Wonderland/XTC~深窓の令息、不思議の国に姿をあらわす
アンディ・パートリッジは自分のむさくるしい姿をどう思っていただろう。
適度にひねくれていながら、小難しくならないポップさを併せ持った、実に都会的なセンスの持ち主でありながら、そのルックスはあまりにむさくるしい。
センスとルックスのギャップで言えば、クリストファー・クロス級だ。しかし、クリストファー・クロスが堂々とその姿を衆目にさらしたのと違い、アンディは異様な形でしかその姿を見せてくれなかった。
Christopher Cross - Arthur's Theme (Best that you can do)
この曲のクリップは舞台設定からして、奇怪。
庭園に造られた生垣の迷路の中を、バレリーナの少女がひたすら何かから逃げ惑うように、しかし優雅に動きつづける。それはまさに不思議の国の出来事のようだ。
いかにも、アリスがモチーフになっているのだろうが、そこに、トム・ペティが「ドント・カム・アラウンド・ヒア・ノー・モア」で表現したような、ブラックユーモアはまったく存在しない。
Tom Petty And The Heartbreakers - Don't Come Around Here No More
ここにあるのは、毒のないアリス・イン・ワンダーランドとでも言うべき、夢幻の世界である。
そして、白い生花に色をつける一人の庭師。
そう、あまりにもナーバスでセンシティヴな深窓の令息、アンディ・パートリッジが姿をあらわすためには、その舞台には毒を仕掛けてはならなかったのに違いない。
もし、そこに毒があったとしたら、純粋な令息はその場で息を引き取っていたのかもしれない。
そして、彼が姿をあらわすのにもっとも適した舞台は、現実の街の中ではなく、夢幻に漂う不思議の国だったのだ。
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