THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。新作も加えていきます。

House Arrest/KRUSH~クラッシュはクラッシュでも


Krush - House Arrest

 

「これがクラッシュ!?」「ミックの呪いか?」

 


The Clash - This Is Radio Clash (Bond's, Times Square, NY 9th June 1981) 2 of 3

 


当時、ヒットしているという情報を誌面で得て、あわてて探して手に入れた12インチ版には当然英語表記があるわけだから、もちろんCLASHと本気で間違えたわけではないが、そんなネタともジョークともいえない話で盛り上がったものだった。

 

ハウスミュージックという紹介をされていたけれど、これはハウスなんだろうか?
タイトルが「ハウス・アレスト(自宅監禁)」なんで誰かがそういいだしちゃったんだろうか?
そもそも音楽はージャンルというのは分類が難しいものだけど。

 

いずれにしてもいわゆるオシャレな音で、当時はユーロビートなんかがチャートを席巻していたころ。
ダンスチャートのヒット曲がナショナルチャートも駆け上がっていたし、この軽い曲質と口ずさみながら踊れる感じはディスコ向けだったんだろう。

 

初めて聴いたとき以降ずっとインストゥルメンタル中心のグループがやっていると思っていたんだけど、ネット時代になってついに見たPVで、あ、そうか、と思わされた。いわゆるダンス、クラブ系のDJ系のユニットだったんだな。


たしかに今初めてこの曲を聴いたらそう思っただろうけど、当時はそんなこと考えもしなかった。
楽器を持ってメンバーが音を作るバンドスタイルのテクノだと思い込んでいたのだ。お恥ずかしい。

 

そういうこともあって、この軽いヴォーカルをリードヴォーカルではなく、コーラスのお姉ちゃんだと思い込んで聴いていたんで、PVの真ん中で歌い踊る女の子を見て、結構びっくりしました。

 

少なくとも当時の日本のメインの洋楽シーンでは、この曲一発で、それ前後は紹介もされなかったため、グループとしてのプロフィールがまったくわからなくて、謎が多かったのも事実。


ただダンスミュージックの世界にそれ以外の何かを残しているのかというと、そこもどうやらそうではないらしく、結局このオネエチャン誰なんだという疑問を残すだけだった。

 

 

House Arrest / Jack's Back - Krush 7

House Arrest / Jack's Back - Krush 7" 45

 

 

 

House arrest (1987) / Vinyl Maxi Single [Vinyl 12'']

House arrest (1987) / Vinyl Maxi Single [Vinyl 12'']

 

 

 

 

Fire In The City/ELVIS BROTHERS, THE~そそられる音、そそられるビジュアル

リアルタイムでこの曲のPVがMTVで流れたのを見たのは、二度ほどだったが、当時毎週番組を録画していた自分にはそれで十分といえば十分だった。

 


The Elvis Brothers - Fire In The City (1983)

 

とはいえそもそも当時はプロフィールもよくわからないグループの曲を、録画した200分もあるプログラムの中で、早送りもせずに見たのにはわけがある。
そう、オープニングテーマが終わったあと、最初のCMに入る前にたった二曲だけ流される、スタートのナンバーのうち一曲がこれだったのだ。

 

しかしもちろんそれだけではない。
PVのスタートと同時にいきなり流れる、魂に響くようなドラム。
映されるメンバーの足下は赤、白、青の三色の靴。
実に音とビジュアルがそそるのだ。

 

そして現れる色っぽいミニスカネエチャンズに、興奮したメンバーの演出にメタファとして飛んでいくソーセージ。なんともわかりやすい、夜の街の艶っぽさに、青春時代の入口に入った少年たちは釘付けになったのかもしれない。

 

ちなみに当時の印象では、この一曲だけであっさりいなくなった印象で、洋楽ブームが起きた時代の日本だったからこそ紹介された、ひとときの徒花みたいなグループだったのだが、今回調べてみたら90年代半ばまで、おなじメンバーに一人さらにプラスしたりしながら、活動を続けていたらしい。

 

若さとルックスで、アイドルバンドとして売り出そうとして、失敗したかのようなイメージを勝手に抱いていたが、たしかに自分がいいと思ったくらいなのだから、この曲一曲聴いただけもいい音を出している。


PVもお姉ちゃんたちの登場と、それを狙う野獣どもみたいな安っぽい構図になっているけど、二番のそういうシーンではメンバーはただ演奏しているだけで、ちゃんとライヴシーンも見せてるんだよね。
立ったままたたいているドラムとか、絵にも気を遣ってるし、なかなかの秀作ではなかろうか。

 

www.discogs.com

 

The Lucky One/LAURA Branigan~そのとき、ローラは

ちょうどタイミング的にローラ・ブラニガンと重なって、マドンナ、シンディ・ローパーというヒロインがいた。


Madonna - Material Girl (Official Video)


Cyndi Lauper - Girls Just Want To Have Fun (Official Video)

 

ネオ・モンロー、現代のセックス・シンボルとして、まだサイボーグになる前のマドンナはむちっとしたおなかを見せたへそ出しルックでコケティッシュな魅力を振りまいて、世の男どもの視線を釘付けにしていたし、パンキッシュでアヴァンギャルドなのに、浮ついた印象を与えないシンディはGirls Just Wanna Have FunのPVそのままに、世の女子たちのファッションリーダーになろうとしていた。

 


Laura Branigan (clip) - The Lucky One

 

そのとき、ローラはなにをしていたんだろう。

 

ぶっとい眉毛。そのへんのオネチャンさながらのファッション。たしかに美人だが、ラテン系の親しみやすい、一歩間違えればきれいだけどイモっぽい面立ち。
そんな彼女にシンデレラストーリーが似合うのは、必然。

 

Self Controlで見せた夜のセクシーな姿もどこか色気を感じさせない不思議な雰囲気を見せるローラには、少年少女の絵本の題材になりそうな、こんなストーリーがよく似合う。

 

ちなみにMADONNAのMaterial Wolrdの間奏に男性コーラスが入るパートがあるが、それよりもヴォイスコーダーを利かせたこっちの男性コーラスパートのほうが俄然カッコいい。


ダサくて(あっ、いっちゃった)あか抜けないローラのほうがそこは一歩リードしていたのだ。

 

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Shouldn't Have To Be Like That/FRA LIPPO LIPPI~遺伝子の核に棲み付いた私たちの好きなメロディ


Fra Lippo Lippi - Shouldn't Have To Be Like That.wmv

 

80年代当時の洋楽のうち、大物アーティストのものではないスマッシュヒット曲が、日本のマーケットで受け入れられた例には共通点があるのではないかと思っている。

 


Hubert Kah - Angel 07 (Video 1985)

たとえばHUBERT KAH、ALPHAVILLE、REAL LIFEやこのFRA LIPPO LIPPIに顕著なのだが、それはメロディの要素として漂う哀愁ではないだろうか。

日本人は哀愁漂うメロディが好きだ。

 

この曲なんかはまさに典型的で、なんだか日本の歌謡曲に英語の歌詞を載せたような気すらしてくる。
そう、歌謡曲なのだ。

 


フォレスタ 美しき天然


おそらく「美しき天然」の時代から存在する、日本人の遺伝子の何かが化学反応するのだろう。
こういうメロディに日本人は弱い。

 

ノルウェー出身のFRA LIPPO LIPPIなんて今や、よほど当時このデュオに入れ込んだ人でなければ、80年代洋楽史を振り返ったときに、名前を挙げられもしない存在ではないかと思うが、ふと思い出すと無性に聴きたくなってネットで検索したりしてしまうのだ。

 

それは記憶の隅に、遺伝子の核に棲み付いた本能が求める、癒しのメロディなのかもしれない。

 

残念なのはこの手のスマッシュヒットの主の多くが、本国でのその後の活躍は別として、日本では一発屋としてくくられてしまっていることである。

 

 

Songs

Songs

 

 

 

Best of

Best of

 

 

 

Voices/PASSION PUPPETS~わずかに足りなかった何か

なんだかVo.のレイの動きがライク・ダストとまったくおなじ。両手を組む、指でおいでおいで、片膝立てて座る。

 


Passion Puppets - 'Voices'


なかなか美しい動きなんだけど、ライク・ダストのPVの振り付けではなくて、レイのオリジナルアクションだとしたらそれはそれでカッコいい。

 

ちょっと青くさいようなノスタルジックなエッセンスがあって、ななかなキャッチーなメロディを演るいいバンドなんだけど、何かが足りなかったんだろう。


おそらく、デュランやカジャの跡を継ぐには洗練されてなくて、スミスやバニーメンに続くには俗っぽすぎたというところなのかもしれない。

 

ほんのわずかなボタンの掛け違えがヒットするかどうかの差になるのだ。

 

Beyond The Pale

Beyond The Pale

 

 

 

Cruel Summer/BANANARAMA~隣の姉ちゃんはもうすぐ街へ行く

バナナラマは隣のお姉ちゃんだった。

 


The Fun Boy Three & Bananarama - Ain't What You Do (TOTP 25-Feb-1982)


テリー・ホールのオマケとしてファン・ボーイ3と一緒に演ってる頃の彼女たちは、なんだかよくわからないまま、たまたまテレビに出てしまった近所のお姉ちゃんだった。


Bananarama - Cruel Summer (OFFICIAL MUSIC VIDEO)

 

「愛しのロバート・デ・ニーロ」そして「ちぎれたハート」と邦題がつけられたこの曲の頃も、ジーンズにティーシャツの近所のちょっとかわいいお姉ちゃんが、テレビに出てるだけだった。

 

ある日彼女たちはユーロビートと出会う。

 

そして派手なPVで世界の頂点に上り詰める。
だがよく見ると何が変わったのだろう。

衣装は特にドレスアップしているわけでもない。三人もいるのに、特にハモるわけでもないユニゾンのヴォーカル。

何も変わっちゃいない。

 

ただひとつだけ違うのではないかと思えるのは、この曲にあった気怠さはヴィーナス以降の彼女たちにはない。

部活のようなノリだった歌と踊りは、ショウビズの世界で売り物になるようなメリハリの利いたものに変化していた。

 

彼女たちは街を出て、都会へ。そしてみんなのお姉さんになった。

 

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Give/MISSING PERSONS~バキバキ超絶テクの変態たち

ド派手なメイク、奇妙な近未来感のあるシェイプの楽器に、フワフワした浮遊感のある曲、そしてバカテク。

 


Missing Persons - Give

 

いったいなんだこりゃ、という感じのビジュアルだが、ドラムのテリー・ボジオフランク・ザッパのバンドにいたという経歴を聞いて、ちょっとイッちゃった天才なのかなと思ったものだ。

まあもっともイッてたのは、ヴォーカルのデイル、すなわち当時のテリーの嫁さんなのだが。

 

いずれにしても、こんな未来は21世紀になっても来なかったわけで、そう考えるとある意味で80年代のクラフトワークみたいなPVに仕上がっている。

ちょっとSFっぽいんだよね。

 

曲は秀逸。

テクもバキバキ。

 

けど、どこかマニア向きで、メジャーシーンのトップに立てるようなキャッチーさはないバンドだった。

玄人好みのテクニシャンの才能が少しだけチャートに訴えかけた一曲なのかもしれない。