THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。新作も加えていきます。

Wonderland/BIG COUNTRY~この雄たけびよ、祖国に届け!


Big Country - Wonderland

 

このクリップはU2「ニューイヤーズ・デイ」とともに、雪中演奏クリップの傑作である。

 

 


New Year's Day U2 Video


このクリップと「ニューイヤーズ・デイ」のクリップの間に、お互いなんらかの影響があったかどうかは定かではないが、ほぼ同時期に同じようなポジションにいた2つのグループであり、しかもいつも比較対象だったビッグ・カントリーとU2がこういうロケーションのクリップを作ったことが印象深い。

 

クリップの中で見るビッグ・カントリーは、U2のそれよりもはるかに陽気で、寒さや重さを感じさせない。


スチュアートの叫び声もこの曲では、短かい「シャッ!」ではなく、まさに祖国の山々に向かって雄たけびを上げるようなロングトーン
実に雄大で、スケールの大きさを感じるクリップである。

 


 

 

 

Hit That Perfect Beat/BRONSKI BEAT~冷戦の壁の向こうに消えたジミの苦悩

「レター・トゥ・ブレジネフ」。

 


 

 


もう今となっては覚えている人も少なかろう。そんな映画のタイトル、邦題は「リヴァプールからの手紙」だった。
そしてその中でまさかの再始動を切ったのが、あのブロンスキだった。

 


Bronski Beat - Hit That Perfect Beat

 

「スモールタウンボーイ」に始まり、「ホワイ」「エイント・ネセサリリー・ソー」、そしてマーク・アーモンドまで引っ張り出した、あのブロンスキ。
それがジミの逃亡ですべての歯車が狂い、ついに解散。


誰もがあの自分のすべてを代弁してくれるような、怒りと憤りを発散したクールな音の行方に戸惑たものだった。

 

そんなブロンスキがついに帰ってきた。


その場所が当時蔓延ししていた、映画のサントラだったのだ。
そこから出たヒット曲は数知れない。
時には、曲は売れたが映画がヒットしなかったことすらあるほどだ。

 

そして新生ブロンスキは、その例にもれず、この曲をヒットさせた。

しかし、そこにはかつてのブロンスキを愛した、屈折した感情を変えたファンの居場所はなかった。

 

そもそもこの曲が採用された映画自体、何だったんだろう。
共産主義に自由はないということをいいたい、そんなプロパガンダだったんだろうか。
その反面、当時のイギリスは失業者が溢れ、ポール・ウェラーは炭鉱労働者のストライキに共感してソウル・ディープしてた頃だ。
そんな国内の不満の行く先を冷戦の壁の向こうに持って行こうとしたプロパガンダ作品だったのだろうか。

 

それにしても、ジョン・ジョンって誰だったんだろう。

 

 

Truthdare Doubledare

Truthdare Doubledare

 

 

 

Hit That Perfect Beat [12 inch Analog]

Hit That Perfect Beat [12 inch Analog]

 

 

 

Hit That Perfect Beat - Bronski Beat 7

Hit That Perfect Beat - Bronski Beat 7" 45

 

 

 

Hit That Perfect Beat [7 inch Analog]

Hit That Perfect Beat [7 inch Analog]

 

 

 

Hit That Perfect Beat (Originally Performed By Bronski Beat)

Hit That Perfect Beat (Originally Performed By Bronski Beat)

 

 

 

プロンスキ・ビート BRONSKI BEAT

はじめてブロンスキを知ったとき、ジミのファルセットヴォイスに込められた、溢れ出すような、それでいて、けっして「動」ではない「静」の魅力に激しく吸い寄せられた自分を思い出す。


その一方で、ジョンがヴォーカルに据えられたジミ脱退後のブロンスキの、まるで別のグループであるかのような軽快さを素直に受け入れた自分も、である。

 

ファーストアルバム「エイジ・オブ・コンセント」のオープニング曲「ホワイ」の冒頭からいきなり絞りだされるジミの声には、背筋が凍りつくような衝撃を感じたものだ。
この「ホワイ」という曲は、その歌詞に「君と僕は僕たちの愛のために一緒に闘っている」とある。

 


 

 


なんの先入観もなく、この曲を聴くと、まるでよくあるメロドラマのような禁断の愛を頭に浮かべるが、ブロンスキの場合は、当時、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドを怪物に育て上げた、トレヴァー・ホーン率いるZTTレコードのスカウトを断ったというニュースとともに、その内面がすでに取り上げられていたため、その曲の歌詞は、もっと違う意味での深さを持って、我々の耳に届いていた。


そう、オリジナル・ブロンスキ・ビートと呼ぶべき、ジミを中心にした三人は、日本には音以前に、「全員がゲイ」という内面をセンセーショナルに音楽雑誌に取り上げられていたのだ。

 

そして当然、聴くものは念頭に「ゲイの書いた歌詞」「ゲイの書いた曲」「ゲイの歌う歌」として、「スモールタウンボーイ」「ホワイ」と、彼らのオリジナル曲を聞いていく。

 

「スモールタウンボーイ」で、母が出て行く理由を理解してくれないまま、一人淋しく駅に立つ少年は、思春期の反抗から町を後にするわけではなく、性癖を理解されず、小さな町を後にするのだと考える。

 


Bronski Beat - Smalltown Boy ORIGINAL VIDEO

 

「ホワイ」の「君と僕」が闘う相手も、たとえば不倫相手の本来の旦那や、二人の交際を認めない父親が相手ではないと知る。

 


Bronski Beat - Tell Me why (ORIGINAL)


それはマスコミがもし、彼らの、特にこの時期のブロンスキの方向性を決定付けていたジミの性癖を取り上げていなければ、けっして伝わらない背景から導かれるものであった。


我々は「世間に理解されない人の書いた歌詞、その怒りを込めた曲」としてブロンスキを知り、歌詞を書いた人物、曲を作った彼らが歌に込めた本当の意味を知った気になったのである。

 

しかし、それははたして、正しいことだったのだろうか。


我々は純文学と呼ばれるひとつの小説に出会ったとき、その中に表現される人物の心を解読し、小説のレベルをはかるとき、著者の私生活を考慮するだろうか。


たとえば、作中の人物が恋する相手の描写を読んで、「ああ、この作者の恋人はこんな人だったのだ」と思うだろうか。

作中人物が20代半ばにしてその人生を閉じたとき、「ああ、作者は20代半ばで死と対面したことがあるのだ」と考えるだろうか。

 

一概に小説と呼んでも、その中には傑作もあれば駄作もある。
語り継がれる名作もあれば、読み捨てられる作品もある。


しかし、いずれの場合も前者に共通するのは、緻密に構成された小説内の世界構築なのである。たとえば、時刻をあらわす一日の描写。

すぐれた小説には、そのシーンが朝である理由があり、結末を迎えたとき、夜である理由がある。
なぜなら、その小説は主人公の堕落をテーマにしたものであるから、堕落前の主人公を書いたシーンは、朝日差し込むシーンであり、堕落した主人公が末期を迎えるエンディングは、光一つ差さぬ夜である必然性があるのだ。

 

ジミ率いたオリジナル・ブロンスキの歌詞、音、そしてその融合である歌。
すべてが、21世紀に入った現在でも、色褪せることなく聴くものにその「怒り」「反抗」「哀しみ」といった感情を的確に伝えてくる。


つまり、彼らの残した作品は名作だ。
けっして、一時の感情に支配された独り言ではない。


そう考えれば、この名作はもしかして、彼らがゲイであろうがなかろうが生み出される「傑作」であり、緻密に構成された世界の中に構築されたフィクションだったのではないだろうか。

 

ジミが脱退した後のブロンスキは、前述のとおりジョン・ジョンというヴォーカリストを迎え、「ヒット・ザット・パーフェクト・ビート」という曲をもって、日本含む各国のダンスチャートを席巻した。

 


Bronski Beat - Hit That Perfect Beat (HQ 1985)


オリジナル・ブロンスキの作り上げた「理解されない哀しい同性愛の少年の独白的世界」を愛したファンは、なんの苦悩もないその世界を激しく拒否した。

 

しかし、元々、ジミの作った世界がフィクションであったとしたら、そして、それに気づいていたとしたら、それを否定する理由は全くなかったはずだ。
音としてのブロンスキを支えた、スティーヴとラリーの二人が、ジミを失ってからもブロンスキ・ビートの名前を名乗りつづけたことに、その答えが見えてくる気がする。

 

もっとも、個人の名前まで「ブロンスキ」と名乗っていた、スティーヴが実は「独り言の主」だったのかもしれない。


しかし、それは脱退後のジミが演じたコミュナーズのファーストアルバムが、まるでオリジナル・ブロンスキのセカンドアルバムのような出来栄えだったことからもありえない。


いや、そうでなくあってほしい。

I Guess That's Why They Call It The Blues/ELTON JOHN~僕は君に素直な思いを伝えられていただろうか

青春にはいつも何かの壁がある。
その多くは今になって振り返ると、なぜあんなに高く聳え立っていたのだろうと思うものも多く、その壁にぶつかるまでの自分は、なんて甘く愚かな生き物だったのだろうと思う。

 


Elton John - I Guess That's Why They Call It The Blues

 

甘酸っぱい青春の中、その頃の自分はぶつかる壁をドラマティックな妄想に差し替えていたことを思い出す。
たとえば恋人とのすれ違いを、このPVのような世相や時代に無理やり当てはめて、引き裂かれてしまった自分たちを妄想したりして、仕方ないよと自分に言い聞かせたりしていたのだ。

 

ドラマティックなバラードをバックに繰り広げられる、若い恋人のドラマを見守るように歌うエルトン・ジョンの姿は美しい。

帽子とヅラの手離せないおじちゃんが、こんなに優しく温かい視点で、甘く美しい歌声を当時の僕に聞かせてくれたなら、僕は君に素直な思いを伝えられていただろうか。

 

それにしてもモノクロとカラーの使い方の上手いPVだ。きらびやかで色彩豊かな夜の街。

徴兵された彼の世界からは色が消え、街に残った彼女にはフルカラーの青春が続く。


モノクロの世界の中で髪を刈られた彼が椅子に向けて繰り出す足蹴りのシーンには胸が締め付けられるようだ。

 

カラーの世界に戻った彼のところへ駆け寄る彼女。
ほんの四分ほどの時間に見ていて感動させられるほどのドラマが込められている。
彼に抱き着く彼女のスカートの裾が一瞬風になびく瞬間の美しさときたらない。

 

それにしても、この男子、チョー男前ですね。

 


 

 

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Electric Youth/DEBBY GIBSON~既視感が生む80sのダイジェスト


Debbie Gibson - "Electric Youth" (Official Music Video)

 

既視感満載のこのPV、ある意味で80年代前半のビルボードの総集編のような作品になっている。

たとえばファッションはMADONNA


Madonna - Borderline (Official Music Video)

 

ダンスはMICHAEL JACKSON


Michael Jackson - Beat It (Official Video)

 

レーザービームの演出は、OLIVIA NEWTON JOHNや、


Olivia Newton John - Twist of fate

 

FRANKIE GOES TO HOLLYWOODで、


Frankie Goes To Hollywood - Relax (Laser Version)

 

廃墟で踊る舞台設定は、BILLY IDOL。


Billy Idol - Dancing With Myself

 

ここまで徹底されると、まだ記憶の生々しかった当時より、三十年の時を経て、80sがリバイバルする今の時代こそ、似つかわしい気がする。

 

曲もなんとも甘酸っぱくキャッチーなメロディのダンスミュージックで、いかにも日本人好み。
そのわりに、CMやテレビのBGMにイマイチこないのは、なぜだろう。

 

そんなことを考えていて、ふと思ったのは……。

 

なんとなくこれを名曲だったと公言すると、そのかたわらで聴いていたICICLE WORKSなんかまで飲み込みそうなミーハー洋楽ファンに認定されてしまいそうな感じが、当時トンガったロックファンだったはずの自分に対して反する感じで、仕方なく記憶の中に封印してしまってるのではないだろうか。

 

でも曲は確かにいい。
メロディのレベルは高い。

 

ただやっぱり、このへん

www.youtube.com

まで思い出させるあたりが、ロック史に残る名曲というより、なんだかうまく一発あてたアイドルタレントのドサクサ感があるのだと思う。

なんつーか、あの首のインド映画みたいなふにゃふにゃ感が、ね。

 

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Drive/THE CARS~コミックが同期させたもうひとつの青春


The Cars - Drive (OFFICIAL MUSIC VIDEO)

CIPHERと聞いて、ああ、と思う。

青春の何たるかを思い出させる懐かしいコミックだ。

 


 


僕たちの青春がこんな場所で、こんなふうにならないのだろうか。
それは生まれた国が違うから、環境が違うからありえない。
僕はそんな風に思っていた。

 

美しい漫画で、その中でも印象的だったのは、当時の音楽が作品にマッチして登場してくるところだった。


舞台がアメリカで、当時ビルボードの情報は常に日本に入ってくる時代だったからこそ、音楽というパーツが、遠い場所に投影されたもうひとつの青春にリアリティを持たせてくれたのだ。

 

CARSにはふたりのヴォーカリストがいるが、どちらかというと目立たないほうのBENJAMINがヴォーカルを取ったこの曲が、ある意味で今も残るスタンダードになっているのは面白い。

 

PVの中で泣き、笑い、生きている女性が美しく描かれ、そしてフリーズするメンバーの存在が意味深い。
モノトーンから入り、いつの間にかカラーになっている自然な色使いの美しさ。

 

あの日読んだコミックの中で、僕たちが胸をつまらせたシーンで流れるこの曲は、音のない絵の世界でもたしかに僕たちにその演奏を聴かせてくれていた。

僕たちの青春は遠い空の下とその瞬間、同期していたのだ。

 

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Happy Birthday/ALTERED IMAGES~僕たちの幸せ


Altered Images - Happy Birthday [Top Of The Pops 1981]

シンプルな歌詞、シンプルな曲、どうってことない一曲だといってしまえばそれまでだけど、この曲はヒットしたし、今でも思い出すことがある。


ALTERED IMAGES - HAPPY BIRTHDAY (TOP OF THE POPS 1981)

それはシンプルだからこそのインパクト、ストレートだからこその忘れ難さなのだろう。


Altered Images - Happy birthday 1981

ボーカルのクレアの特徴的な声が、ネオアコ的なアレンジでポップなこの曲にぴったりとはまっている。


おなじ質の声を男性に当てはめると、あのCAVA CAVAということになるのだろうが、チャートリアクションでALTERED IMAGESが勝ったのは、ヴォーカルが女の子だからというだけではなく、ひとつ違えばまるで童謡のようなこの曲のシンプルさゆえではないだろうか。

 


Clare Grogan's Altered Images - Happy Birthday


僕たちが幸せを祝う、君の誕生日について思い出す一曲。
Happy Birthday!

 

 

Happy Birthday

Happy Birthday

 

 

 

Happy Birthday: The Best of

Happy Birthday: The Best of

 

 

 

Happy Birthday

Happy Birthday