Dynamite/JERMAINE JACKSON~躍るイルゼとイルマの亡霊
弟MICHAELが世界中を熱狂させるスターになったのを、兄はどう見ていただろう。
そんな環境の中でリリースされたJERMAINEのソロアルバムからカットされたこの曲。
抑えたトーンから入るVo.、闇の時間帯と閉塞の舞台。
そんな設定に不似合いな目にまぶしい衣装。
ダンスは文句なくかっこいい。曲も素晴らしい。
特に間奏の間のかけあいのようなダンスとメロディの組み合わせはしびれるくらいカッコいい。
そしてステレオタイプな、おそらくイルゼ・コッホを意識した女性看守とそれを取り巻く色っぽいお姉ちゃんたちとのセクシーなからみ。
こんなあからさまな映像がオンエアできたことにはイルマもびっくりだ。
ともあれ、曲に合わせたPVの完成度の高さは、弟のヒット曲並みに評価されていいはず。
だがどうしてもぬぐえないのは、便乗感。
もしこの曲ではなくDo What You Doのほうにもっと脚光が当たっていれば、違ったかもしれないが、PVがミュージックシーンを席巻していたあの時代のこと。
Jermaine Jackson - Do What You Do
やはりこの曲が残った。
Sweet, Sweet Baby/LONE JUSTUCE~トワイライト・ゾーン・イン・ショウビズ
LONE JUSTUCEは大きなヒットには恵まれなかった。
記憶に残っているのは、Vo.のMARIA McKEEがやたらかわいかったことくらいだろう。
Lone Justice - Sweet, Sweet Baby (I'm Falling)
BOB DYLANが曲を提供していたり、そのストレートで疾走感のある、ザ・ロックンロールは大物ミュージシャンたちを虜にしていたのかもしれない。
ただ、それもMARIAのルックスがなければどうだっただろうか。
Lone Justice - Ways To Be Wicked (1985)
というのもこのバンド、デビュー時点で彼女以外のメンバーはごっそりチェンジしているらしいからだ。
これがいわゆる大人のショウビズの世界というやつか。
日本でもイカ天で合格したバンドがメジャーデビューしてみたら、番組オーディションの時とはヴォーカル以外全員入れ替わっていたなんて話もあった。
なんだか、自分しか気づいていなのに、確実に全員他人にすり替わってるなんて、まるでトワイライトゾーンのエピソードのようだ。
今聴くとこの曲なんかシンプルで、例えるなら化粧しすぎた女の子より、ジーンズとティーシャツ、すっぴん女子のほうが、男の目線にはまぶしく見えるときがあるのと似た魅力を感じる。
実際PVはまさにそんな作りで、下手なドラマ仕立てにしたものより、彼女の魅力が伝わってくる。
ただ伝わってくるのがMARIAだけということが、このバンドのすべてを物語っている。
それがNENAとの違いだろう。
ローン・ジャスティス [ ローン・ジャスティス ]
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China Girl/DAVID BOWIE~地上に降りた西洋人が見た東洋
David Bowie - China Girl (Live)
BOWIEがあの80年代の洋楽ブームの頃、すでにひと時代を築き上げた存在で、他のブリティッシュ・インベイジョンを先導した連中よりひと世代上だったという事実は、このPVを見るとホントに嘘のようだ。
まるで古びていない感覚、いや、むしろ宇宙から来ただけあって、時代はそれでも彼を追いかけているようだった。
Iggy Pop - China Girl (originale - 1977)
チャイナ・ガールという不思議なタイトルは、この曲をイギーとともに書いた当時70年代のボウイがドラッグにはまっていたことを表したという説もあるみたいだが、そんなことはどうでもいい。
なんとも美しい東洋の美を見た西洋人の目と耳が、この曲を作り、80年代に入ってPV全盛の世になり、このフィルムを残してくれたことに感謝したいと思う。
David Bowie - China Girl OFFICIAL MUSIC VIDEO. Top Of The Pops 1983
それにしてもPVの中で東洋女性と向かい合う、彼の横顔の美しいことよ。
DAVID BOWIE。
ひとつの大きな星だった。R.I.P.
FOREVER YOUNG::レッツ・ダンス [ デヴィッド・ボウイ ]
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ナッシング・ハズ・チェンジド オールタイム・グレイテスト・ヒッツ スタンダード・エディション [ デヴィッド・ボウイ ]
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レガシー 〜ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・デヴィッド・ボウイ (2CD) [ デヴィッド・ボウイ ]
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Girl/F. R. DAVID~隠したかった青春の直球
何でもないことを小難しく考えたがる青春時代。
Laurie Anderson - O Superman [Official Music Video]
純文学に生きることの意味を探したり、ローリー・アンダーソンの音楽に五感が研ぎ澄まされてくような感覚を得たりしていた時代に、こういうシンプルな音楽の良さを認めることは、時に恥ずかしささえあったものだ。
日本ではCMソングとして起用されたことからも、いかにシンプルに美しいキャッチーな曲だったかがわかるだろう。
あの頃、この曲を聴いているということを友達に知られたくなかったということが、自分の生き方、青春時代の価値観を表しているといっていい。美しく優しいいい曲です。
We Are Ninja/FRANK CHICKENS~イカ天前。世界に認められたエンターテインメント
オーバーナイト・サクセス。
シンデレラストーリー。
一夜明けたら――。
いつの時代にも夢のような出来事は起こる。
そんな中でも、80年代最高の摩訶不思議なセンセーション、FRANK CHICKENS。
いっちしまえば誰でもよかったのかもしれない。
東洋人で、不思議な英語を操って、聴いたとのないオリエンタルな旋律を――奏でるのかと思ったら、歌って騒ぐ。
ミュージシャンというカテゴリではなく、パフォーマンス集団であり、そしてイロモノであった。
ただ彼女たちの偉大なところは、バナナラマと競うつもりもシュープリームスになるつもりもなかったことだろう。
楽しくやって、それが受ければもっと楽しいことをする。
イギリスに住んだからといって、英国人になろうとはしない。日本人のままで、日本のものも取り入れる。
音楽家ではないというようなことをいってしまったが、彼女たちがメインの曲に取り入れる、日本の音楽のカバーのセンスは素晴らしい。おてもやん、美しき天然、お富さん。
Frank Chickens Shellfish Bamboo
日本人なら誰でも知っていて、けどこの頃ミュージシャンを名乗った日本人が決して選ばない曲。
このセンスは、YMO、スネークマンショーの系譜といってもいいのではないか。
「スネークマンショー」-「咲坂と桃内のごきげんいかが1・2・3」
国外進出しようとした日本のミュージシャンが跳ね返された壁を、彼女たちなら日本のチャートを下地にしていても、超えられたのではないかとすら思えてくる。
ただ、日本のチャートで彼女たちがどんな扱いを受けたかを考えると、そもそもその下地がなかったといわざるを得ないのだが。
Frank Chickens - We Are Frank Chickens (1984)
お笑いの要素をメジャーチャートのヒット曲として受け入れる器が、日本の音楽ファンにできるのは、90年代のバンドブーム特にイカ天以降ということになるからだ。
コミックソングなんてジャンル、日本だけのくくりなのかもしれない。
結局考えてみれば、言葉の壁を超えるのは、パフォーマンスなのだということを、FRANK CHICKENSは教えてくれていたのだ。
ただ当時は日本人アーティストが海外で受け入れるられるということは本当に夢であり、さらにそれがWORLD ORDERのような二の線でなかったことが、彼女たちの功績に日本人が色眼鏡をかけて見てしまった理由だろう。
だけどやっぱカッコいいよ、カズコさん!
ちなみにCD化されるにあたって、セカンドアルバムにボーナストラックとして入れられた、モンスターのカバーはめちゃくちゃカッコいいので必聴です。
Sugar Don't Bite/SAM HARRIS~アーティストとアイドルの狭間に揺れた時代の徒花
全身にゴールドディスクをぶら下げたものすごい衣装のジャケットが記憶に残っていたけど、PVでは着ていなかったようだ。記憶なんてあいまいなもんだな。
Sam Harris - Sugar Don't Bite (1984)
結局プロフィールもイマイチ記憶に残ってないし、アイドルスターと呼べばいいのか、アーティストと呼べばいいのか、そのへんもよくわからないサム・ハリス。
とびきり男前でもないし、もしアイドルだとしたら、中村繁之みたいなもんなんだろう。
ハイトーン伸びのある声は聴きごたえあるし、この曲はメロディも秀逸。
ただPVは歌い出しのシーンの動きとか、間奏のダンスとか、なんだかまじめにやってるのにぷぷぷと吹き出しそうな奇妙なテイストがなくもない。
そういえばアルバムでは、Keep Me Hangin' On をカバーしてたりもしたし、このハイトーンヴォイスを売りにしたかったんだろうけど、成功はしなかった。
キム・ワイルドのカバーより早かったのにね。
Irgendwie Irgendwo Irgendwann/NENA~消費されたボーカリスト(それは美しすぎたから)
テレビの前の日本の青少年のド肝を抜き、一部のマニアを狂喜乱舞させた腋毛騒動も落ち着いたころ、ひっそりとリリースされた、ネーナ・ケルナーをフロントに据えた、バンドとしてのNENAの佳作。
Nena - Irgendwie Irgendwo Irgendwann (Original 1984)
メロディアスで、どうも安っぽさが抜けないものの、そこが逆に小難しくなってなくて、いい曲だ。
さすがにドイツ語のタイトルはちょっと日本ではどうしていいのかもてあましてしまったようで、「未来へのスパークル」なんていうまったく関係ないというかなんというか、そんな邦題がついていたが、それはもう仕方ない、すべて当時のイメージ仕立てのPVのせいなんだろう。
そのころ日本のMTVでも流されたPVは、なんというか、オープニングでマイケル・ジャクサンの集団ダンス、あるのかないのかわからない本筋はPV界のインディ・ジョーンズことデュラン・デュラン、ロケーションはスパンダー・バレエみたいな当時のビルボード向けにわざわざ作った、無駄金を使った悪例みたいな一作になってしまっていた。
まあ、ルフトバルーンの貯金も唸ってた頃だろうし、しようがないといえばしょうがない。
それに当時の世界、特に日本の消費する側は、ネーナをバンドではなく、ヴォーカルの彼女一人にフォーカスを当てた個人ネーナとして、プロデュースしたくてしようがない連中が実権を握っていたようで、そこにものいいたいからだ。
ネーナ・ケルナーの魅力は、腋毛はさておき理解できた。
しかし、それを壮大なふりをして、その実はしょぼいB級アドベンチャーに仕立てたPVのヒロインにしてしまって、それが本当に魅力だったのかは疑問符だらけだ。
どうしてこんなに辛口なのかというと、当時ビルボード経由で洋楽を輸入していた日本ではおそらく一度も流れていないと思うのだが、今回紹介したこんなオリジナルPVがあったらしいことを最近知ったからだ。
ネーナ・ケルナーというヴォーカリスト、女性の魅力も、その彼女をヴォーカルに据えたバンドの魅力も、このほうがはるかに伝わってくるじゃないか。
Nena ft Kim Wilde - Anyplace Anywhere Anytime (Irgendwie, Irgendwo, Irgendwann)HD
ちなみにこの曲は20年近い時を経て、まさかのキム・ワイルドとのデュエット曲として再リリースされている。
洋楽の何たるかも知らなかった頃に、和製洋楽のBitter Is Betterで我々を虜にしたあのキムだ。
Kim Wilde Bitter is better Japan commercial
House Of Salomeに酔い、Dancing In The Darkで“ボス”に「かぶってる!」と憤慨し、Singing It Out For Love Againに涙して、Second Timeでもしかしてこれでチャートに復活するのか! と期待したけど、結局僕たちの前にキムが帰ってきたのは、安っぽいユーロビートとともにだったけど。
Kim Wilde - Dancing In the Dark
キム・ワイルドについてはまた別の機会に。
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