You Can't Get What You Want/JOE JACKSON~音は後から、でも傑作のライヴクリップ
ジョー・ジャクソンの音楽はクリップを必要としない。
是か否か。
Joe Jackson - You Can't Get What You Want (Till You Know What You Want)
たしかに、彼のルックスは当時のクリップ全盛期にわらわらと湧いて出たミュージシャン群とは違い、そこに付加価値はなかっただろう。
どちらかというと、まず音を聴いてから姿を見て、世間が「えー」と叫んだクリストファー・クロスに近いものがないではない。
Christopher Cross - Arthur's Theme (Best that you can do)
実際、ジョーもこの曲の含まれるアルバム「ボディ・アンド・ソウル」の時期から、明らかな口パクのクリップ作りは止めると宣言していたように記憶している。
そこで生まれたのが、この曲と続くシングル「ハッピー・エンディング」のライブを収めたクリップだ。
Happy Ending - Joe Jackson & Elaine Caswell
そして、その出来栄えはというと……秀逸。実に素晴らしい。
ホーンセクションから入る導入といい、サビ、間奏で入るベースのチョッパープレイ、ジョーの絞り出すように歌う姿、すべてがカッコいい。
当時のライヴ系クリップでは、ベルリンの「ダンシング・イン・ベルリン」と並ぶハイクオリティな一作に仕上がっている。
ベルリンの作品がおそらくメンバーの動きまで計算し尽くしたスタジオライヴの究極なら、こちらはアドリブの「動」を極めた、ホールライヴの傑作だ。
曲の半ばでガラスのコップをヘディングする姿までカッコいい。
ただし、音は後からあわせたスタジオ録音の音っぽい。
出だしから最後まで微妙にずれつづける、音と口の動きはご愛嬌。
逆に考えれば、あとから音を合わせているのに(合ってないけど)これだけ臨場感あふれるライヴクリップに仕上がっていること自体がスゴイ。
ジョー・ジャクソン/ボディ・アンド・ソウル 【CD】
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Just Got Lucky/JO BOXERS~本当の「音楽」は犬にも幸運を運ぶ
音楽は楽しい。
そして、その楽しさは「音」にとどまらず、ファッション、アクション、シチュエーション、音楽を「演る」すべてに表れる。
それが、ジョー・ボクサーズのこのクリップ一本に集約された、音楽の素晴らしさだ。
指先をカットした手袋、すそをまくり上げたダブダブのジーンズ、サスペンダー、ハンチング帽。
いずれも、今見たらダサいといわれるかもしれない、彼らのファッション。
しかし、その姿はクリップの中で今も輝いている。
それは、その姿をした彼らのアクションといきいきした表情、音を楽しむシチュエーションが映し出す魅力なのである。
このクリップでのもうひとつの注目は、メンバーに合わせてハンチングをかぶって登場する一匹の犬。
楽しそうに音楽に反応しつつ、間奏で叩かれるピアノの上に乗っけられたシーンでは、ピアノの音に興奮したのか、吠えつづける姿が収められている。
「なんだかわかんないけどノリノリなんだワン!」
音楽は犬の魂も揺さぶるのだ。
[CD] ジョーボクサーズ/ライク・ギャングバスターズ
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Planet Earth/DURAN DURAN~ちょっとだけ特別なヒラヒラ
デュラン・デュランといえば、当時の洋楽雑誌でいつも比較されていた相手がスパンダー・バレエだった、といって今信じてもらえるだろうか。
洋楽ブームが最盛期を迎えたころ、デュランはUNION OF THE SNAKEでスパンダーはGOLDだったのだから、「え? 比較対象なの?」感はあの頃すでにあったのだから、21世紀の今、そりゃ無理もない。
そもそも比較され始めたのはデビューの頃。
互いにナイトクラビングのムーブメントを支えた、ニューロマンティックの旗手だったのだから。
今になってあらためて見ると、デュランは時代と同世代をうまく取り入れている。
デュランはプラネット・アースでひらひらのシャツ、スバンダーはトゥ・カット・ア・ロング・ストーリー……で、中世貴族のコスプレ。
Spandau Ballet - To Cut A Long Story Short
ヒラヒラのニューロマンティックでも、デュランのものはその時代の若者のファッションとして取り入れやすい感じがある。
対するスパンダーのほうは、ありゃもうコスプレ。日常のファッションムーヴメントとしてはちょっと無理がある。
結局、デュランの人気が世界に広がったのは、どの国でも日常生活で真似できそうな、良くも悪くも俗な範疇にとどめた、「ちょっとだけ特別」の絶妙なさじ加減だったのではなかろうか。
そして近未来を感じさせるこのPVと、明らかに歴史物だったスパンダーのPV。
この差も大きかったろう。スパンダーはやりすぎた。
人には過去を認識する能力はあるけれど、それでも期待するのは未来なのだ。
FOREVER YOUNG::デュラン・デュラン [ デュラン・デュラン ]
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80年代洋楽カラオケについての考察
これだけ80年代洋楽をカラオケで歌える時代がくるとは。
歌い続けてみると(続けてるってところが無駄にポイント)、80年代洋楽カラオケで失敗する「あるある」みたいなネタが出来てくるな……。
せっかくなんで洗い出してみよう! (何のために?)
1. キーが合わない
まあそもそも、カラオケにいかなくてもCD(もちろん昔はレコードかテープね)にあわせて歌えば分るのですが、いざいってみると歌いたくなるもの。
しかもあわないとわかっていてもキーを下げるのってなんか悔しい。
↓
なのでそのまま歌う。
↓
散る。
という、フローチャートが成立します。
ただあまりにもハイトーンで、カラオケメーカーが無理と判断してくれた曲の場合、もともとキーが下がってて自尊心傷つけず歌えるのが最近のカラオケのポイントです。
実例として、意外に簡単に歌えた「テイク・オン・ミー」みたいな経験は誰にでもあると思います。
2. 早口すぎる
英語の場合、日本語よりもひとつの音符に多くの文字が乗るので、早口の早口加減は半端じゃありません。
サザンの「思いすごしも恋のうち」の二番が歌えるからといって、アフター・ザ・ファイアーの「デア・コミッサー(秘密警察)」が歌えると思うのは、
KaraokeTUBE After The Fire .... Der Kommisar
それこそ思いすごし
です。
そもそも、80年代はラップ夜明け前だと思って油断しているのが間違いです。
あれ、もともとは変態奇才ファルコ様のお笑いラップですからね。
Falco - Der Komisar I [Karaoke][QR-Code]
「聴いたことあるし、歌えるだろう」という気軽なノリでいくと、歌い出した途端、
思ったより攻めている自分
に気づきます。
そして、散ります。
もちろんどんなにリスペクトしてても RUN DMC もタブーです。
Karaoke Box - Walk This Way (In The Style Of / Al Estilo De : Aerosmith Feat. Run D.M.C.)
最近の若い子たちのようにラップに生まれ、ラップと育った世代とは違うんです。
だって、
俺は「ブルーライトヨコハマ」とともに生まれ、「三年目の浮気」なんかとともに育っているわけですから。
それでもどうしてもラップを歌いたいという場合、おすすめは「ウエスト・エンド・ガールズ」です。
あのゆる~いラップなら何とかついていけます。
[Karaoke] West End Girls - Pet Shop Boys
あと意外に歌いやすいのが、ロックウェルの「サムバディズ・ウオッチング・ミー」です。
Karaoke Somebody's Watching Me - Rockwell *
本人は、ファーストアルバムの
「マイケル次は俺の番だ!」というド派手なキャッチコピーとともに登場し、
セカンドアルバムの
「俺が時代の音だ」というコピーとともに消えていく
という
わかりやすい一発屋感
をほとばしらせてましたが、そもそもモータウンの御曹司かなんかだったので、別にどうでもよかったんでしょう。
そんなことより、そもそも、
こんな歌がカラオケにあることが驚きでした。
歌ってみた自身の行動も謎です。
3. 異国の言葉
洋楽カラオケですから、そもそも英語なのは当たり前。
ここでいうヤバイのは英語以外の国語です。
もし学生時代に第二外国語に専攻していて、しかもまじめに勉強していたら、歌えるものなのかもしれませんが、私はカラオケボックスで、
いくつもの屍を見てきました。
しかしそこには、
屍はいくつもあるが、レクイエムはいつもおなじ曲
という法則があります。
女性の場合は「99ルフトバルーンズ(ロックバルーンは99)」
Karaoke 99 Luftballons - Nena *
男性の場合は「ロック・ミー・アマデウス」
Karaoke German Falco Rock me Amadeus
です。
後者はラップでもあるので、ハードル二倍増しです。
ただ前者はカラオケで選曲すること自体、
「うかつだが妥当」
という微妙なラインであるのに対し、後者は、
そもそもそれをカラオケで歌おうと思った勇気
は称えてあげるべきかもしれません。
ところで以前カラオケのデュエット曲として、「それはそもそもカラオケにないだろ」と、だだツッコミしたアニモーションの「オブセッション」がカラオケにあることが判明しました。
SC8482 04 Animotion Obsession [KARAOKE]
アニモーションのみなさんにお詫びする前に、選曲基準を製作者に訊いてみたい気持ちでいっぱいです。
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Eye Talk/FASHION~場末の踊り子の場末の恋人
安っぽい場末のディスコに、安っぽい役者、安っぽいドラマ。
Fashion - Eye Talk (Alan Darby on vocals)
そんなチープさの中に、このクリップの完成度の高さがある。
ハイトーンなヴォーカルだが、この手の声によくある繊細さや痛みを伝える種類の力を持っていない。
だからこそこのグループに迎え入れられ、それを元にこのクリップは誕生したのだ。
部屋を出て行こうとする彼女を歌いながら引き止めるその姿はまだしも、歌っている全身が小刻みにリズムを取っているところに、このクリップを見ていると踊りだしたくなる魅力がある。
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Hands Tied/SCANDAL~田舎のお姉ちゃん、都会の女になる!
パティ・スマイスは田舎のお姉ちゃんだった。
Scandal, Patty Smyth - Goodbye To You
そんな彼女の心と自意識を都会に連れ出したのは、たまたま点けたMTVから流れる、クリップの中のシンディ・ローパーの姿だった。
Cyndi Lauper - Girls Just Want To Have Fun (Official Video)
「ザ・ウォリアー」で街に出た彼女は、「ビート・オブ・ア・ハート」で夜の町を体験。
Scandal, Patty Smyth - The Warrior
Scandal Beat Of A Heart (1984)
そして、一通りの遊びを終えたパティは、「ハンズ・タイド」で大人の女になり、都会と一体化した。
Scandal/Patty Smyth - Hands Tied (original) - [STEREO]
余計なアクションや派手なメイク、衣装をすべて排除したこのクリップの静かな美しさは、落ち着いた曲調とマッチして、パティの素材としての魅力を十二分に輝かせている。
中でもこのクリップで秀逸なのは、ギターソロのあるリードギタリストは別として、残りのメンバーを腰掛けたまま演奏させ、クリップ内の動きをパティに集中したことだ。
そうすることで、パティに派手で滑稽なアクションを強要することなく、彼女の「動」の魅力を見せる事に成功したのである。
窓辺に腰掛けるパティが唇を動かすだけで彼女の魅力が溢れ出すくらい、このクリップは洗練されている。
スキャンダルがパティ・スマイスをフィーチャンリングして、彼女のルックスをも武器にしようとした時、他のメンバーは、パティ・スマイスがソロになってしまうという危惧は抱かなかったのだろうか。
もしかしたら、このクリップが出来上がって、被写体としてのパティの完成度を見た時、何も考えずただ幸せにロケンロールしてたメンバーは初めてその危惧を抱いたのかもしれない。
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Poison Arrow/ABC~本人だけが気付いていなかったイロモノの資質
ポイズン・アロウは名曲だ。
この曲は間奏の中途半端なセリフを除けば、ABC中で、もっともシリアスでドラマティックな名曲である。
そのドラマテイックさは、同じメロディをバラードにアレンジした、「テーマ・オブ・マントラップ」を聴けばわかる。
しかし、そのドラマティックな一曲も、クリップを見るとイロモノ以外のナニモノでもない。
フィルム「マン・トラップ」と重なるシーンが多いこのクリップは、「マン・トラップ」では見られない、完全演奏シーンが披露されるにもかかわらず、その合い間に差し挟まれるシーンがことごとく滑稽なのだ。
二番のAメロをうたう、マーティンの衣装も滑稽なら、間奏のセリフのシーンで小人にされて逃げ惑うマーティンも滑稽。
本人はシリアスにやっているこの頃、すでに彼には自分だけが知らない、イロモノの資質が咲き誇っていたのだ。
オペラグラスを目に当てて、ステージを見やる観客に扮した二役のマーティンを見よ。
あまりの顔のデカさに、オペラグラスがミニチュアに見えるではないか。
ルック・オブ・ラヴ [ ABC ]
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