに登場する少年はもくもくとドラムを叩く。
DON 自身の影を投影したような少年はタイトルにもかけられていて、そしてそのバックに成長していくその姿が映されるのだが、モノクロであること、ファッションなど、はたして少年とフィルムのどちらが過去なのかがわからない演出が幻想的な雰囲気を出している。

 

DON のハスキーな高音が紡ぎ出すメロディがはてしなく切ない、戻らない夏を想起させる。

 

それにしても同じ時期にソロでヒットした GLENN FREY とは対照的な世界観だ。

 


Glenn Frey - The Heat Is On (From "Beverly Hills Cop" Soundtrack)

 

今回PVを見直して気付いたのだが、エンディングは少年の姿ではなかったようだ。
記憶では最後も少年がドラムを叩いていたような気がしたが、意外に早く彼の出番は終わっている。
そんな混濁した記憶も、過ぎ去った夏の日の残り香を感じさせるではないか。

 

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Making Love Out Of Nothing At All/AIR SUPPLY~軍隊のない国に生まれた僕たちが妄想する夏


Air Supply - Making Love Out Of Nothing At All

 

毎年ある季節になると思い出すPVというのがある。
夏になると思い出すこの曲は、別にフィルムが夏なわけではないのだが、このグループが夏・渚といったイメージと切り離せなかったことがあるだろう。

 

透き通るようなハイトーンヴォイスは、夏に涼やかな風を運んでくる。
曲調も激しいものではなく、ウエストコーストに吹く一陣の風を思わせる爽快さ。

 

PVの中で紡がれる若い二人のストーリーも青春の輝きとうまくいかないもどかしさがみごとに演じられていて、どこまでも爽やかだ。


軍隊のない国に生まれた若者にとって、彼が徴兵なのか志願なのかはともかく、戦場に旅立ち離れ離れになり、そして除隊したのか再会するというシチュエーションは自分の身には起こりえないドラマティックな物語でもある。

 

そして煙草にリーゼント、80年代初期のカッコイイが小道具として効果的。

 

この涼やかな名曲を歌ってるのが、肉まんみたいなおっさんだという点はともかく、夏になると見たくなるPVです。

 


 

 


 

 


 

Don't You Forget About Me/SIMPLE MINDS~僕のこと忘れられないんじゃないのかい?


Simple Minds - Don't You (Forget About Me)

 

映画のために書き下ろされたこの曲、当初は BRYAN FERRY にオファーされたらしい。
それが実現せず、巡り巡って白羽の矢の刺さった JIM KERR はこの話を受けた。
これが運命の分岐点だった。

 


Simple Minds: Dont You Forget About Me

 

あと一歩メジャーになりきれなかった彼らの最大のヒット曲になるだろう。
誰もがそう思ったこの曲は、最大どころか、次のアルバムで世界的スターになる第一歩だった。

 


Simple Minds - Alive And Kicking

 

そんな一曲が自分たちの書いたものでないところに、人生の明暗を感じさせる。
もちろん明るく照らされたのは彼らで、苦しみ続けたのは BIG COUNTRY だ。

 

モニターに囲まれ、おもちゃ箱をひっくり返したようなスペースでの疑似ライヴ的なPVはよくあるシチュエーションだが、このフィルムの動きは美しい。
なめらかで気負いなく、そして曲の盛り上がる部分を確実に魅力的に見せてくれている。
素朴なPVだが、彼らの魅力を伝えるのには十分すぎるかっこよさだった。

 

どうでもいいけど JIM KERR ってなんでこんなにモテるんだろう。

 

最初の嫁さんは PRETENDERS の CHRISSIE で、

 


The Pretenders - Middle of the road (HD 16:9)


次の嫁さんは PATSSY KENSIT だぞ。

 


Eighth Wonder - Stay With Me (1986 Japan)

 

まあどっちも「元妻」ってことなんで、結局破綻してるわけだけど。

僕のこと忘れられないんじゃないのかい?

それにしても JIM のぱっと見なんて、垢ぬけなくてハナタレ小僧みたいな童顔だし、ライヴエイドのときなんて当時はやってたとはいえ裾のしまったダブダブズボンで、ほとんど普段着ですよ。

 


SIMPLE MINDS - "Don't You" - Live Aid 1985

 

げに難しきは女心よ。 

 

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