Back Where You Belong/38SPECIAL~誰にも秘密にしたかった青春の踏絵
青春時代には青く屈折した時期ならではの美学がある。
38 Special - Back Where You Belong
VISAGE の造られたステージに酔い、ULTRAVOX の哀愁漂う切ないメロディに酔い、SPANDAU BALLETの大掛かりな貴族コスプレに酔い、 DURAN DURANのおしゃれな空気に酔った僕たちにとって、ひげ面のむさくるしい男どもが奏でるストレートでなんの奇もてらわないストレートなアメリカンロックは、ある意味で音楽の中の恥ずかしい部分だった。
この曲を好きだということは、見せてはいけない自分の秘密。
心の中でふといい曲だなと思っても、このPVを見ながら口ずさむ姿も、レコードラックに並んだ彼らのアルバムも音楽仲間には見られてはならなかった。
だけどドジな刑事集団に扮したメンバーと、目を見張るような美人の犯人の追いかけっこは見ていてほほえましい。
いかにもな感じののほほんとした曲調に、過激なシーンのない刑事ドラマ仕立てのPVがよく合っているのだ。
二番の肉の貯蔵庫のシーンでのシャドウボクシングに、エンディングの地下鉄のシーン。
ちょっとした小ネタまでいとおしく感じる。
今聴くとどこかノスタルジックに感じるメロディも魅力的だ。
38SPECIALの当時の曲はどれもあか抜けない邦題がついていて、これも「想いは果てしなく」という名でリリースされている。
今になって曲を探そうとすると、邦盤アルバムはどれも似たような雰囲気のタイトルが並んでいて判別しにくいことこのうえない。
なんというか、「想いは果てしなく」とか、「愛は消えても」とか、今になるとなんだか優しい気持ちになるタイトルなのだけど、こういうセンスもとがっていた青春時代には避けて通りたいある種の踏絵だった。
ツアー・デ・フォース [SHM-CD] [生産限定盤][CD] / 38スペシャル
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ストレングス・イン・ナンバーズ [ 38スペシャル ]
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