80年代洋楽カラオケについての考察
これだけ80年代洋楽をカラオケで歌える時代がくるとは。
歌い続けてみると(続けてるってところが無駄にポイント)、80年代洋楽カラオケで失敗する「あるある」みたいなネタが出来てくるな……。
せっかくなんで洗い出してみよう! (何のために?)
1. キーが合わない
まあそもそも、カラオケにいかなくてもCD(もちろん昔はレコードかテープね)にあわせて歌えば分るのですが、いざいってみると歌いたくなるもの。
しかもあわないとわかっていてもキーを下げるのってなんか悔しい。
↓
なのでそのまま歌う。
↓
散る。
という、フローチャートが成立します。
ただあまりにもハイトーンで、カラオケメーカーが無理と判断してくれた曲の場合、もともとキーが下がってて自尊心傷つけず歌えるのが最近のカラオケのポイントです。
実例として、意外に簡単に歌えた「テイク・オン・ミー」みたいな経験は誰にでもあると思います。
2. 早口すぎる
英語の場合、日本語よりもひとつの音符に多くの文字が乗るので、早口の早口加減は半端じゃありません。
サザンの「思いすごしも恋のうち」の二番が歌えるからといって、アフター・ザ・ファイアーの「デア・コミッサー(秘密警察)」が歌えると思うのは、
KaraokeTUBE After The Fire .... Der Kommisar
それこそ思いすごし
です。
そもそも、80年代はラップ夜明け前だと思って油断しているのが間違いです。
あれ、もともとは変態奇才ファルコ様のお笑いラップですからね。
Falco - Der Komisar I [Karaoke][QR-Code]
「聴いたことあるし、歌えるだろう」という気軽なノリでいくと、歌い出した途端、
思ったより攻めている自分
に気づきます。
そして、散ります。
もちろんどんなにリスペクトしてても RUN DMC もタブーです。
Karaoke Box - Walk This Way (In The Style Of / Al Estilo De : Aerosmith Feat. Run D.M.C.)
最近の若い子たちのようにラップに生まれ、ラップと育った世代とは違うんです。
だって、
俺は「ブルーライトヨコハマ」とともに生まれ、「三年目の浮気」なんかとともに育っているわけですから。
それでもどうしてもラップを歌いたいという場合、おすすめは「ウエスト・エンド・ガールズ」です。
あのゆる~いラップなら何とかついていけます。
[Karaoke] West End Girls - Pet Shop Boys
あと意外に歌いやすいのが、ロックウェルの「サムバディズ・ウオッチング・ミー」です。
Karaoke Somebody's Watching Me - Rockwell *
本人は、ファーストアルバムの
「マイケル次は俺の番だ!」というド派手なキャッチコピーとともに登場し、
セカンドアルバムの
「俺が時代の音だ」というコピーとともに消えていく
という
わかりやすい一発屋感
をほとばしらせてましたが、そもそもモータウンの御曹司かなんかだったので、別にどうでもよかったんでしょう。
そんなことより、そもそも、
こんな歌がカラオケにあることが驚きでした。
歌ってみた自身の行動も謎です。
3. 異国の言葉
洋楽カラオケですから、そもそも英語なのは当たり前。
ここでいうヤバイのは英語以外の国語です。
もし学生時代に第二外国語に専攻していて、しかもまじめに勉強していたら、歌えるものなのかもしれませんが、私はカラオケボックスで、
いくつもの屍を見てきました。
しかしそこには、
屍はいくつもあるが、レクイエムはいつもおなじ曲
という法則があります。
女性の場合は「99ルフトバルーンズ(ロックバルーンは99)」
Karaoke 99 Luftballons - Nena *
男性の場合は「ロック・ミー・アマデウス」
Karaoke German Falco Rock me Amadeus
です。
後者はラップでもあるので、ハードル二倍増しです。
ただ前者はカラオケで選曲すること自体、
「うかつだが妥当」
という微妙なラインであるのに対し、後者は、
そもそもそれをカラオケで歌おうと思った勇気
は称えてあげるべきかもしれません。
ところで以前カラオケのデュエット曲として、「それはそもそもカラオケにないだろ」と、だだツッコミしたアニモーションの「オブセッション」がカラオケにあることが判明しました。
SC8482 04 Animotion Obsession [KARAOKE]
アニモーションのみなさんにお詫びする前に、選曲基準を製作者に訊いてみたい気持ちでいっぱいです。
Vol. 4-80's-Billboard Top 10 Karaoke【中古】
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Eye Talk/FASHION~場末の踊り子の場末の恋人
安っぽい場末のディスコに、安っぽい役者、安っぽいドラマ。
Fashion - Eye Talk (Alan Darby on vocals)
そんなチープさの中に、このクリップの完成度の高さがある。
ハイトーンなヴォーカルだが、この手の声によくある繊細さや痛みを伝える種類の力を持っていない。
だからこそこのグループに迎え入れられ、それを元にこのクリップは誕生したのだ。
部屋を出て行こうとする彼女を歌いながら引き止めるその姿はまだしも、歌っている全身が小刻みにリズムを取っているところに、このクリップを見ていると踊りだしたくなる魅力がある。
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Hands Tied/SCANDAL~田舎のお姉ちゃん、都会の女になる!
パティ・スマイスは田舎のお姉ちゃんだった。
Scandal, Patty Smyth - Goodbye To You
そんな彼女の心と自意識を都会に連れ出したのは、たまたま点けたMTVから流れる、クリップの中のシンディ・ローパーの姿だった。
Cyndi Lauper - Girls Just Want To Have Fun (Official Video)
「ザ・ウォリアー」で街に出た彼女は、「ビート・オブ・ア・ハート」で夜の町を体験。
Scandal, Patty Smyth - The Warrior
Scandal Beat Of A Heart (1984)
そして、一通りの遊びを終えたパティは、「ハンズ・タイド」で大人の女になり、都会と一体化した。
Scandal/Patty Smyth - Hands Tied (original) - [STEREO]
余計なアクションや派手なメイク、衣装をすべて排除したこのクリップの静かな美しさは、落ち着いた曲調とマッチして、パティの素材としての魅力を十二分に輝かせている。
中でもこのクリップで秀逸なのは、ギターソロのあるリードギタリストは別として、残りのメンバーを腰掛けたまま演奏させ、クリップ内の動きをパティに集中したことだ。
そうすることで、パティに派手で滑稽なアクションを強要することなく、彼女の「動」の魅力を見せる事に成功したのである。
窓辺に腰掛けるパティが唇を動かすだけで彼女の魅力が溢れ出すくらい、このクリップは洗練されている。
スキャンダルがパティ・スマイスをフィーチャンリングして、彼女のルックスをも武器にしようとした時、他のメンバーは、パティ・スマイスがソロになってしまうという危惧は抱かなかったのだろうか。
もしかしたら、このクリップが出来上がって、被写体としてのパティの完成度を見た時、何も考えずただ幸せにロケンロールしてたメンバーは初めてその危惧を抱いたのかもしれない。
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Poison Arrow/ABC~本人だけが気付いていなかったイロモノの資質
ポイズン・アロウは名曲だ。
この曲は間奏の中途半端なセリフを除けば、ABC中で、もっともシリアスでドラマティックな名曲である。
そのドラマテイックさは、同じメロディをバラードにアレンジした、「テーマ・オブ・マントラップ」を聴けばわかる。
しかし、そのドラマティックな一曲も、クリップを見るとイロモノ以外のナニモノでもない。
フィルム「マン・トラップ」と重なるシーンが多いこのクリップは、「マン・トラップ」では見られない、完全演奏シーンが披露されるにもかかわらず、その合い間に差し挟まれるシーンがことごとく滑稽なのだ。
二番のAメロをうたう、マーティンの衣装も滑稽なら、間奏のセリフのシーンで小人にされて逃げ惑うマーティンも滑稽。
本人はシリアスにやっているこの頃、すでに彼には自分だけが知らない、イロモノの資質が咲き誇っていたのだ。
オペラグラスを目に当てて、ステージを見やる観客に扮した二役のマーティンを見よ。
あまりの顔のデカさに、オペラグラスがミニチュアに見えるではないか。
ルック・オブ・ラヴ [ ABC ]
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Shout/TEARS FOR FEARS~ガラスの少年たちの叫び声
叫ベ。叫べ。すべて吐き出させてあげる。
そんなものなくたって僕にはできる。
おいで。
君に言ってるんだ。おいで
この言葉は誰に話しかけたものだろう。
それは自ら、そして彼らの「チェンジ」「ペイル・シェルター」を愛したファンへの語りかけだったのではないだろうか。
このクリップの大きな意味は、彼らがはじめて全米ナンバーワンを獲得しただけではなく、それまでのイメージを覆したこともある。
繊細で内向的な思春期……というイメージから、力強く成長した男性の魅力を打ち出し、外向的な力強さと、チャートリアクションへの夢も覗かせたことにある。
ティアーズの繊細なパートを一任してきたカートではなく、ローランドをヴォーカルにすえたことも、この曲から受ける、彼らの「脱皮」を感じさせる。
岸壁で力強く「シャウト」するローランドの姿には、それまでの内向的なガラス細工ではなく、新しい世界に力強く踏み出す彼らの姿を感じる。
SACD/ティアーズ・フォー・フィアーズ/シャウト (SHM-SACD) (解説歌詞対訳付)/UIGY-15010
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I.O.U./Freeez~マシンメイド・ミュージック・ウィズ・マン・マシーン
このクリップ全編を彩る、今となっては古びたテクノ系ダンス。
それがすべての魅力だろう。
そして、その古さはブレイクダンスのヒットスタイルのウェイヴだけでなく、当時はストリートに持ち出された巨大なラジカセにも見られる。
ヴォーカルのハイトーンな音(それは声と呼ぶより、音と呼ぶのがふさわしい)と、作られた肌触りのメロディと音質。
マシンメイドな曲にあわせて、人がまるでマシンのように踊る映像が美しい。
GONNA GET YOU (DELUXE EXPANDED EDITION)
- アーティスト: FREEEZ
- 出版社/メーカー: OCTAVE
- 発売日: 2050/12/31
- メディア: CD
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So Tired/HAIRCUT100~素直な表現の功罪
バンドのフロントマンが脱退するということは、一大事である。リマールが抜けたカジャ・グー・グーは、よりテクニカルな方向にレベルアップしたが、「トゥー・シャイ」を愛したファン層はそれについていくことが出来なかった。
ヘアカット100が失ったのは、ニック・ヘイワードだった。
ニックなき後のヘアカット100を見るのは痛々しい。
爽やかトラッド系おぼっちゃま軍団だと思っていたが、ニック一人抜けただけで、異様におっさん臭い集団になってしまっている。
ヴォーカルは、「仕方ないから俺が歌うか……」みたいな居心地の悪いたたずまいで、再出発をはかるはずの決意の一曲のタイトルは「ソー・タイアード」。
Haircut One Hundred - So Tired ( Silver 7inc Disc )
仕事に疲れきった、中年のおっさんのようなモチベーションの低さである。
しかし、しかしだ。
このクリップは傑作である。
列車で旅をしながら、彼女との戻らぬ日々を思い浮かべるといった陳腐な内容でありながら、セピア調の映像とけだるいヴォーカルが見事に「ソー・タイアード」を表現している。
列車モノクリップとしては、ブロンスキ・ビートの「スモールタウンポーイ」と並ぶ完成度の高さを感じる。
このクリップの中に漂うけだるさ、疲れ、すべてがメンバーにとって、その時の偽らざる心情だったに違いない。スターの座に昇り詰めて、忙しい日常をこなしつづけているところにフロントマンの脱退。
「僕はもう疲れたよ……」そんな素直な気持ちがクリップになったのだ。
しかし、イアン・カーティスを失ったジョイ・ディヴィジョンが、「ブルー・マンデイ」を歌って、新しいスターの座を掴んだのとは違い、ヘアカット100に再びスポットライトがあたることはなかった。
「ブルー・マンデイ」に歌われた哀悼の思いは聴衆を駆り立てたが、「ソー・タイアード」で歌われた疲労感は聴衆までをもけだるい空気で包み込んでしまったのかもしれない。