Like Dust/PASSION PUPPETS~忘れられた美しいアクション
パッション・パペッツといっても、もう知る人も少ないだろう。
情熱の操り人形、という名のこのバンド、Like Dustのロマンティックでどこかノスタルジックなメロディは素晴らしい。
PVは西部劇を思わせるドラマ仕立てのパートと、演奏シーンが交互に差し込まれるスタイルで、演奏パートでのヴォーカルのレイ・バーミストンのアクションがいちいちカッコいい。
両手を組み合わせたり、指でおいでおいでしたり、片膝を立てて座るしぐさや、磔刑の主を背後から見るようなポーズで足をトントン動かすところ。すべてが美しく見える。
ブレイクすることはなかったけど、音、絵ともに秀逸な作品だ。
だがブレイクすることがなかった以上、一部のコアな洋楽マニア以外にはそのメロディもアクションも知られることはなく、知るものの記憶にも遠く忘却の彼方になっていることだろう。
日本で出たアルバムの売り出し方がアイドルバンド的な方向に行ったのが、返す返すも残念だが、若くてかわいいヴォーカリストがいて、業界の右左もわかってなければ、レコードの出る嬉しさで、そういうのは飲んじゃうんだろうな。
ただレイの前髪の残量が、もしアイドルとして成功していたとしても、その後何年、少女たちの人気を集め続けられたのかというのはちょっと疑問だ。
Big In Japan/ALPHAVILLE~戦後ヨーロッパから見た黄金の異国
そういえばバンドエイドがチャリテイの域を超えて、世界のひとつのムーヴメントとなったとき、ドイツでも類似のチャリティグループが誕生した。
BAND FUR AFRICA の Nackt im Wind だ。
Band für Afrika bei Form1 - Nackt im Wind u.a. mit Nena 1985
ドイツのトップミュージシャンが集まった、豪華な顔ぶれ……だったんだと思うのだが、正直ネーナとアルファヴィルしかわからなかった。
Alphaville - "Big In Japan" (Official Music Video)
そう、アルファヴィルは日本ではおなじみの顔だった。
この勘違いした東洋=日本なイントロで。
時はバブル。
日本という国は、戦後世界経済のトップに立つ勢いで躍進を続けていると思っていたが、政治経済の世界ではともかく、音楽の世界に生きる彼らにとって、東洋の島国の印象というのは、世界の歴史をつかさどる四大文明の一つ、黄河の流れに飲まれてしまっていたのだろうか。
この勘違いは THOMPSON TWINS の Lies でも聴けるから、きっとそうなんだろう。
Thompson Twins -- Lies Video HQ
銅鑼の音がどうにもこうにもなあ……。
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Because Of Love/JULLAN~耽美派の不安定な逆輸入
番外編。
80年代ニューロマンティック、エレポの端っこに、イギリス逆輸入の国産デュオがいた。
JULLAN - BECAUSE OF LOVE (LONG & ENGLISH VERSION -BECAUSE MIX !-)
メロディー・メーカー誌へ送ったデモ・テープが認められ、その噂が広まって日本でもデビュー、そんなスペックだったかと記憶している。
こちらは12インチシングル用に録られた英語バージョン。
簡単すぎる文章、たどたどしい英語、なんとも不安定な感覚を呼び覚ます。
しかしそれがまたこの曲の魅力なのだ。
なんとも儚げな低音で低温なヴォーカルはどこかブライアン・フェリーやデヴィッド・シルウィアンあたり(もうちょっとマニアックにいうとフィクション・ファクトリーなんかも似てるかも)を思わせるし、音はひねりのないデペッシュ・モード、怒りのないブロンスキ、あか抜けないカジャ・グー・グー、なんとでも表現できるだろう。
それでもいわゆる耽美派の文学を思わせるような、透き通った粘っこさは、日本ならではの趣を感じさせる。
チープといえばチープだが、日本のエレポがロンドンのにおいを少しまとうことができた瞬間の徒花ではないだろうか。
ちなみに曲としての魅力はやっぱり本来の日本語版ではないかと思う。
JULLAN - BECAUSE OF LOVE (SINGLE VERSION)
Love's Great Adventure/ULTRAVOX~哀愁を隠したアドベンチャー
ミッジをフロントマンとして迎えたウルトラヴォックスのイメージは、哀愁や翳りという言葉をひとつのパブリックイメージとして表現できるだろう。
そんな中、ベストアルバムのボーナストラックとしてリリースされ、シングルにもなったこの曲は、余興のようなものだったのだろうか。
Ultravox - Love's Great Adventure.flv
冒険風ストーリー仕立てのまるでデュランなPV、曲調に哀愁のかけらもなく「あんたはOMDか」といいたくなるような身もふたもないエレポ。
The OMD (Orchestral Manoeuvres in the Dark) - ♦ ENOLA GAY ♦
PVの最後に全員でジャンプする姿なんて、ホントびっくりしました。
この頃マダムたちにモテモテだったミッジ先生の大立ち回りシーンには、なんかキュンときますね。
小柄な男がけんかに強いって、漫画みたいじゃないですか。
ザ・コレクション [ ウルトラヴォックス ]
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Cool It Now/NEW EDITION~スーパーボーイズのシュールなヴォーカル
この曲、たわいもないポップスに聴こえるが、途中のラップパートなんか、素晴らしいクオリティだと思う。
PVもいかにもな青春ぽくて好印象。ストリートバスケのシーンなんかもいかにもアメリカン・ダウンタウンって感じがすごくいい。
しかしそんなすべての印象を根こそぎ持って行ってしまうのが、ボーカルの声。
なんとも声変わりしていない、そのシュールなハイトーンがすべて持って行ってしまうのだ。
ちなみにメインボーカルはラルフ・トレスヴァント。
そしてボビー・ブラウン、ロニー・デヴォーとリッキー・ベルとマイケル・ビヴィンズ(Bell Biv DeVoe)と、超豪華メンバーの組み合わせだったと、今だからいえる。
Bobby Brown - Every Little Step
Cool It Nowの頃が16、17といった年頃だから、まさにスーパーボーイズグループと呼ぶにふさわしい。
CD/ニュー・エディション/クール・イット・ナウ (SHM-CD) (解説歌詞対訳付)/UICY-25337
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Are We Ourselves/FIXX, THE~研ぎ澄まされた二分間
それにしてもこの頃のフィクスには無駄がない。
前作で全米進出に成功した彼らのサードアルバム「ファントムズ」からの最初のシングルカットがこの曲なわけだが、不愛想なまでに余計なものがそぎ落とされたPVに作られている。
MTV The Fixx Sneak Preview Video Promo (1984)
メンバーの着込んだ白と黒のつなぎのコントラスト。ロケーションはただひたすら、巨大なパラボラアンテナのある草原で、そこで演奏する彼らと走る彼らのカットが交互するだけ。たまに万華鏡のような映像効果が入るけど、ホントにそれだけ。
それにしてもサイ・カーニンの持つトランシーバーは、このだだっぴろい場所で、自分自身を問いかけるSOSの発信になんと向いた小道具なのだろう。
そしてこの曲のすごいところは、演奏時間の短さだ。
これだけの濃度がありながらもソリッドな印象を与えるのは、二分半にも満たないコンパクトな構成のせいだろう。
PVばかりか曲も研ぎ澄まされている。
ちなみにこの曲、国内シングルはリリース時「アー・ウィー・アワセルヴズ」だったタイトルが、いつの間にか「アーウィ・アーウィ」なんてタイトルに変更されるんですよね。まあわかりやすいけど。
ちょっと間抜けな感じに聞こえる気がしないでもない。
ただ邦題がキャッチコピーのようなものだとしたら、和訳せずにつけた邦題としては、“Is there something I should know?”→「プリーズ・テル・ミー・ナウ」と並ぶくらいの快作だと思います。
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Seven Seas/ECHO AND THE BUNNYMEN~仕方ない最大限の妥協
バニーメンはPVにそれほど力を入れたグループではなく、世間の風潮に合わせてとりあえずいわれたから作っといたみたいなものが多い、そういう価値観のグループだろう。
コテコテに芝居しまくったスパンダーとよく比較されていたのがなんだか懐かしい。
Echo and the Bunnymen - The Killing Moon (Official Music Video)
そんなバニーズも流行に乗らないわけにもいかず、キリング・ムーンあたりでなんとかそれっぽい感じに仕上げてごまかしてはみたものの、もっとPVっぽくやろうよ、というかんじの要望に最大限妥協したのが、たぶんこれではなかろうか。
Echo and the Bunnymen - Seven Seas (Official Music Video)
イアン、かわいいよね。
ウィルのワンレンふりふりとか、足ひれパタパタとか、バニーズなりに頑張ったんだと思うけど、この数年前にアジアでロケしてたデュランやスパンダー、カルチャー・クラブなんかと比べると、今頃になってやっと作ったPVが自主制作映画みたいなクオリティだったというのが、いかにも彼ららしい。
オーシャン・レイン [ エコー&ザ・バニーメン ]
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エコー&ザ・バニーメン [ エコー&ザ・バニーメン ]
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