リ・フレックス RE-FLEX
地を這うような低音から入り、高音まで一気に突き抜けていくボーカル。
バクスターのその声にからむ、無機質に刻まれるビート。
テクニックの高さを感じさせる人の手による各パートの音と、そこにやっぱり無機質にからみつく不思議なビート。
リ・フレックスは、あの頃、近未来を感じさせる音を持ったグループだった。
たった一枚のアルバムを残しただけのグループが、こんなにも印象に残っているのは、そのアルバムのクオリティの高さによるところが大きい。
収録された曲のすべてがクオリティ高く、しかもその曲の並びが実にうまい。
シングルヒットした曲が収録されているにも関わらず、トータルで一枚の作品に仕上がっているのだ。
オープニングの「プレイング・トゥ・ザ・ビート」に始まり、本国ではシングルカットされていたという「ヒットライン」、当時日本でもクリップを確認できた「ハート」と、たたみかけるようなラインナップは、シングルヒットの「ザ・ポリティクス・オブ・ダンシング(邦題:危ないダンシング)」が始まるまでに、すでに聴く者をリ・フレックスの世界に引き込んでしまうだけの力と完成度を持っている。
Re-Flex - Praying To The Beat ( Promo Video) [HD]
Re-Flex - Hitline - 1983 - promo clip
時はダンスミュージック全盛時。昨今のヒップホップ系とは一味違う、「ミュージック」がダンスフロアを席巻していた。
あの頃のダンスミュージックにはメロディがあった。
その時代に、リ・フレックスの音楽と近未来感は鮮やかに乗っかった。
事実、「ザ・ポリティクス・オブ・ダンシング」は、本国だけでなくアメリカでも受け入れられた。
そして、当時の多くのヒット曲のご多分に漏れず、アメリカ経由で彼らは日本にもデビューを果たすのである。
Re Flex - The Politics Of Dancing (1982) Remix
だがリ・フレックスは、日本ではコアなファンこそ生まれたが、大衆に支持される事はなかった。
どうしてだろう。
ひとつは、ヒット曲「ザ・ポリティクス・オブ・ダンシング」という曲自体が、当時日本のチャートをにぎわしていたデュラン・デュランやカルチャー・クラブとは、毛色の違うものだったことがあげられる。
サビこそ覚えやすいキャッチーさを持っているが、全体を通すと日本人の好む「哀愁」というエッセンスは皆無に近い。もっと、無感情で無機質なメロディだ。
それこそが、リ・フレックスの魅力だったのであるが。
ふたつめに、その曲のクリップは日本の洋楽ブームを支えた大多数層に訴えなかった。
ニック・ローズだ、ボーイ・ジョージだ、リマールだと、アイドルくんに視線を釘付けにされていた、日本の「大衆洋楽ファン」を魅せるためには、バクスターがいつまでもツケヒゲして、素顔を隠していては無理だろう。
まあ、素顔を見せたところで、ギャルたちが騒いだかどうかは微妙なルックスだが、それでものちのハワード・ジョーンズの例もある。
あれでいいなら、こっちの方がイケてるはずだ。
だが、彼らのハイクオリティな音とたしかな演奏は、大物ミュージシャンも魅了していた。
セカンドアルバムに先行してリリースされたシングル「ハウ・マッチ・ロンガー」には、スティングが参加したのである。
Re-Flex - How much longer 1986
「さあ、ここからリ・フレックスのさらなるインベイジョンが始まるのだ」とフアンは思ったことだろう。
しかし、リ・フレックスの第二章はここで閉ざされてしまう。
彼らの音は、魅了してはいけない大物まで魅了してしまった。トンプソン・ツインズである。
ソングライターであったポール・フィッシュマンが、トンプソン・ツインズの全米ツアーのメンバーとして、グループを脱退してしまったのだ。
バンドはもめ、一説にポール・フィッシュマンは、脱退金を払ってツアーに出て行ったとも聞く。
こうして、リ・フレックスの未来は閉ざされた。
彼らが作り出した近未来的な音は、永遠に近未来の世界に置き去りになってしまった。
The Politics of Dancing (Extended Version)
- アーティスト: RE-FLEX
- 出版社/メーカー: Parlophone UK
- 発売日: 2009/09/14
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