読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

THIS IS VIDEO CLASH "RETURNS"--80年代洋楽PVの記録--

PVをメインに取り上げた80年代洋楽の記録です。2000年頃のアーカイヴをtumblrに移植したものをさらにこちらへ。

Wonderland/XTC~深窓の令息、不思議の国に姿をあらわす

アンディ・パートリッジは自分のむさくるしい姿をどう思っていただろう。

 


XTC - Wonderland

 

適度にひねくれていながら、小難しくならないポップさを併せ持った、実に都会的なセンスの持ち主でありながら、そのルックスはあまりにむさくるしい。


センスとルックスのギャップで言えば、クリストファー・クロス級だ。しかし、クリストファー・クロスが堂々とその姿を衆目にさらしたのと違い、アンディは異様な形でしかその姿を見せてくれなかった。

 


Christopher Cross - Arthur's Theme (Best that you can do)

 

この曲のクリップは舞台設定からして、奇怪。

庭園に造られた生垣の迷路の中を、バレリーナの少女がひたすら何かから逃げ惑うように、しかし優雅に動きつづける。それはまさに不思議の国の出来事のようだ。


いかにも、アリスがモチーフになっているのだろうが、そこに、トム・ペティが「ドント・カム・アラウンド・ヒア・ノー・モア」で表現したような、ブラックユーモアはまったく存在しない。

 


Tom Petty And The Heartbreakers - Don't Come Around Here No More

 


ここにあるのは、毒のないアリス・イン・ワンダーランドとでも言うべき、夢幻の世界である。
そして、白い生花に色をつける一人の庭師。

 

そう、あまりにもナーバスでセンシティヴな深窓の令息、アンディ・パートリッジが姿をあらわすためには、その舞台には毒を仕掛けてはならなかったのに違いない。
もし、そこに毒があったとしたら、純粋な令息はその場で息を引き取っていたのかもしれない。


そして、彼が姿をあらわすのにもっとも適した舞台は、現実の街の中ではなく、夢幻に漂う不思議の国だったのだ。

 


 

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【輸入盤】English Settlement [ XTC ]
価格:2175円(税込、送料無料) (2017/3/12時点)


 

 

One Lonely Night/REO SPEEDWAGON~どんでん返し不要の人情コント

郷愁をそそるメロディに載せて、切ない喜劇に仕立てられた秀作PV。

 


reo speedwagon - one lonely night

 

中世の騎士が、魔法使いの力で現代に送り込まれてドタバタするというタイムスリップ物のストーリーは、古今東西数多あれど、四分ほどの時間の中で、オチまでしっかりあって楽しめる。

 

視力の悪い騎士が現代で眼鏡を手に入れて、ヒーローになるのかと思いきや、ひったくりから取り返した鞄を剣に突き刺して獲物のように持ち主に差し出して怒られるとか、小技が利いてる。

 

冒頭の中世のシーンで目が悪いばかりに振り回した刀で天井に開けてしまった穴が、無事に家に戻ったラストシーンできっちり活かされているのも素晴らしいエンディング。
予定調和の中でちゃんと毎週笑いを取るドリフのような世界だ。
そしてほろりとさせるあたりは、寅さんのような人情コント的世界でもある。

 

結局人はどんなに変化を求めても、安定に縋るのではないかと思う。
どんでん返しなどなくとも、素晴らしい物語はできあがる。

 

 

あと、嫁さんがかわいい。

 


 

 


 

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

REOスピードワゴンThe EssentialCD2枚組
価格:1680円(税込、送料別) (2017/4/15時点)


 

 

 

Like Dust/PASSION PUPPETS~忘れられた美しいアクション

パッション・パペッツといっても、もう知る人も少ないだろう。

 


Passion Puppets - Like Dust

 


情熱の操り人形、という名のこのバンド、Like Dustのロマンティックでどこかノスタルジックなメロディは素晴らしい。

 

PVは西部劇を思わせるドラマ仕立てのパートと、演奏シーンが交互に差し込まれるスタイルで、演奏パートでのヴォーカルのレイ・バーミストンのアクションがいちいちカッコいい。

 

両手を組み合わせたり、指でおいでおいでしたり、片膝を立てて座るしぐさや、磔刑の主を背後から見るようなポーズで足をトントン動かすところ。すべてが美しく見える。

ブレイクすることはなかったけど、音、絵ともに秀逸な作品だ。


だがブレイクすることがなかった以上、一部のコアな洋楽マニア以外にはそのメロディもアクションも知られることはなく、知るものの記憶にも遠く忘却の彼方になっていることだろう。

 

日本で出たアルバムの売り出し方がアイドルバンド的な方向に行ったのが、返す返すも残念だが、若くてかわいいヴォーカリストがいて、業界の右左もわかってなければ、レコードの出る嬉しさで、そういうのは飲んじゃうんだろうな。

 

ただレイの前髪の残量が、もしアイドルとして成功していたとしても、その後何年、少女たちの人気を集め続けられたのかというのはちょっと疑問だ。

 

 

BEYOND THE PALE

BEYOND THE PALE

 

 

 

Big In Japan/ALPHAVILLE~戦後ヨーロッパから見た黄金の異国

そういえばバンドエイドがチャリテイの域を超えて、世界のひとつのムーヴメントとなったとき、ドイツでも類似のチャリティグループが誕生した。

BAND FUR AFRICA の Nackt im Wind だ。

 


Band für Afrika bei Form1 - Nackt im Wind u.a. mit Nena 1985


ドイツのトップミュージシャンが集まった、豪華な顔ぶれ……だったんだと思うのだが、正直ネーナとアルファヴィルしかわからなかった。

 


Alphaville - "Big In Japan" (Official Music Video)

 


Nena - 99 Luftballons

 

そう、アルファヴィルは日本ではおなじみの顔だった。
この勘違いした東洋=日本なイントロで。

 

時はバブル。
日本という国は、戦後世界経済のトップに立つ勢いで躍進を続けていると思っていたが、政治経済の世界ではともかく、音楽の世界に生きる彼らにとって、東洋の島国の印象というのは、世界の歴史をつかさどる四大文明の一つ、黄河の流れに飲まれてしまっていたのだろうか。

 

この勘違いは THOMPSON TWINS の Lies でも聴けるから、きっとそうなんだろう。

 


Thompson Twins -- Lies Video HQ

 

銅鑼の音がどうにもこうにもなあ……。

 


 

 

 

I Guess That's Why They Call It The Blues/ELTON JOHN~僕は君に素直な思いを伝えられていただろうか

青春にはいつも何かの壁がある。
その多くは今になって振り返ると、なぜあんなに高く聳え立っていたのだろうと思うものも多く、その壁にぶつかるまでの自分は、なんて甘く愚かな生き物だったのだろうと思う。

 


Elton John - I Guess That's Why They Call It The Blues

 

甘酸っぱい青春の中、その頃の自分はぶつかる壁をドラマティックな妄想に差し替えていたことを思い出す。
たとえば恋人とのすれ違いを、このPVのような世相や時代に無理やり当てはめて、引き裂かれてしまった自分たちを妄想したりして、仕方ないよと自分に言い聞かせたりしていたのだ。

 

ドラマティックなバラードをバックに繰り広げられる、若い恋人のドラマを見守るように歌うエルトン・ジョンの姿は美しい。

帽子とヅラの手離せないおじちゃんが、こんなに優しく温かい視点で、甘く美しい歌声を当時の僕に聞かせてくれたなら、僕は君に素直な思いを伝えられていただろうか。

 

それにしてもモノクロとカラーの使い方の上手いPVだ。きらびやかで色彩豊かな夜の街。

徴兵された彼の世界からは色が消え、街に残った彼女にはフルカラーの青春が続く。


モノクロの世界の中で髪を刈られた彼が椅子に向けて繰り出す足蹴りのシーンには胸が締め付けられるようだ。

 

カラーの世界に戻った彼のところへ駆け寄る彼女。
ほんの四分ほどの時間に見ていて感動させられるほどのドラマが込められている。
彼に抱き着く彼女のスカートの裾が一瞬風になびく瞬間の美しさときたらない。

 

それにしても、この男子、チョー男前ですね。

 


 

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

グレイテスト・ヒッツ 1970-2002 [ エルトン・ジョン ]
価格:2868円(税込、送料無料) (2017/4/26時点)


 

The Safety Dance/MEN WITHOUT HATS~いつかどこかで見たドラクエの原型

一発屋と呼ばれるアーティストは、ムーヴメントの波の中には欠かせない徒花である。
彼らがいるからこそ、数の波が認知に繋がり、露出が増えるから興味を促し、さらに影響を受けた次の波がムーヴメントの内側に入り、ブームが起きる。

 


Psechodelic #217: "The Safety Dance" (Extended Club Mix) (1982-83) by Men Without Hats

 

もしブームがひとつの祭りだとすれば、祭りが過ぎ去った後、すべての参加者が残れる程度の頭数ではそもそも世界を包み込むような大きなムーヴメントにはならないのだ。

MEN WITHOUT HATSもそんな徒花の一輪に過ぎない。

 

だが彼らには強烈な印象を残す、大輪の花がある。ブリティッシュ・インベイジョン、PV全盛の時代にうまく乗り、この曲はビルボード三位まで上り詰めている。
実際には彼らは、カナダで結成されたグループで、ブリティッシュとは関係ないのだが、軽めのエレポ感が、汗くさいアメリカン商業ロックとは一線を画した、当代の音ではあった。

 


The True Meaning of The Safety Dance by Men Without Hats

 

 

中世のヨーロッパのような風景の中、ドワーフを連れて村を行くアイヴァン。
途中で出会う女はなんだか、その少し後に世界を席巻するシンディ・ローパーの原型のような不思議な動きのお姉ちゃんだ。

 

曲のタイトルの頭文字を形作るポーズははたしてどこかで流行したのだろうか。
ハメルンの笛吹男のように人々を連れた先、村では祭りが始まり、狂乱のうちに映像は終わっていく。

 

なんてことのないチープなエレポにすぎないといってしまえば、それまでかもしれない。

 


Men Without Hats ~ Safety Dance ~ Live 1985 in Montreal ~ DVD Live Hats

 

 

しかし、この曲の奇妙にすがすがしい余韻と、アイヴァンの苦みを含んだ表情の対立するような存在の妙は音に映像が付加されてこそ。その対極にある要素の中和に、ドワーフと不思議なお姉ちゃんを持ってきたパーティ仕立てのキャスティング。


村のロケーションをあらためて見直すと、なんだかドラクエの原型もここにあったんじゃないかという気分にさせられる。

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【送料無料】 Men Without Hats / Rhythm Of Youth 【LP】
価格:2149円(税込、送料無料) (2017/4/6時点)


 

 


 

 

Because Of Love/JULLAN~耽美派の不安定な逆輸入

番外編。

80年代ニューロマンティック、エレポの端っこに、イギリス逆輸入の国産デュオがいた。

 


JULLAN - BECAUSE OF LOVE (LONG & ENGLISH VERSION -BECAUSE MIX !-)


メロディー・メーカー誌へ送ったデモ・テープが認められ、その噂が広まって日本でもデビュー、そんなスペックだったかと記憶している。

 

こちらは12インチシングル用に録られた英語バージョン。

簡単すぎる文章、たどたどしい英語、なんとも不安定な感覚を呼び覚ます。

しかしそれがまたこの曲の魅力なのだ。

 

なんとも儚げな低音で低温なヴォーカルはどこかブライアン・フェリーやデヴィッド・シルウィアンあたり(もうちょっとマニアックにいうとフィクション・ファクトリーなんかも似てるかも)を思わせるし、音はひねりのないデペッシュ・モード、怒りのないブロンスキ、あか抜けないカジャ・グー・グー、なんとでも表現できるだろう。

 

それでもいわゆる耽美派の文学を思わせるような、透き通った粘っこさは、日本ならではの趣を感じさせる。

チープといえばチープだが、日本のエレポがロンドンのにおいを少しまとうことができた瞬間の徒花ではないだろうか。

 

ちなみに曲としての魅力はやっぱり本来の日本語版ではないかと思う。

 


JULLAN - BECAUSE OF LOVE (SINGLE VERSION)

 

ビコーズ・オブ・ラヴ [EPレコード 7inch]

ビコーズ・オブ・ラヴ [EPレコード 7inch]