Never Say Die/CLIFF RICHARD~年輪と男の絶妙なクロス
CLIFF RICHARDというアーティストは80年代のヒットチャートにおいては、突然現れた謎のおじさんだったかもしれない。
だがテクノ、パンクからニューロマンティックに時代が移り、ブリティッシュ・インヴェイジョンの波が押し寄せる中で気を吐いたこの曲は、PVもその曲も、当時のポッと出の若造ではけっして歌いこなせない渋みと深みを持っていた。
たとえるなら、よれたトレンチコート、紙巻ではない太い葉巻、氷も入れないウイスキー。
そんなアイテムが似合う男ではないと歌いこなせない曲であり、演じられないPVの演出だった。
2:45のあたりのGetOutの瞬間、天を仰ぐところの洗練されたしぐさ。
これは積み重ねた年輪と、だがまだ男として枯れていない世代の、絶妙なクロスが生み出した大人の色気だと思う。
ちなみに当時のCLIFFのライブがまたかっこいい。
バンドスタイルではなく、楽器を持たずに歌うにしては当時を席巻した派手なダンスを入れるわけでもない、
だがそんなライブの中に、彼のこれまでの経験で得た「カッコよさ」がほとばしっている。
そりゃそうだ。
なんたって歴史が違う。
ニューロマの連中や派手なダンスパフォーマンスがムーブメントになり、ヒップホップの芽が吹きはじめた頃、CLIFFはすでに円熟していたのだから。
そうでなければ誰もがもみあげをそり落としたあの時代に、幅広いもみあげでステージでオーディエンスを魅了できるわけがないではないか。
あの幅の広いもみあげを見て、少年だった私はいつも思っていた。
髭が濃そうだな、と。
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