リック・スプリングフィールド RICK SPRINGFIELD
RICK SPRINGFIELD といえばその楽曲には究極の安定感があった。
新曲が出たぞとわくわくしてレコード盤に針を落とせば、いつもの RICK が現れる。
Rick Springfield - Human Touch
Rick Springfield - I Get Excited
Rick Springfield - Love Somebody
すなわち…ひとことでいえば全部同じ曲に聴こえるという。
しかしそれは、いつも安心を与えてくれるという意味でもある。
そもそも楽曲のクオリティは水準以上で Human Touch のイントロなんかを聴けば、ひねりを利かせていて、工夫を重ねた軌跡は明らかだ。
だが…曲がサビまで来ると、顔をのぞかせるのは、いつもの RICK のリック節だった。
そんな彼も少しずついろんなテクニックを身に着けたのか、当時のテクノからニューロマという時間の流れを肌身に感じていくうちにその音に影響されたのか、ついに新境地を開いた。
そしてこんなかっこいい曲を生んでしまったというのが Bop 'Til You Drop だった。
Rick Springfield - Bop 'Til You Drop
曲調、アレンジともにブリティッシュ。インベイジョンの顔ぶれのような仕上がりで、おまけにPVはかつての近所のカッコイイおにいちゃんみたいな彼ではなくスター・ウォーズのような世界観。
これはいいなと思ったのだけれど。
だけども♪ だっけど♪
世間の求めた RICK SPRINGFIELD はこうじゃなかった。
汗臭くて、だけどちょっとかっこいい隣のお兄ちゃん。
そんなお兄ちゃんが都会を知ってあこがれて、その方向性に走り…。
ファンは戸惑いはじめる。
次作で明らかになるが、ヒットチャートをにぎわし、いろんな音楽と対峙して彼がようやく見つけた道-TAO-は、彼をそこまで持ち上げてくれた彼のオーディエンスとの間に大きな壁を作ることになってしまうのであった。
Rick Springfield - Celebrate Youth
一言いわせてもらえるなら、辿り着いた場所の時代がアップデートがされてない感じがする。
この曲を初めて聞いた感想は、いいメロディだけどなんだか音の作りが古くさいなというものだった。
憧れを最新の時間にリメイクしてリバイバルさせるのではなく、まるで数年前のロンドンに彼自身がタイムスリップしてしまったような一曲だった。
そして戸惑っていたファンはその時間旅行の同行者ではなく、見送りのプラットホームに立ち尽くす人並みであった。