Dream Of The West/YIP YIP COYOTE~ギミック満載ウエスタン
Go-Go'sのTalk Showを買ったら、アルバムの中に封入されていたレーベルの所属アーティストの紹介パンフみたい小冊子に、奇妙なバンド名を見つけた。
それがYIP YIP COYOTEだった。
PVを見てもわかる通り、奇妙なウエスタン調のギミック満載で、明らかにイロモノとしか思えなかったけど、なんだか哀愁漂うメロディは頭に残り、郷愁をそそるような何が気にかかる一曲だった。
Yip Yip Coyote - Dream of The West - 1984
当時はそんなムーヴメントがあったなんてまったく知らなかったけど、ジャンル的にはカウパンクってやつらしい。
まあなんで知らなかったかっていうと、イマイチ来なかったムーヴメントってことなんだろうけど。
なんとなくADAM AND THE ANTSなんかのインディーズっぽい感じがするなあと思ってたけど、洋楽にこだわらずコンセプトをよく見なおしてみると、いわゆるイギリスのイカ天バンドみたいな存在なのかもしれない。
ちなみにヴォーカルのフィフィは本業がモデルだったらしく、たしかにコスプレもサマになってる。
そういう意味ではEIGHTH WONDERの垢抜けないやつ、またはオタクなやつ、ってとこなのかもしれない。個性はあるけど、メジャーではこの路線だと厳しいってとこでしょうか。
このブログももうちょっとメジャーな題材を取り上げたほうがいいのかもしれませんが。
Nobody's Diary/YAZOO~小じゃれた音に乗り損ねたアクションのないアクション
男女ペアという編成で、テクノ畑から出てきたせいか、ユーリズミックスとの比較がよく論じられたヤズー。
音楽的な主導権を握る男性と、ソウルフルな女性ヴォーカルというところまでかぶっていたから、その比較は見当違いではない。
Eurythmics - Sweet Dreams (Are Made Of This) (Official Video)
しかし、何がこのふたつのグループのその後に差をつけたのか。
それは、このクリップを見ると明確だ。
ヤズーには華がない。
レコードで聴いている時に感じる違いは、ユーリズミックスよりライトで無機質な音作りくらいでしかなかったが、アリソン・モイエの豪快なルックスはアニー・レノックスのような華やかさが皆無で、ビジュアル向きではなかった。
そして、ビジュアルが音に反して重い。
これは、アリソン・モイエの体重のことを言っているわけではない。
むしろ、ヴィンス・クラークの死にかけたニワトリのような異様なルックス、まったく動かないというアクションのないアクションがその原因だ。
こんな状態ではビジュアルに訴える要素は皆無に等しい。
テクノブームに乗っかって、デペッシュ・モード初期の素軽い音作りをヤズーに移行して継続したヴィンスだったが、その小じゃれた音を表現できたのは、レコードの世界だけだった。
(80's) Depeche Mode - Dreaming of Me
テクノ以降、チャート界に大きな影響を与えた、クリップの世界において、彼は自らの音作りとは正反対の重さだけを表現してしまったのである。
彼はレコードという閉ざされた世界から、クリップという開かれた世界にその姿を登場させたことで、ヤズーの幕を下ろすことになったのかもしれない。
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Prisoner of Love/SPEAR OF DESTINY~皮肉な運命の矢
DURAN DURANやSPANDAU BALLETが着飾って、楽器も持たずにフィルムの中で壮大なハリウッドごっこをやっていた時期に、この潔さ。
当時のMTVの中でも異色すぎるPVに、画面の前でひっくり返りそうになった記憶がよみがえる。
Spear Of Destiny-Prisoner of Love'
シンプルなスタジオライヴのPV自体は別に珍しかったわけでもなんでもないが、なんというかこのジャンルでわざわざPV撮るのにボーカルがTシャツって、ちょっと当時なかった。
そのカーク・ブランドンは、もともとボーイ・ジョージの交際相手で、ボーイが音楽をやろうと思ったのは彼の影響だという話を聞いたことがある。
だが運命の矢は皮肉なもので、このころすでにボーイ・ジョージは時代の寵児。
もしかしたらそのあたりに対する、彼なりの複雑な想いの表現がこれだったのかもしれない。
Wonderland/XTC~深窓の令息、不思議の国に姿をあらわす
アンディ・パートリッジは自分のむさくるしい姿をどう思っていただろう。
適度にひねくれていながら、小難しくならないポップさを併せ持った、実に都会的なセンスの持ち主でありながら、そのルックスはあまりにむさくるしい。
センスとルックスのギャップで言えば、クリストファー・クロス級だ。しかし、クリストファー・クロスが堂々とその姿を衆目にさらしたのと違い、アンディは異様な形でしかその姿を見せてくれなかった。
Christopher Cross - Arthur's Theme (Best that you can do)
この曲のクリップは舞台設定からして、奇怪。
庭園に造られた生垣の迷路の中を、バレリーナの少女がひたすら何かから逃げ惑うように、しかし優雅に動きつづける。それはまさに不思議の国の出来事のようだ。
いかにも、アリスがモチーフになっているのだろうが、そこに、トム・ペティが「ドント・カム・アラウンド・ヒア・ノー・モア」で表現したような、ブラックユーモアはまったく存在しない。
Tom Petty And The Heartbreakers - Don't Come Around Here No More
ここにあるのは、毒のないアリス・イン・ワンダーランドとでも言うべき、夢幻の世界である。
そして、白い生花に色をつける一人の庭師。
そう、あまりにもナーバスでセンシティヴな深窓の令息、アンディ・パートリッジが姿をあらわすためには、その舞台には毒を仕掛けてはならなかったのに違いない。
もし、そこに毒があったとしたら、純粋な令息はその場で息を引き取っていたのかもしれない。
そして、彼が姿をあらわすのにもっとも適した舞台は、現実の街の中ではなく、夢幻に漂う不思議の国だったのだ。
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One Lonely Night/REO SPEEDWAGON~どんでん返し不要の人情コント
郷愁をそそるメロディに載せて、切ない喜劇に仕立てられた秀作PV。
reo speedwagon - one lonely night
中世の騎士が、魔法使いの力で現代に送り込まれてドタバタするというタイムスリップ物のストーリーは、古今東西数多あれど、四分ほどの時間の中で、オチまでしっかりあって楽しめる。
視力の悪い騎士が現代で眼鏡を手に入れて、ヒーローになるのかと思いきや、ひったくりから取り返した鞄を剣に突き刺して獲物のように持ち主に差し出して怒られるとか、小技が利いてる。
冒頭の中世のシーンで目が悪いばかりに振り回した刀で天井に開けてしまった穴が、無事に家に戻ったラストシーンできっちり活かされているのも素晴らしいエンディング。
予定調和の中でちゃんと毎週笑いを取るドリフのような世界だ。
そしてほろりとさせるあたりは、寅さんのような人情コント的世界でもある。
結局人はどんなに変化を求めても、安定に縋るのではないかと思う。
どんでん返しなどなくとも、素晴らしい物語はできあがる。
あと、嫁さんがかわいい。
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プレイリスト:ヴェリー・ベスト・オブ・REOスピードワゴン [ REOスピードワゴン ]
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Like Dust/PASSION PUPPETS~忘れられた美しいアクション
パッション・パペッツといっても、もう知る人も少ないだろう。
情熱の操り人形、という名のこのバンド、Like Dustのロマンティックでどこかノスタルジックなメロディは素晴らしい。
PVは西部劇を思わせるドラマ仕立てのパートと、演奏シーンが交互に差し込まれるスタイルで、演奏パートでのヴォーカルのレイ・バーミストンのアクションがいちいちカッコいい。
両手を組み合わせたり、指でおいでおいでしたり、片膝を立てて座るしぐさや、磔刑の主を背後から見るようなポーズで足をトントン動かすところ。すべてが美しく見える。
ブレイクすることはなかったけど、音、絵ともに秀逸な作品だ。
だがブレイクすることがなかった以上、一部のコアな洋楽マニア以外にはそのメロディもアクションも知られることはなく、知るものの記憶にも遠く忘却の彼方になっていることだろう。
日本で出たアルバムの売り出し方がアイドルバンド的な方向に行ったのが、返す返すも残念だが、若くてかわいいヴォーカリストがいて、業界の右左もわかってなければ、レコードの出る嬉しさで、そういうのは飲んじゃうんだろうな。
ただレイの前髪の残量が、もしアイドルとして成功していたとしても、その後何年、少女たちの人気を集め続けられたのかというのはちょっと疑問だ。
Big In Japan/ALPHAVILLE~戦後ヨーロッパから見た黄金の異国
そういえばバンドエイドがチャリテイの域を超えて、世界のひとつのムーヴメントとなったとき、ドイツでも類似のチャリティグループが誕生した。
BAND FUR AFRICA の Nackt im Wind だ。
Band für Afrika bei Form1 - Nackt im Wind u.a. mit Nena 1985
ドイツのトップミュージシャンが集まった、豪華な顔ぶれ……だったんだと思うのだが、正直ネーナとアルファヴィルしかわからなかった。
Alphaville - "Big In Japan" (Official Music Video)
そう、アルファヴィルは日本ではおなじみの顔だった。
この勘違いした東洋=日本なイントロで。
時はバブル。
日本という国は、戦後世界経済のトップに立つ勢いで躍進を続けていると思っていたが、政治経済の世界ではともかく、音楽の世界に生きる彼らにとって、東洋の島国の印象というのは、世界の歴史をつかさどる四大文明の一つ、黄河の流れに飲まれてしまっていたのだろうか。
この勘違いは THOMPSON TWINS の Lies でも聴けるから、きっとそうなんだろう。
Thompson Twins -- Lies Video HQ
銅鑼の音がどうにもこうにもなあ……。
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