THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。新作も加えていきます。

ストロベリー・スイッチブレイド STRAWBERRY SWITCHBLADE


Strawberry Switchblade - Since Yesterday (High Quality With No Logos)


謎の二人組の少女は AZTEC CAMERA の RODDY が絶賛したとか、ある大物ミュージシャンが惚れ込んだとか、いきなりものすごい前評判で現れた。

 

なんとなく彼女たちを押した顔ぶれが、ネオアコよりだったせいで、最初のうちはアコースティック一派のような印象を持っていたが、まあよく聴けばシンプルな曲調ながら音はいわゆる基本のエレポだ。

 

それよりも今になって振り返れば、モノクロとカラーを視覚的に組み合わせたPVの中で目を引くのは、二人のそのファッション。
彼女たちこそ、ゴスロリの元祖なのではないだろうか。

 


Strawberry Switchblade - Let Her Go (High Quality With No Logos)

当時は奇天烈な印象の強かった二人だけど、2nd.シングル Let Her Go の PVはあっさりしたもの。
大仰なドラマ仕立てになどしておらず、それがまた一段とネオアコ一味のような印象に繋がったのかも。

 

ただAメロに入った途端 ROSE にフォーカスして、Bメロで JILL がフレームイン、そしてサビの JILL のコーラスシーンでは ROSE の動きを止め、二番のAメロで ROSE が歌い始めると同時に JILL がフリーズするという趣向はおもしろい。
特撮やCGを使ったものではないので、サビで静止している ROSE がまばたきしたりするのはご愛敬。

 

1st.シングルの Since Yesterday とおなじような世界観だが、モノクロ基調だったトーンがカラーになり、なんだか彼女たちの成長を見せられた気がしたものだ。

 

ドギツいメークの下には、意外に幼い彼女たちがいる。

同級生のパンク少女の素顔を見たような、意外に身近な少女が背伸びしているような、そんな親近感が、大物ミュージシャンたちを虜にしたのかもしれない。

 

ただ彼女たちの成長は、このあといきなりアクセルを踏みすぎる。


Strawberry Switchblade - Jolene

ネオアコに続く爽やかさはなく、しかも万人が大人の女の色気を感じられるのでもない、奇妙にねじれたアングラクイーンのような道に入り込んでしまうのだ。

 

彼女たちのまとった黒いドレスとボンデージは、まるで甘酸っぱい青春のメタファーである苺を切り裂いたナイフを拭う、血まみれの喪服のようだった。


その黒は、たしかに流れ出たはずの血の色をカモフラージュし、そして彼女たちはその闇に飲まれるように姿を消してしまった。

 

飛び出しナイフが切り裂いたのは、実りかけた苺の実だったのか。

それとも何も知らないままポップスターの階段に足をかけてしまった、二人の少女の夢だったのか。

二つ割にされた苺の実から滲んだ果汁は、甘かったのだろうか。

血まみれの苺たちに乾杯を。