THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。新作も加えていきます。

1984 Sex Crime/EURYTHMICS~動く彼女に感じたある種のクライム


Eurythmics "Sex Crime" 1984

EURYTHMICSのデビュー時はYAZOOとの類似がいわれていた。
無機質なエレポに、ソウルフルな女性ヴォーカルの乗るスタイルはたしかに似たスタイルだった。

 

だが、EURYTHMICSの曲を聴いてみると、ヒットしたシングルカット曲が陰鬱なムードをまとったエレポであっただけで、意外にそのソウルフルな声を活かした、ダンスチューンが多いことにも気付いた人は多いだろう。

 

この曲のPVのANNIEは驚くほど動いている。


Sweet Dreams(are made ofthis)では静の表現を尽くした二人が、このPVではまるでライヴのような疾走感を持って、そして明るい曲調でその姿を現したのだ。

 

アルバム自体がそもそも映画1984のサントラだったはずが、サントラとして採用されないといった、本人たちにとってはおそらくやりきれないような成り立ちがあった一枚だ。

 

その中で主題歌たるこの曲のアクティヴィティは、ドラマチックで芸術的だ。
棄てられたものであっても、必ず活かされる場所はあるのだ。

 

その後さらにソウルフルな方向に進み、テクノの面影を払拭したEURYTHMICSが世界的なグループになっていくのに対し、YAZOOがなんとなく消えていったのは、ちょうどニューウェイヴ系の有象無象が淘汰されていくタイミングと重なったのは、やむを得なかったのだろうか。

 

おそらく楽曲の方向性を決定づけるDAVEとVINCEの性格や志向の違いもあっただろう。

なにしろVINCEはライヴが厭でDEPECHE MODEを離れたような男なのだから。

 

初めて見た時、こんなに動くと思わなかったANNIEがこんなに動く。
そしてその整った顔立ちと、心揺すぶる声に我々はある種の罪を感じていた。

 

このPVの中の映画のシーンを見てると何となくStyxのKilroy Was Here も「1984」の影響受けてるんだなって気がしますね。

日本ではあの曲のせいで別のウケ方しちゃいましたが。

 

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The Safety Dance/MEN WITHOUT HATS~いつかどこかで見たドラクエの原型

一発屋と呼ばれるアーティストは、ムーヴメントの波の中には欠かせない徒花である。
彼らがいるからこそ、数の波が認知に繋がり、露出が増えるから興味を促し、さらに影響を受けた次の波がムーヴメントの内側に入り、ブームが起きる。

 


Psechodelic #217: "The Safety Dance" (Extended Club Mix) (1982-83) by Men Without Hats

 

もしブームがひとつの祭りだとすれば、祭りが過ぎ去った後、すべての参加者が残れる程度の頭数ではそもそも世界を包み込むような大きなムーヴメントにはならないのだ。

MEN WITHOUT HATSもそんな徒花の一輪に過ぎない。

 

だが彼らには強烈な印象を残す、大輪の花がある。ブリティッシュ・インベイジョン、PV全盛の時代にうまく乗り、この曲はビルボード三位まで上り詰めている。
実際には彼らは、カナダで結成されたグループで、ブリティッシュとは関係ないのだが、軽めのエレポ感が、汗くさいアメリカン商業ロックとは一線を画した、当代の音ではあった。

 


The True Meaning of The Safety Dance by Men Without Hats

 

 

中世のヨーロッパのような風景の中、ドワーフを連れて村を行くアイヴァン。
途中で出会う女はなんだか、その少し後に世界を席巻するシンディ・ローパーの原型のような不思議な動きのお姉ちゃんだ。

 

曲のタイトルの頭文字を形作るポーズははたしてどこかで流行したのだろうか。
ハメルンの笛吹男のように人々を連れた先、村では祭りが始まり、狂乱のうちに映像は終わっていく。

 

なんてことのないチープなエレポにすぎないといってしまえば、それまでかもしれない。

 


Men Without Hats ~ Safety Dance ~ Live 1985 in Montreal ~ DVD Live Hats

 

 

しかし、この曲の奇妙にすがすがしい余韻と、アイヴァンの苦みを含んだ表情の対立するような存在の妙は音に映像が付加されてこそ。その対極にある要素の中和に、ドワーフと不思議なお姉ちゃんを持ってきたパーティ仕立てのキャスティング。


村のロケーションをあらためて見直すと、なんだかドラクエの原型もここにあったんじゃないかという気分にさせられる。

 

PS

最近の姿を見つけたのですが、思いっきり生演奏で素敵でした。

なんつーか、そこはエコーかけて処理してあげてよ!

みたいなとこまで生でほほえましいです。


Men Without Hats perform 'Safety Dance'

 

 

Rhythm of Youth

Rhythm of Youth

 

 

 

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Wonderland/BIG COUNTRY~この雄たけびよ、祖国に届け!


Big Country - Wonderland

 

このクリップはU2「ニューイヤーズ・デイ」とともに、雪中演奏クリップの傑作である。

 

 


New Year's Day U2 Video


このクリップと「ニューイヤーズ・デイ」のクリップの間に、お互いなんらかの影響があったかどうかは定かではないが、ほぼ同時期に同じようなポジションにいた2つのグループであり、しかもいつも比較対象だったビッグ・カントリーとU2がこういうロケーションのクリップを作ったことが印象深い。

 

クリップの中で見るビッグ・カントリーは、U2のそれよりもはるかに陽気で、寒さや重さを感じさせない。


スチュアートの叫び声もこの曲では、短かい「シャッ!」ではなく、まさに祖国の山々に向かって雄たけびを上げるようなロングトーン
実に雄大で、スケールの大きさを感じるクリップである。

 


 

 

 

Hit That Perfect Beat/BRONSKI BEAT~冷戦の壁の向こうに消えたジミの苦悩

「レター・トゥ・ブレジネフ」。

 


 

 


もう今となっては覚えている人も少なかろう。そんな映画のタイトル、邦題は「リヴァプールからの手紙」だった。
そしてその中でまさかの再始動を切ったのが、あのブロンスキだった。

 


Bronski Beat - Hit That Perfect Beat

 

「スモールタウンボーイ」に始まり、「ホワイ」「エイント・ネセサリリー・ソー」、そしてマーク・アーモンドまで引っ張り出した、あのブロンスキ。
それがジミの逃亡ですべての歯車が狂い、ついに解散。


誰もがあの自分のすべてを代弁してくれるような、怒りと憤りを発散したクールな音の行方に戸惑たものだった。

 

そんなブロンスキがついに帰ってきた。


その場所が当時蔓延ししていた、映画のサントラだったのだ。
そこから出たヒット曲は数知れない。
時には、曲は売れたが映画がヒットしなかったことすらあるほどだ。

 

そして新生ブロンスキは、その例にもれず、この曲をヒットさせた。

しかし、そこにはかつてのブロンスキを愛した、屈折した感情を変えたファンの居場所はなかった。

 

そもそもこの曲が採用された映画自体、何だったんだろう。
共産主義に自由はないということをいいたい、そんなプロパガンダだったんだろうか。
その反面、当時のイギリスは失業者が溢れ、ポール・ウェラーは炭鉱労働者のストライキに共感してソウル・ディープしてた頃だ。
そんな国内の不満の行く先を冷戦の壁の向こうに持って行こうとしたプロパガンダ作品だったのだろうか。

 

それにしても、ジョン・ジョンって誰だったんだろう。

 

 

Truthdare Doubledare

Truthdare Doubledare

 

 

 

Hit That Perfect Beat [12 inch Analog]

Hit That Perfect Beat [12 inch Analog]

 

 

 

Hit That Perfect Beat - Bronski Beat 7

Hit That Perfect Beat - Bronski Beat 7" 45

 

 

 

Hit That Perfect Beat [7 inch Analog]

Hit That Perfect Beat [7 inch Analog]

 

 

 

Hit That Perfect Beat (Originally Performed By Bronski Beat)

Hit That Perfect Beat (Originally Performed By Bronski Beat)

 

 

 

プロンスキ・ビート BRONSKI BEAT

はじめてブロンスキを知ったとき、ジミのファルセットヴォイスに込められた、溢れ出すような、それでいて、けっして「動」ではない「静」の魅力に激しく吸い寄せられた自分を思い出す。


その一方で、ジョンがヴォーカルに据えられたジミ脱退後のブロンスキの、まるで別のグループであるかのような軽快さを素直に受け入れた自分も、である。

 

ファーストアルバム「エイジ・オブ・コンセント」のオープニング曲「ホワイ」の冒頭からいきなり絞りだされるジミの声には、背筋が凍りつくような衝撃を感じたものだ。
この「ホワイ」という曲は、その歌詞に「君と僕は僕たちの愛のために一緒に闘っている」とある。

 


 

 


なんの先入観もなく、この曲を聴くと、まるでよくあるメロドラマのような禁断の愛を頭に浮かべるが、ブロンスキの場合は、当時、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドを怪物に育て上げた、トレヴァー・ホーン率いるZTTレコードのスカウトを断ったというニュースとともに、その内面がすでに取り上げられていたため、その曲の歌詞は、もっと違う意味での深さを持って、我々の耳に届いていた。


そう、オリジナル・ブロンスキ・ビートと呼ぶべき、ジミを中心にした三人は、日本には音以前に、「全員がゲイ」という内面をセンセーショナルに音楽雑誌に取り上げられていたのだ。

 

そして当然、聴くものは念頭に「ゲイの書いた歌詞」「ゲイの書いた曲」「ゲイの歌う歌」として、「スモールタウンボーイ」「ホワイ」と、彼らのオリジナル曲を聞いていく。

 

「スモールタウンボーイ」で、母が出て行く理由を理解してくれないまま、一人淋しく駅に立つ少年は、思春期の反抗から町を後にするわけではなく、性癖を理解されず、小さな町を後にするのだと考える。

 


Bronski Beat - Smalltown Boy ORIGINAL VIDEO

 

「ホワイ」の「君と僕」が闘う相手も、たとえば不倫相手の本来の旦那や、二人の交際を認めない父親が相手ではないと知る。

 


Bronski Beat - Tell Me why (ORIGINAL)


それはマスコミがもし、彼らの、特にこの時期のブロンスキの方向性を決定付けていたジミの性癖を取り上げていなければ、けっして伝わらない背景から導かれるものであった。


我々は「世間に理解されない人の書いた歌詞、その怒りを込めた曲」としてブロンスキを知り、歌詞を書いた人物、曲を作った彼らが歌に込めた本当の意味を知った気になったのである。

 

しかし、それははたして、正しいことだったのだろうか。


我々は純文学と呼ばれるひとつの小説に出会ったとき、その中に表現される人物の心を解読し、小説のレベルをはかるとき、著者の私生活を考慮するだろうか。


たとえば、作中の人物が恋する相手の描写を読んで、「ああ、この作者の恋人はこんな人だったのだ」と思うだろうか。

作中人物が20代半ばにしてその人生を閉じたとき、「ああ、作者は20代半ばで死と対面したことがあるのだ」と考えるだろうか。

 

一概に小説と呼んでも、その中には傑作もあれば駄作もある。
語り継がれる名作もあれば、読み捨てられる作品もある。


しかし、いずれの場合も前者に共通するのは、緻密に構成された小説内の世界構築なのである。たとえば、時刻をあらわす一日の描写。

すぐれた小説には、そのシーンが朝である理由があり、結末を迎えたとき、夜である理由がある。
なぜなら、その小説は主人公の堕落をテーマにしたものであるから、堕落前の主人公を書いたシーンは、朝日差し込むシーンであり、堕落した主人公が末期を迎えるエンディングは、光一つ差さぬ夜である必然性があるのだ。

 

ジミ率いたオリジナル・ブロンスキの歌詞、音、そしてその融合である歌。
すべてが、21世紀に入った現在でも、色褪せることなく聴くものにその「怒り」「反抗」「哀しみ」といった感情を的確に伝えてくる。


つまり、彼らの残した作品は名作だ。
けっして、一時の感情に支配された独り言ではない。


そう考えれば、この名作はもしかして、彼らがゲイであろうがなかろうが生み出される「傑作」であり、緻密に構成された世界の中に構築されたフィクションだったのではないだろうか。

 

ジミが脱退した後のブロンスキは、前述のとおりジョン・ジョンというヴォーカリストを迎え、「ヒット・ザット・パーフェクト・ビート」という曲をもって、日本含む各国のダンスチャートを席巻した。

 


Bronski Beat - Hit That Perfect Beat (HQ 1985)


オリジナル・ブロンスキの作り上げた「理解されない哀しい同性愛の少年の独白的世界」を愛したファンは、なんの苦悩もないその世界を激しく拒否した。

 

しかし、元々、ジミの作った世界がフィクションであったとしたら、そして、それに気づいていたとしたら、それを否定する理由は全くなかったはずだ。
音としてのブロンスキを支えた、スティーヴとラリーの二人が、ジミを失ってからもブロンスキ・ビートの名前を名乗りつづけたことに、その答えが見えてくる気がする。

 

もっとも、個人の名前まで「ブロンスキ」と名乗っていた、スティーヴが実は「独り言の主」だったのかもしれない。


しかし、それは脱退後のジミが演じたコミュナーズのファーストアルバムが、まるでオリジナル・ブロンスキのセカンドアルバムのような出来栄えだったことからもありえない。


いや、そうでなくあってほしい。

I Guess That's Why They Call It The Blues/ELTON JOHN~僕は君に素直な思いを伝えられていただろうか

青春にはいつも何かの壁がある。
その多くは今になって振り返ると、なぜあんなに高く聳え立っていたのだろうと思うものも多く、その壁にぶつかるまでの自分は、なんて甘く愚かな生き物だったのだろうと思う。

 


Elton John - I Guess That's Why They Call It The Blues

 

甘酸っぱい青春の中、その頃の自分はぶつかる壁をドラマティックな妄想に差し替えていたことを思い出す。
たとえば恋人とのすれ違いを、このPVのような世相や時代に無理やり当てはめて、引き裂かれてしまった自分たちを妄想したりして、仕方ないよと自分に言い聞かせたりしていたのだ。

 

ドラマティックなバラードをバックに繰り広げられる、若い恋人のドラマを見守るように歌うエルトン・ジョンの姿は美しい。

帽子とヅラの手離せないおじちゃんが、こんなに優しく温かい視点で、甘く美しい歌声を当時の僕に聞かせてくれたなら、僕は君に素直な思いを伝えられていただろうか。

 

それにしてもモノクロとカラーの使い方の上手いPVだ。きらびやかで色彩豊かな夜の街。

徴兵された彼の世界からは色が消え、街に残った彼女にはフルカラーの青春が続く。


モノクロの世界の中で髪を刈られた彼が椅子に向けて繰り出す足蹴りのシーンには胸が締め付けられるようだ。

 

カラーの世界に戻った彼のところへ駆け寄る彼女。
ほんの四分ほどの時間に見ていて感動させられるほどのドラマが込められている。
彼に抱き着く彼女のスカートの裾が一瞬風になびく瞬間の美しさときたらない。

 

それにしても、この男子、チョー男前ですね。

 


 

 

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Electric Youth/DEBBY GIBSON~既視感が生む80sのダイジェスト


Debbie Gibson - "Electric Youth" (Official Music Video)

 

既視感満載のこのPV、ある意味で80年代前半のビルボードの総集編のような作品になっている。

たとえばファッションはMADONNA


Madonna - Borderline (Official Music Video)

 

ダンスはMICHAEL JACKSON


Michael Jackson - Beat It (Official Video)

 

レーザービームの演出は、OLIVIA NEWTON JOHNや、


Olivia Newton John - Twist of fate

 

FRANKIE GOES TO HOLLYWOODで、


Frankie Goes To Hollywood - Relax (Laser Version)

 

廃墟で踊る舞台設定は、BILLY IDOL。


Billy Idol - Dancing With Myself

 

ここまで徹底されると、まだ記憶の生々しかった当時より、三十年の時を経て、80sがリバイバルする今の時代こそ、似つかわしい気がする。

 

曲もなんとも甘酸っぱくキャッチーなメロディのダンスミュージックで、いかにも日本人好み。
そのわりに、CMやテレビのBGMにイマイチこないのは、なぜだろう。

 

そんなことを考えていて、ふと思ったのは……。

 

なんとなくこれを名曲だったと公言すると、そのかたわらで聴いていたICICLE WORKSなんかまで飲み込みそうなミーハー洋楽ファンに認定されてしまいそうな感じが、当時トンガったロックファンだったはずの自分に対して反する感じで、仕方なく記憶の中に封印してしまってるのではないだろうか。

 

でも曲は確かにいい。
メロディのレベルは高い。

 

ただやっぱり、このへん

www.youtube.com

まで思い出させるあたりが、ロック史に残る名曲というより、なんだかうまく一発あてたアイドルタレントのドサクサ感があるのだと思う。

なんつーか、あの首のインド映画みたいなふにゃふにゃ感が、ね。

 

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