Because Of Love/JULLAN~耽美派の不安定な逆輸入
番外編。
80年代ニューロマンティック、エレポの端っこに、イギリス逆輸入の国産デュオがいた。
JULLAN - BECAUSE OF LOVE (LONG & ENGLISH VERSION -BECAUSE MIX !-)
メロディー・メーカー誌へ送ったデモ・テープが認められ、その噂が広まって日本でもデビュー、そんなスペックだったかと記憶している。
こちらは12インチシングル用に録られた英語バージョン。
簡単すぎる文章、たどたどしい英語、なんとも不安定な感覚を呼び覚ます。
しかしそれがまたこの曲の魅力なのだ。
なんとも儚げな低音で低温なヴォーカルはどこかブライアン・フェリーやデヴィッド・シルウィアンあたり(もうちょっとマニアックにいうとフィクション・ファクトリーなんかも似てるかも)を思わせるし、音はひねりのないデペッシュ・モード、怒りのないブロンスキ、あか抜けないカジャ・グー・グー、なんとでも表現できるだろう。
それでもいわゆる耽美派の文学を思わせるような、透き通った粘っこさは、日本ならではの趣を感じさせる。
チープといえばチープだが、日本のエレポがロンドンのにおいを少しまとうことができた瞬間の徒花ではないだろうか。
ちなみに曲としての魅力はやっぱり本来の日本語版ではないかと思う。
JULLAN - BECAUSE OF LOVE (SINGLE VERSION)
Love's Great Adventure/ULTRAVOX~哀愁を隠したアドベンチャー
ミッジをフロントマンとして迎えたウルトラヴォックスのイメージは、哀愁や翳りという言葉をひとつのパブリックイメージとして表現できるだろう。
そんな中、ベストアルバムのボーナストラックとしてリリースされ、シングルにもなったこの曲は、余興のようなものだったのだろうか。
Ultravox - Love's Great Adventure.flv
冒険風ストーリー仕立てのまるでデュランなPV、曲調に哀愁のかけらもなく「あんたはOMDか」といいたくなるような身もふたもないエレポ。
The OMD (Orchestral Manoeuvres in the Dark) - ♦ ENOLA GAY ♦
PVの最後に全員でジャンプする姿なんて、ホントびっくりしました。
この頃マダムたちにモテモテだったミッジ先生の大立ち回りシーンには、なんかキュンときますね。
小柄な男がけんかに強いって、漫画みたいじゃないですか。
ザ・コレクション [ ウルトラヴォックス ]
|
Cool It Now/NEW EDITION~スーパーボーイズのシュールなヴォーカル
この曲、たわいもないポップスに聴こえるが、途中のラップパートなんか、素晴らしいクオリティだと思う。
PVもいかにもな青春ぽくて好印象。ストリートバスケのシーンなんかもいかにもアメリカン・ダウンタウンって感じがすごくいい。
しかしそんなすべての印象を根こそぎ持って行ってしまうのが、ボーカルの声。
なんとも声変わりしていない、そのシュールなハイトーンがすべて持って行ってしまうのだ。
ちなみにメインボーカルはラルフ・トレスヴァント。
そしてボビー・ブラウン、ロニー・デヴォーとリッキー・ベルとマイケル・ビヴィンズ(Bell Biv DeVoe)と、超豪華メンバーの組み合わせだったと、今だからいえる。
Bobby Brown - Every Little Step
Cool It Nowの頃が16、17といった年頃だから、まさにスーパーボーイズグループと呼ぶにふさわしい。
CD/ニュー・エディション/クール・イット・ナウ (SHM-CD) (解説歌詞対訳付)/UICY-25337
|
[CD]NEW EDITION ニュー・エディション/20TH CENTURY MASTERS : MILLENNIUM COLLECTION【輸入盤】
|
[CD]RALPH TRESVANT ラルフ・トレスヴァント/RIZZWAFAIRE【輸入盤】
|
【メール便送料無料】Bobby Brown / Gold (輸入盤CD) (ボビー・ブラウン)
|
Best of Bell Biv Devoe【中古】
|
Are We Ourselves/FIXX, THE~研ぎ澄まされた二分間
それにしてもこの頃のフィクスには無駄がない。
前作で全米進出に成功した彼らのサードアルバム「ファントムズ」からの最初のシングルカットがこの曲なわけだが、不愛想なまでに余計なものがそぎ落とされたPVに作られている。
MTV The Fixx Sneak Preview Video Promo (1984)
メンバーの着込んだ白と黒のつなぎのコントラスト。ロケーションはただひたすら、巨大なパラボラアンテナのある草原で、そこで演奏する彼らと走る彼らのカットが交互するだけ。たまに万華鏡のような映像効果が入るけど、ホントにそれだけ。
それにしてもサイ・カーニンの持つトランシーバーは、このだだっぴろい場所で、自分自身を問いかけるSOSの発信になんと向いた小道具なのだろう。
そしてこの曲のすごいところは、演奏時間の短さだ。
これだけの濃度がありながらもソリッドな印象を与えるのは、二分半にも満たないコンパクトな構成のせいだろう。
PVばかりか曲も研ぎ澄まされている。
ちなみにこの曲、国内シングルはリリース時「アー・ウィー・アワセルヴズ」だったタイトルが、いつの間にか「アーウィ・アーウィ」なんてタイトルに変更されるんですよね。まあわかりやすいけど。
ちょっと間抜けな感じに聞こえる気がしないでもない。
ただ邦題がキャッチコピーのようなものだとしたら、和訳せずにつけた邦題としては、“Is there something I should know?”→「プリーズ・テル・ミー・ナウ」と並ぶくらいの快作だと思います。
【中古レコード】フィクス/ファントムズ[LPレコード 12inch]
|
【メール便送料無料】Fixx / Ultimate Collection (輸入盤CD) (フィクス)
|
Seven Seas/ECHO AND THE BUNNYMEN~仕方ない最大限の妥協
バニーメンはPVにそれほど力を入れたグループではなく、世間の風潮に合わせてとりあえずいわれたから作っといたみたいなものが多い、そういう価値観のグループだろう。
コテコテに芝居しまくったスパンダーとよく比較されていたのがなんだか懐かしい。
Echo and the Bunnymen - The Killing Moon (Official Music Video)
そんなバニーズも流行に乗らないわけにもいかず、キリング・ムーンあたりでなんとかそれっぽい感じに仕上げてごまかしてはみたものの、もっとPVっぽくやろうよ、というかんじの要望に最大限妥協したのが、たぶんこれではなかろうか。
Echo and the Bunnymen - Seven Seas (Official Music Video)
イアン、かわいいよね。
ウィルのワンレンふりふりとか、足ひれパタパタとか、バニーズなりに頑張ったんだと思うけど、この数年前にアジアでロケしてたデュランやスパンダー、カルチャー・クラブなんかと比べると、今頃になってやっと作ったPVが自主制作映画みたいなクオリティだったというのが、いかにも彼ららしい。
オーシャン・レイン [ エコー&ザ・バニーメン ]
|
エコー&ザ・バニーメン [ エコー&ザ・バニーメン ]
|
The Model/BIG BLACK~イキまくる外壁破壊ツール
1980年代に入って、クラフトワークをカッコイイと公言しにくくなってきた頃、少し間をおいてカバー曲というジャンルで、クラフトワークの遺産からふたつの星が輝いた。
Afrika Bambaataa & Soul Sonic Force - Planet Rock [Rockamerica] (1982)
ひとつは82年の Planet Rock。
これについてはまたいつか語る日もあるかもしれない。
Big Black (Seattle 1987) [05]. The Model
そしてもうひとつは87年のThe Model。
そう、あの悪名高き、BIG BLACKのこいつだ。
まあまかり間違ってもお上品とか、オシャレとかいえない、スティーヴ先生の一撃だし、そもそも踊るためのアレンジでもなんでもなく、他人に聴いてほしかったのかも怪しいようなアレンジで、ただとにかく吐き出すためのツールというか、とにかく「聴く」ためのものではない作品なのだ。
思うに、これは作品でも音楽でもなく、ただとにかく表現したい誰かが、ただ思い切り自分がイキまくるために表現するための自慰ツールだ。
そしてその自慰行為をみんなに見てもらうために、みんなの知ってる有名な素材を、自分のパブリックイメージからなるべく遠く離れたテリトリから無理やり持ってきて、好きなようにいじり倒すことで目立とうとした、そんな気がするのだ。
当時の日本のチャートで例えるなら、白塗りに全裸のアングラ舞踊の劇団(特定の実在の集団をさしているわけではなくあくまで例としての表現です)が、BGMにガラスの十代をかけながら、誰も見ていない深夜の公園で踊ってる、みたいな。
だがこの選曲は素晴らしいと思う。響くような重低音、鉄骨をぶつけあうようなビートに、感情を押し殺してロボットを演じようとあがいた、原曲のイメージが壊されていく瞬間。
そして、しかしそれでも美しすぎるメロディは全壊されることなく、狂ったように美しく残骸の背骨が残されていくのだ。
外壁を破壊された原曲の芯が目立つことで、かえって、その美的でたしかな骨組みが再認識できる。そんなアレンジだ。
ノイズにおしゃれという概念を持ち込んだジーザス&メリーチェインとは対極的に、本来のノイズの不快感と、それなのにやみつきになる奇妙なバランスは、とにかく本人が絶頂に達し続けることで生み出されたのではないだろうか。
[CD]BIG BLACK ビッグ・ブラック/SONGS ABOUT FUCKING (LTD)【輸入盤】
|
DAVID AUSTIN デヴィッド・オースティン
「Love While You Can」には、恋してステップ! とかホントもうどうしていいかかわからなくなるような邦題がついてるけど、いい曲だ。
David Austin - Love While You Can
短い演奏時間の中でぎゅっと凝縮したキレイなメロディとここ一番のファルセット。
モータウンのコピーのような曲だけど、これをロンドンで白人のアーティストがやったことにすごく意味があるのではないだろうか。
ちなみにアルバム収録の際の邦題は「恋してステップ!」ではなくて、「胸いっぱいの恋」。
それはそれはどっちでもいいくらい、音の質とは関係ない邦題が二度もつけられていることからも、彼の日本での売り出され方が伝わってくる。
そもそもワム!の幼馴染という依存しまくった切り口からの売り出しでズッコけて収拾がつかなくなり、「エッジ・オブ・ヘヴン」のころにはワムのバックバンドのひとりというポジションになってしまったデヴィッド・オースティン。
もともとジョージのワム以前の恋人……いやいや。
バンド仲間だったらしい。
日本ではミニアルバムが一枚でたけだが、本国ではアルバムすら出ていないだろう。
しかしあらためてそのミニアルバムを聴くと、曲は悪くない。
が、なんというかルックスが王子様すぎた。
案の定、日本でも売り出し方が「男前だからポスターつけとけ」みたいな方向に行ったのが惜しまれてならない。
David Austin - Turn to Gold (presented by George Michael)
そもそも「TURN TO GOLD」の邦題が「君にフラッシュハート」という時点で、
『こっちの頭がフラッシュハート』
です。
粗削りながらも確実に持っていたはずの才能と、ルックス重視で売り出そうとした日本のマーケットの大人の事情の差が大きすぎた気がする。
だが、本国ではWHAM!の存在がなければ色めがねをかけずに聴いてもらえたのではないかと思う反面、WHAM!がいなければデビューすらできたのかどうかすら怪しいし、ソロとしてコケたあとは、確実にもっと収拾つかなくなってただろうし、難しいところ。
結局それは本人の運と実力、このふたつの大切なパワーが、タイミングだのベクトルだの、何か大切な歯車が噛みあわなかったんだろう。
タイミングと運、このふたつは個々ではそれほどの力を持っておらず、何億分の一しかいないポップスターになるには、このふたつを中心に自分の人生の中で持っているあらゆる前進するためのファクターを、今こそそのときというばかりに一気に集中できることで生み出される、掛け算の効果が必要だ。
そしてそのために、何よりも必要なのは本人の強い意志なのだ。
それなくしては、長い人生のうちに、自分の才能を小出しにして終わってしまう。
主導権を握り、みずからの才能をくり出す時期を、まさに今がそのときと見極められるかどうかは成功のための大切な要素で、そしてそれこそ成功した人が結果的に持っていた才能なのではなかろうか。
「TURN TO GOLD」の次のシングルがまったく方向性の違う「Love While You Can」というのも彼自身の戦略でもなんでもなく、本人に強い意志がなく、彼で一儲けをたくらんだ大人たちが主導権を握ってキュートな曲をプッシュしたことで起きた方向転換だとしか思えない。
この二曲ともどちらもすごくいい曲なのに傾向がバラバラで、こんなに方向性が違うと、一曲目を聴いていいなと思ったファンがついていけないのもやむをえまい。
いい曲を演っているのに。
自身がポップスターの入口に立って動き出した時にはすでに時遅く、彼を金脈と見た大人たちの世界にあらがえないまま振り回された。
そんな気がする。
だがそれも仕方ない。
学生時代の友人がポップスターになったおかげで、本人はそのついでに心の準備もないままに、突如舞台に上げられた、そこいらの青年でしかなかったのだから。
[枚数限定]ザ・ベスト/ワム![CD]【返品種別A】
|