ベルリン BERLIN
私は女神、私は芸者、私はブルームービー……。
テリー・ナンの小さな体と吐息は、「セックス・アイム・ア…(邦題:その時、私は ← 「その時」というボカし方がかえって淫猥)」という一曲とともに現れた。
Berlin - Sex (I'm A) (Official Music Video Promo)
テリー・ナンの小さな体躯は激しく動き、その幼いルックスと小さく開いた口から漏れる吐息のような歌声に、目も耳も奪われた。
こんなにヨーロッパ的なグループが、アメリカから登場したことは衝撃だった。
ブルース・スプリングスティーン、ナック、ロマンティックス、ヒューイ・ルイス……
そういうアメリカの音楽を聞くたびに、「アメリカの音楽はボディ・ミュージック」「ヨーロッパの音楽はブレイン・ミュージック」と、決め手かかっていた頃だったからだ。
ベルリンの音は頭脳の奥に直接響き、そこから体の何かを痺れさせるという、「フロム・ブレイン・トゥ・ボディ」とでも表現したくなる、不思議な力を持っていた。
Berlin - Now It's My Turn (1984)
ベルリンの曲が最も洗練され、テリー・ナンのコケティッシュな魅力が最も輝いていたのは、当初三人だったメンバーが七人に増えた、二枚目のアルバム「ラヴ・ライフ」の頃だろう。
中でも、「ダンシング・イン・ベルリン」のクリップは、単なるスタジオライヴなのに、体が震えるほどカッコいい。このバンドのヴィジュアル的な最高傑作だといえる。
しかし、ベルリンがトップに輝くのはそれよりも後のことになる。
三枚目のアルバムの曲、「テイク・マイ・ブレス・アウェイ(愛は吐息のように)」が映画「トップガン」の主題歌として大ヒットを記録するのだ。
だが、その時メンバーは三人に戻っており、あのクリップのライヴアクションはもう見られなくなっていた。
「テイク・マイ・ブレス・アウェイ(愛は吐息のように)」で、世界はベルリンという一都市(グループ)に占領された。
しかしそれと同時に、テリー・ナンの吐息が世界の共有物になることによって、ベルリンという一都市(アート)は陥落したのだ。
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