Can't Let You Go/RAINBOW~メロディアスなサイレントフィルム
幽玄な印象のパイプオルガンから始まるイントロの間に、PV上の舞台設定が紹介され、そして曲の始まりとともに目覚める眠り男チェザーレを演ずるジョー・リン・ターナー。
モチーフはいわずと知れた1920年に制作されたサイレントフィルムの名作「カリガリ博士」だ。
El Gabinete del Dr. Caligari 1920 (Subtitulada al Castellano)
あの夢幻の世界観にはたして重厚なハードロックが合うのかという気もするが、この曲の持つメロディアスさは実にうまくはまっている。
ドラマ部分は実際どうかというとやや滑稽な側面も持つが、間違いなくカッコいい演奏シーンとのつなぎがうまいため、吹き出すようなこともなく見せられてしまう。
その要因として挙げられるのは、演奏シーンのバックをおなじ舞台に据えたことだろう。
そしてメンバーが黒一色の衣装をまとうことで、カリガリ博士のシーンと彼らの演奏に違和感ない一体感が生まれている。
特にそれを物語るのが、実は忙しいくらいの場面転換をしていることに気付かないことだ。
あらためてじっくり見直すと、ドラマと演奏のシーンは常に行ったり来たりしていて、実にせわしない。
しかしそれでもこのPVと曲にのめりこんでしまうのは、その自然なつなぎがもたらしているといえるだろう。
そしてヒロインのキャスティングも素晴らしい。
黒と白の中に映える彼女の髪の色。
無声映画がモチーフなのだからひとことも話さないのは当たり前といえば当たり前だが、それが一人歌い続ける謎のオペラのようなジョーを引き立てている。
1:58あたりで彼女がなまめかしく体をくねらせたあとに、丸いフレームのズームアップでジョーが出てくるところは、この舞台設定でなくては生まれない美しい一場面だ。
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